仮想通貨市場は目下、一方的な下降トレンドに入っている。CoinGeckoの指摘によると、時価総額は年初の2兆3,104億ドルから、2月下旬には1,792億5,000万ドルに22%減少した。低迷する相場は、ボラティリティの低下にも反映されている。仮想通貨で時価総額が最も大きいビットコイン(BTC)でも、1日の平均ボラティリティは4.6%程度で、昨年の6.72%より低く、ボラティリティの低下傾向は明らかだ。

ETF、特にレバレッジ型ETFへの投資は、低迷する相場において投資家が高いリターンを得るための手段となる可能性があることを、複数の研究が指摘している。伝統的な金融市場では、ETFは通常、オープンエンド型インデックスファンドの一種を指すが、これは、投資家はファンド運用会社からいつでもファンドを購入し、いつでも買い取らせることができるというものだ。もちろん、クローズドエンド型ファンドのように、流通市場において市場価格で売買することもできる。市場価格とファンドのNAV(純資産価値)との間には、「裁定」の機会がある。2019年後半以降、ETFは仮想通貨市場への参入が認められたが、現在では3つのタイプに進化した。すなわち、①機関投資家によって発行されるインデックスファンド、②取引所によって発行されるレバレッジド・インデックスファンド、③ETFと同様に取引可能なレバレッジド・トークンの3つである。仮想通貨ETFを使えば、はたして市場の「寒い冬」を越すことができるだろうか? 本稿では、これらのETFの特徴、市場規模、期待利回りの違いについて分析を行う。

第1章:600銘柄以上のETFが存在し、1日の取引高は3億6,000万ドルに

仮想通貨市場の主要なプレイヤーには、機関投資家(Grayscale、Purpose、3iQ)と取引所(FTX、MEXC、Binance)がある。たとえば、Grayscaleが発行したBitcoin ETFは、CoinDeskのBitcoin Price Indexをトラックするものであるし、3iQはMVISのCryptoCompare Institutional Indexをトラックする。

上場ETFは、原資産価格の増減をn倍に拡大する、無期限レバレッジド商品である。MEXCが発行するレバレッジ型ETFインデックスファンドと、BinanceおよびFTXが発行するレバレッジ型ETFトークンがその双璧である。両者の最大の違いは、対応するトークンがブロックチェーン上で発行されているか否かであり、これに伴いETFの取引方法も異なっている。

現在、市場には639銘柄のETFが流通している。だが、機関投資家発行のETFは、資産クラス的に言ってラインナップが少ない。当然、取引可能なETF商品も少なくなる。最も銘柄数の多いGrayscaleは、BTC、ETF、AAVE、ADA、LINK、COMP、SOLなどを含む24のアセットからなる、16種類のETFを発行している。3iQは、BTC、ETF、LTCの3つのアセットからなる、6種類のETFを発行している。Purposeは、BTCとETHの2つのアセットからなる4種類のETFを発行している。

一方、取引所発行のETFには、より多数のアセットが含まれ、より取引しやすいETFが存在する。最も多くのプロダクトを持つMEXCは、Ether、Boca、Solana、Avalanche Protocol、Fantom、NFT、Meta-Universe、GameFi、DeFi、Layer2、DAOなど、仮想通貨のほぼすべてのトラックをカバーする172アセットからなる386種類のETFを発行している。FTXは47アセットからなる187種類のETFを発行し、Binanceは2アセットからなる40種類のETFを発行した。なお、Binanceは20アセットからなる40種類のETFも発行している。

現在主流である機関投資家によるETFの市場規模は、すでにかなりの規模まで成長した。主要機関投資家が発表した公式データによれば、2月25日現在、デジタルアセット界の三大機関投資家が運営するETFの規模は、369億7,300万ドルに達している。Grayscaleだけで90%以上を占めており、Purposeと3iQの規模はいずれも20億ドルを超えない。CoinGeckoのデータによると、FTX、MEXC、Binanceの取引所が発行したETFの1日の総取引高は3億6,000万ドルで、うちMEXCが1億9,400万ドルの取引高で、54%を占める。

現在の取引所によるETFの市場規模は、機関投資家が発行するETFの巨大な市場規模に比べると、まだかなり小さいが、このことは取引所発行のETFの伸びしろが大きいとも捉えられる。主要機関投資家の公式データとglassnodeのデータによると、Grayscaleと3iQの純資産は過去6ヶ月でそれぞれ25%と21%減少した。実際、Grayscalの株式の店頭価格が、昨年から引き続いて負のプレミアムとなっていることから見ても、機関投資家発行のETFはすでに頭打ちと見ていいだろう。実際、彼らの管理財産の規模は縮小している。現在では業界標準となっているGrayscaleのETFでさえ、その神話を維持し続けることは困難な状況となってしまった。機関投資家によるETFの勢力が弱まる一方で、取引所発行のETFは勢力を強めている。CoinGeckoによると、ETFが仮想通貨市場に初めて導入された2020年代初期と比較して、MEXCのETFの日々の取引量は実に5,015%増加した。FTXも492%の増加である。取引量の増加は、市場が成熟し、流動性の高まりのあらわれでもあり、ETFの発展にとってはプラスであることはいうまでもない。

第2章: 機関投資家発行のETFは引き続き負のプレミアム。MEXCの理論上の最大リターンは518%。

機関投資家が発行するすべてのETFの平均OTCプレミアムは、当初は上昇し、その後は低下するというプロセスを経た。 機関投資家によるETFの発行が始まった2020年、月間平均OTC利回りは10%を超え、一時は最大23.51%に達し、極めて良好なリターン水準だったといえる。 2021年に入ると、平均OTC利回りは正から負に転落し、現在の-22.63%まで低下した。 ただし、たとえばQBTC.Uの現在のOTCプレミアムは-3.33%で、他のETF同様反発しているものの、全体的な平均利回りはGrayscaleによって発行されたGBTCの負のプレミアムの悪影響をより強く受けていることに注意して欲しい。全体的に見て、機関投資家発行のETFのリターンは、依然として芳しいとはいえない。超過リターンを得ることができた初期の投資家を除いて、新たに参入した投資家の収益機会は、以前ほど恵まれていないのである。

ひと口に取引所発行のETFといっても、その状況は銘柄によって大きく異なる。各取引所で1日の取引高トップ10のETFを見ると、今年に入って30銘柄のETFのうち10銘柄のみが利益を上げており、2月23日の取引終了時点で、Binanceが4、FTXとMEXCが3ずつとなっている。今年の純益で最も高いのは、MEXCが発行したETH 5x long ETF (ETF5L/USDT)で、127.20%のリターンがあった。高いリターンを得られたETFは、他には、Binanceが発行した4x short ETF (ETHDOWN/USDT)と、MEXCが発行したBTC 5x long ETF (BTC5L/USDT)があり、両者は50%を超えるリターンを上げた。

過去のリターンを見ると、MEXCのETF取引高トップ10は理論上の最大ネット価値が518.40%で、三大取引所のなかで最も大きい。マイナス時のネット価値も-96.40%で下落幅が比較的小さく、三大取引所の中で最も高いパフォーマンスを示しているといえる。FTXの「ETF取引高トップ10」の理論上の最大ネット価値はわずか182.49%の上昇にすぎず、マイナス時のネット価値も-100%と下落幅が大きい。Binanceの「ETF取引高トップ10」の理論上の最大ネット価値は68.80%の増加で、マイナス時のネット価値も-99.94%と下落幅が大きい。両取引所のパフォーマンスはほぼ同レベルで、残念ながら低調だ。

値動きが一方的な相場では、レバレッジ型ETFのパフォーマンスは、想定レバレッジ倍率を上回る。すなわち、現物価格と同じ方向に動くETFにおいては、利益の累積は、現物の利回りのレバレッジ倍を上回り、現物価格と反対方向に動くETFにおいては、損失の累積は、現物の利回りのレバレッジ倍を下回る。

今月の仮想通貨市場は、複数の負の外部要因の影響をもろに受けており、コイン価格の下落とそれに伴うボラティリティの低下を特徴とする、一方的な下落相場の様相を呈している。2月23日にCoinMarketCapによって1-10位、45-54位、90-100位にランキングされた仮想通貨を見ると、日々のボラティリティは過去6ヶ月の10.24%から7.32%に低下しており(月平均)、明らかな低下傾向が見られる。仮想通貨の時価総額は同期間に2,145億3000万ドルから1兆7,156億ドルに20%減少し、やはり明らかな減少傾向を示している。このような市場環境においては、レバレッジ型ETFは投資家にとって超過リターンを得るための救世主となるだろう。

第3章:レバレッジ型ETFは、無期限取引と比較してパフォーマンスが高いが、リスク管理上、長期保有には適さない。

取引所が発行するETFを、他の投資商品に比べた場合、一定の利点があるのは確かだ。第1に、ETFは投資家がいつでも自由に売買できるオープンエンド型商品であり、ほとんどの場合、クローズドエンド型ETFよりも流動性が高い。

第2に、ETFはレバレッジ商品であるため、リターンは通常のn倍となる。すなわち、対応する原資産のスポット価格がx%上昇または下落した場合、対応する「n倍レバレッジETF商品」の価値は、nx%だけ上昇または下落する。現在、3つの取引所が発行するETFのレバレッジは、2~5倍の範囲にある。MEXCを例にとると、386銘柄あるETFのうち、342銘柄が3倍レバレッジ、18銘柄が4~5倍レバレッジ、残りの8銘柄が2倍レバレッジである。但し、これらは名目レバレッジであり、実質レバレッジはリバランスの影響を受ける。

主要な取引所は、リスク管理のため、独自のリバランスのメカニズムを構築している。たとえば、MEXCのリバランスのメカニズムには、期限付きリバランスと無期限リバランスの2つがある。期限付きリバランスは、基本的にETFのレバレッジを維持するための操作である。一方、無期限リバランスは、原資産の価格が一定の値を超えて上昇または下落した場合の一時的な調整を指す。リバランスのメカニズムは、主として他の複数のデリバティブ・プラットフォームを利用したリスクヘッジによって達成される。リバランスと複利のメカニズムにより、日々の利益がポジションに自動的に移転されるため、ETFは先物と比較してレバレッジが低く、ポジションが保全されやすいという利点がある。逆に、スポットと比較すれば、リターンが拡大しやすく、特に一方的な上昇相場ではリターンが膨らみやすいという利点がある。

また、レバレッジ型ETFは証拠金を必要とせず、終値での強制決済もないため、先物に比べて資本の利用効率が高い。MEXCが発行したBTC3L/USDTを例にとると、ユーザーは、レバレッジ型ETFのポジションの一部をマージンとして納めたり、操作された終値により強制的に決済されたりすることなく、あたかも現物を売買しているかのようにポジションを持つことができる。

レバレッジ型ETFのリスクは、基本的には管理可能である。但し、レバレッジ型ETFは元本に対するリターンを日次で反映しているにすぎないため、数日間にわたって保有した場合、累積損益で見ると、振れ幅は1日しか保有しない場合よりも大きくなる。よって、長期保有には向いていない。長期保有は、数日間にわたる市場価格のアップダウンにより、原資産の減少を引き起こす可能性がある。また、日々の資金調達手数料やポジションのリバランスなど、追加的なコストが発生する可能性もある。さらに、レバレッジ型ETFを売買する際には、ネット価格に注意する必要がある。市場センチメントの変化により、市場取引価格がNAVから乖離し、プレミアムが発生する場合があるからだ。こうした場合、投資家は、日和見的なトレードにより、NAVから大きく外れた価格でETFをつかまされないように注意しなければならない。

クレオ・ハートマン(Cleo Harttman)
マーケットアナリスト—仮想通貨、ブロックチェーン、NFT、オルタナティブ投資。ビットコイン弁護士。