「マスタリングビットコイン」の著者であるアンドレアス・M・アントノプロス氏は、ビットコインETF(上場投資信託)が承認されるのは必然としつつも、長期的には仮想通貨業界に悪影響をもたらすと指摘した。CCNが4日に報じた。米国証券取引委員会(SEC)が9月30日までにビットコインETFの可否判断を行う予定で、承認されれば市場にとって追い風というのが大方の見方だ。
アントノプロス氏は、ビットコインETFによって投資家はビットコインを実際に所有するのではなく、カストディアン(資産管理者)としてファンドが所有するビットコインのシェアを持つことになると指摘。実際にビットコインを持つことはないので、投機が増えることになると分析した。
また、アントノプロス氏は、ビットコインETFは中央集権みたいな効果をもたらすと解説。投資家が「(秘密)鍵」を持たないで市場に参加するため、一部のカストディアンに「鍵」が集中し、エコシステム全体の意思決定に関わるカストディアンの力が強くなるのではないかと懸念している。
「ETFは、ピアツーピアの送金という原理に違反している。ピアツーピアでユーザーは、カストディアンを通してではなく、自分自身で鍵を持ち直接自分のお金の管理ができる」
こうした理由からアントノプロス氏は、長期的にはビットコインにとってマイナスではないかという見解を明かした。
ただ、アントノプロス氏は、技術的知識のなさや市場参加者からの需要を背景にビットコインETFが成立することは不可避だと指摘。ビットコインを実際に所有してそれがもたらす恩恵を享受する技術面に秀でたタイプとは仲介者に頼るタイプという2つのタイプの機関投資家が生まれることになるだろうと予想した。
ビットコインETFに対して慎重な見方は多い。先月、ビットコインの生みの親サトシ・ナカモトの有力候補の一人であるニック・サボ氏は、ビットコインETF(上場投資信託)は「問題の方が多い」とツイッターで発言。また米国の仮想通貨ヘッジファンド・マネジャーであるダン・モアヘッド氏は、SECがビットコインETFの決定を延期したことに対して投資家は過剰反応しているという見方を示した。
現在SECは、Cboe BZX取引所への上場を求めているビットコインETFを審査中で、延期も含めた可否判断を9月30日までに行う予定だ。
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