外国為替取引(FX)決済大手CLSのアラン・マーコート最高戦略責任者(CSO)が11月14日、ロンドンで開催されたIBMシンクタンク・カンファレンスにおいて、同社がIBMのブロックチェーンで動作するネッティングサービスを「数日中に」リリースすることを発表した。テックニュースメディア「コンピューター・ビジネス・レビュー」(CBR)が伝えた。

1日に平均5兆ドル分の決済注文を処理すると言われるCLSグループは、ゴールドマン・サックス、バークレイズ、シティグループなどの有力会員を持つ、米国のFX決済サービスサプライヤーだ。

ネッティングサービスは、タイムゾーンの違いから引き起こされる通貨価格の変動などの要素を反映し、当事者間で交換されることになっている複数のポジションや支払いを相殺して、その価値を決定する。そのようなケースにおいて、所与の当事者が支払うべき報酬を確定する目的で、このサービスが利用される。

報道によれば、マーコート氏はカンファレンスの聴衆の前で、CLSは「分散型台帳技術(DLT)に基づく金融市場初の『ビジネスに門戸を開いた企業レベルのサービス』を運営」しようとしていると主張した。さらに同氏はCBRに対し、同サービスは「小さく始めて」から拡大することになるだろうと述べたが、その後前言を撤回し、このニュースは実のところ口止めされていると話した。リリース時に扱うことのできるサービス処理能力に関するCBRの質問には、次のように答えた。

「それは問題ではない。第1四半期末までに当社がしようとしていることに目を向ける方が興味深いだろう。これと同じような他のことも小さく始めるので、注目していてほしい」

IBMとCLSが公表した共同ホワイトペーパーによれば、このテック大手のハイパーレッジャーをベースとしたブロックチェーンは1日290万件の取引に対応することができ、その結果として発生する紛争は年間で平均25000件、保留される金額は約1億ドルと見積もられるという。また、紛争解決の所要日数も40日から10日以下に短縮されると予測されている。マーコート氏はカンファレンスで次のように語った。

「市場参加者は現在、調停や訴訟に何百万ドルも使い、あらゆる小さなことを解決しようとしている(中略)もし何かが不効率に見えれば、それには1000の理由があるかもしれない(中略)例えば、規制当局が変化に寛容ではないのかもしれない。破壊はエキサイティングに聞こえるかもしれないが、解決しようとしている業務プロセスを理解している者たちと協力して行うべきだ」

またマーコート氏は、「遠慮なしに言えば(中略)ブロックチェーンが登場して間もない時期に、この分野を理解する努力をしてこなかった人たちが、世界を変えるという非常に無知な約束をたくさんした」とも指摘した。

、CLSはその会員に対し、CLSNetサービスに対する2つの接続オプションの提供を計画している。直接接続する方法と、SWIFT金融メッセージングプロバイダーを介して接続する方法である。CLSの広報担当者は、まず顧客はもっぱらSWIFT仲介業者に頼り、「サービスが機能性を伴って成長を続け、DLTが成熟するにつれ」直接的なノードホスティングが提供されることになるだろうとの見解を明らかにしている。