1920年代初頭、チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)は全世界から出資を募り、2,000万ドル(現在の価値で2億5,800万ドル)を集めたが、これは詐欺だった。出資者には確かに高い配当が支払われたが、その原資に新たに勧誘した別の出資者からの出資金を充てていたのだ。以来、同様の投資詐欺は、彼の名にちなんでポンジスキームと呼ばれている。

ポンジスキームは 「既存の出資者への配当に、新規の出資者からの出資金を充てる投資詐欺」と定義される。このスキームでは、投資家たちは高いリターンを約束するゼネラルマネージャーに高額な手数料を支払う。しかしそのリターンとやらは、別の投資家から集めた出資金なのだ。出資者からの出資を除いて、この会社には収入源がない。

ポンジスキームはいずれ行き詰る。リターンの原資を外部資金のみに依存している以上、新たなカモが見つからなくなれば、このからくりは崩壊し、出資者にリターンが支払われなくなるのは当然だ。ポンジスキームは倫理的に許されるはずがなく、各国のSECなどの規制当局によって厳しく取り締まられている。

P2Eゲームとポンジスキームの密接な関係

21世紀に入ると、プレイ・トゥ・アーン(Play-to-Earn(P2E))ゲームが登場し、Axie Infinityは空前の世界的ブームとなった。2021年のAxie Infinityのトランザクション量は35億ドルを記録し、ネイティブトークンの$AXSは180倍もの値上がりを記録した。このゲームはフィリピンをはじめとする新興国で特に人気が高く、プレイヤーは現地の賃金よりも多くのお金を簡単に稼ぐことができた。

P2Eゲームは参入障壁が低いにも関わらず、プレイヤーに莫大な収益をもたらす可能性を持つ。低所得国のプレイヤーにとっては、人生を変えるチャンスといえる。P2Eゲームが現代の善の力であるかは、今後の慎重な議論を要するだろう。にもかかわらず、現時点でP2Eゲームをポンジスキームだと断ずる批判者は後を絶たない。その多くは、暗号技術とP2Eに対する大衆の無知によるものだ。無知は恐怖を生み出す。しかし、P2Eゲームがカード破産を招いた例も世界ではごまんとあり、無知による恐怖もあながち間違いではないという側面もある。

P2Eゲーム初心者のために、簡略化された例で説明しよう。
「ABC」というゲームがあったとする。ゲームに参加するには、100ドルのNFTをまず購入する。開始コストを支払うことで、プレイヤーは1日あたり100トークン(0.01ドル相当)を稼ぐことができるようになる。稼いだトークンは通常、アップグレードやレベルアップなど、ゲームのエコシステムに参加するために使用されるが、ただちに現金化することもできる。

ここまでは「極めて無害なモデル」のように見える。しかし、ユーザーはどこからお金を引き出して現金化しているのだろうか? 流動性プールだ。ほとんどのP2Eゲームはローンチ時に流動性プールを開設し、ゲームトークンをUSDC等のステーブルコインにペグ(連動)させている。プレイヤーは、ゲームトークンをUSDCに交換することも、その逆もできる。そうすることで、プレイヤーがゲームを開始するための初期の流動性がブートストラップされる。ゲームが進行すると、プレイヤーは流動性プールを追加したり、成長させたり、売買する裁量を持つようになる。

上記のような簡略化されたP2Eゲームであれば、モデルから得られる収益は、新たに参加するプレイヤーにかかっている。P2E市場の飽和により、需要が減少するという脅威はまさに現実のものだ。その結果、流動性プールは増加せず、現金化を希望するプレイヤーによって一方的に枯渇させられることになる。これはいわゆるゼロサムゲームであり、古参の参加者がすべてを手に入れ、新参の参加者は健全なリターンを得られない。

ならば、すべてのP2Eゲームは本質的に非倫理的であり、すべてのP2Eゲームはポンジスキームとなるのだろうか。私たちは「否」と信じる。以下では、P2Eゲームを持続不能にする要因と、それらを克服する方法を具体的に提示しよう。

トークンノミクスがゲームの持続可能性のカギを握る

基礎となる概念は単純だ。需要と供給のバランス。これに尽きる。支払いの需要が増えるにつれて、入ってくる収入も増えてくる。その逆も真なり。これがトークンノミクスの肝である。トークンノミクスは 「暗号資産を支配する数学とインセンティブ」 のしくみを明らかにする。これは、実需を生み出すユースケースや、供給量を減らすためのバーン(焼却)、時間の経過とともに資産価値に影響を与える心理的および行動的要因など、トークンの価格メカニズムのすべてを網羅的にカバーしている。すぐれたトークノミクスは、プロジェクトの長期的な成功に不可欠である。適切に設計されたトークンノミクスがなければ、ゲームトークンのインフレーションはスパイラル的に進み、その末路はクラッシュである。

・供給:トークンが過剰に供給されると、トークン価格は下落する。
・需要:実需がないと、プレイヤーはトークンを現金化してしまうので、トークン価格は急落する。

先に進む前に「流動性プールとは何か?」「なぜそれがP 2Eゲームに必要なのか?」を理解する必要があるだろう。流動性プールとは、簡単にいえば 「資産間の取引を容易にするために使用される、スマートコントラクトにロックされたトークン(仮想通貨)のプール」 である。例を見てみよう。

・いま流動性プールには、10個のトークンXと10個のUSDCがあるとする。この場合、「1トークンX=1 USDC」である。
・ユーザーがトークンXをUSDCにスワップ(交換)すると、トークンXの価格が下がる。逆の場合も同様。
例:ユーザーが5トークンXをUSDCにスワップすると、トークンXからUSDCへの「プール内での」交換レートは0.80 USDC/トークンXに低下する。

流動性プールの枯渇を回避し、ゲームトークンの価値を維持するには、プレイヤーがトークンを使用または保持するよう、インセンティブを与える必要がある。そのメリットは2つ。第一に、トークンの焼却メカニズムにより需要が誘発され、供給が減少すること。第二に、流動性プールからの流出が回避されること。以上を前提に、トークンに十分な実需が生まれることがきわめて重要となる。上記により、トークンの供給は減り、トークンの需要は増えるだろう。また、支出メカニズムの機動的な管理も必要だ。さもないと、プレイヤーにとって自分のトークンを保持する理由がなくなってしまう。支出メカニズムの具体例としては、アイテムのレベルアップ、コスメの購入、雑多なマイクロトランザクションが挙げられる。

危険信号:ポンジ的性格の強いゲームの持続可能性

結局のところ、古参の参加者と新参の参加者の収入のバランスを取らず、新参の参加者がもたらす出資金に依存するゲームは、ポンジスキームに限りなく近い。以下では、P 2Eゲームの失敗例を紹介しよう。

設計があまいトークンエコノミー

ゲーム開発者は、需要と供給のバランスが取れるように、トークンエコノミーを構築する必要がある。次のような危険信号が見られれば、当該ゲームの持続可能性を疑ってみた方がよい。

・トークンの実需が限定的
・プレイヤーに現金化のインセンティブがある(流動性プールの枯渇につながる)
・焼却メカニズムが存在しない / 実行しない
・実際のユーザーよりも個人投資家を優遇する、おそまつな流通モデル
・投資家がトークンの使用に関心がなく、すぐに売却したがる(流動性プールの枯渇につながる)
・個人投資家の権利確定期間が限られている、あるいは権利確定期間がない(運営チームがトークン価格のつり上げと売り逃げを企んでいる顕著な兆候といえる)

「最終面」に簡単に到達してしまう

簡単にゲームの「最終面」に到達すると、プレイヤーは退屈してしまい、キャッシュアウトを選択することになる。私たちの多くがゲームをする理由は、達成感を味わうためであろう。たとえば「Runescape」は、全世界で2億以上のアカウントが作成された史上最大のMMORPG(多人数同時参加型オンラインロールプレーイングゲーム)だが、このゲームは無料ユーザーから重課金者まで、あらゆるレベルのプレイヤーを対象としている。最高レベルに達するのに、ユーザーは最低数ヵ月、場合によっては数年を費やす必要がある。このマイルストーンに到達したプレイヤーは、ほんの一握りしかいない(2020年時点で9,712人) 。これは、大多数のプレイヤーにとって、ゲームを進めるための動機、目指すべきゴールが常に失われていないことを意味する。

もしP2Eゲームが多くのプレイヤーに、この 「最高レベル」 に簡単に到達することを許してしまうと、プレイヤーは取り組むべき目標を失ってしまい、必然的にゲームからキャッシュアウトすることになる。これが製品ライフサイクルの早い段階で起きると、ゲームのプロジェクトが本格的に動き出す前にゲーム経済は不安定になってしまう。

P2Eゲームは、単にプレイするのが楽しいだけでなく、高いリターンを売り物にしなければならない宿命にある。

ゲームで一番大切なのは、プレイするのが楽しくて楽しくてしようがないということだ。ゲーム自体に、プレイヤーに楽しみを与えてくれる強力なファンダメンタルズがなければ、人々がプレイする唯一の理由は、換金目的でトークンを集めることだけになってしまう。現金化のインセンティブは、ゲーム経済にとってもはや天敵といえる。

もしゲームが面白くなければ、ゲームプロジェクトの運営チームはユーザーを惹きつけるために収益面をアピールする可能性が高い。このようなゲームでは、ゲームの持続可能性を犠牲にして、異常に高いリターンでユーザーを釣ろうとすることがよくある。

はっきり言って、P2Eゲームの世界の現状はかなり悲惨だ。市場に氾濫しているP2Eゲームの中には、実際にはゲームとは呼べない代物で、数回のクリックでペイアウトを約束するあやしいプラットフォームが存在する。これらのモデルは最初の数回のP2Eイテレーションではうまくいったようだが、それはユーザーが賢明ではなかったため、誇大広告により無知につけ込まれたのと、まっとうな競合相手や成功事例がなかったからにすぎない。現在、クリプトの世界では、P2Eゲームは既にありふれたものになりつつある。P2Eブームに乗って手っ取り早く儲けようとしても、そうは問屋がおろさない。成功するためには、ゲームを適切に設計し、プレイヤーにプレイを続けるようインセンティブを与え続ける必要がある。

収益性とポンジ的性格のバランスを考慮

結局のところ、ほとんどのP2Eゲームを悩ませているポンジ的な特性を抑えながら、ゲームの収益性を維持することは可能なのだろうか?-それは可能だと断言しよう。

ポンジ的特性の問題は、ほとんどのゲーム開発会社にとって切っても切れない問題である。開発会社は従来型のゲーム制作に精通しているがゆえに、P2Eゲームもその延長線上にあると考えがちだ。しかし、これ以上の誤解はない。P2Eゲームは、ゲームトークンの流動性と持続可能性に関して、多大な時間と献身を必要とする。万事が適切にオペレートされている状況においてでさえ、運営チームは状況を積極的に監視し、機動的に介入する必要がある。

P2Eゲームには、ゲームの持続可能性を高める利点がある

アクティブな管理による強力なトークンノミクス

トークン価格は不安定であるため、開発者はゲームのリリース初期には、トークンをかかりっきりで監視することが重要である。

トークンノミクスの優れた仕組みに「シンク(sinks)」がある。この仕組みは、プレイヤーがプレイヤーであるためにはトークンを使い続ける必要があるため、トークン需要が維持されるというものだ。また、シンクには、トークンの供給量を抑制するための強力な焼却メカニズムや、トークンのステーキングにまつわる機動的管理が規定されている。

STEPNには、トークン需要が維持されるように複数のシンクが存在する。これには、スニーカーの修理、レベルアップ、ステーキングが含まれるが、これらに限定されない。

ユーザーに真の価値をもたらすには?

金儲けだけに焦点を当てたゲームが持続可能でないことは明らかだ。暗号資産の価値は、潜在的な収益に直接結びついている。ゲームを持続可能なものにするためには、単にお金を稼ぐだけでなく、本質的な価値を提供しなければならない。

収益性の上にあるもう1つの層は、NFTのような暗号資産の持つ無形価値である。これは、所有者にもたらされる文化的、美的、あるいは社会的利益の総量を表している。NFTは、ゲームに無形価値を付与することで、ゲーム内のアイテムの価値を高めるものだ。これにより、流動性プールの流出を抑え、ゲーム内のアイテムの市場価値を高める。このような無形価値がなければ、暗号資産の全体的な価値は時間とともに減少し、ゲーム経済は崩壊へと向かうだろう。

つまり、開発者はゲームが楽しいだけでなく、ゲームに付随する金銭的報酬と、さらにはユーザーに無形価値を提供することを保証しなければならない。たとえば、ゲームコミュニティ内のネットワーキング、メンタルヘルスの向上、認知能力の発達などがそれである。

コミュニティに所属することのメリットは、2021年の「GameStop Stock Saga」が顕著な例だろう。このゲームは非常にリスクの高い投資であった。にもかかわらず、多くの人々が投資することを選んだのは、「団結すれば強い(Apes together strong)」 というスローガンが生まれ、Gamestopへ出資することは 「ダイヤモンドを手に(Diamond-handed)」、コミュニティへの賛同を意味し、ウォール街の大物たちの独占に反抗することを宣言できたからだ。コミュニティに所属することで得られる付加価値のもう1つの例は、「Crossfit」に見られる。研究によると、「Crossfit」の驚異的な成功の最大の要因は、ユーザーが所属することに誇りを持てるコミュニティと文化をうまく生み出したことにあるという。このような絆の強いコミュニティをP2Eゲーム上に創り上げることで、プレイヤーは友だちをつくったり、オンラインベースのホームをつくることができ、プレイを続けることがモチベートされ、結果的にゲームの寿命を飛躍的に延ばすことができる。

STEPNを例にとろう。

STEPNの特徴は、目に見えない価値と目に見える価値の両方をユーザーに提供することである。ユーザーが日常既に行っているであろうコアな生活活動を行うことで報酬を得られるようにアプリをデザインした。

収益性は、プレイヤーがアクティブであり続けるためのインセンティブとして機能している(フィットネスにおけるインセンティブの問題は、業界全体が取り組んでいる永遠のテーマである) 。歩いて移動することで、ユーザーは常にアクティブな状態を維持し、健康上のメリットを享受できる。まもなく実装される予定の新機能は、ユーザーによる投票で決まったものだ。ゲームの利益から、カーボンオフセットを購入する。これにより、ユーザーはゲームから利益を得るのと同時に、地球温暖化問題に取り組むことができるという、ゲームによる世直し的な側面が追加される。

ゲーム経済を管理するためのBonding curveメカニズムの導入

開発者は、Bonding curveを利用することで、ゲーム内のアイテムの供給量を管理することができる。P2Eゲームはいまだ導入期にあるため、Bonding curveは現段階では概念にすぎず、実証研究はなされていない。だが、将来的には、実装可能なソリューションとなる可能性がある。簡単に言えば、Bonding curveはトークンの供給を直線的な価格上昇に連動させる。つまり、供給量が多いほど、価格は高くなる。ゲームでは、この概念をトークンだけでなく、ゲーム内のアイテム供給にも応用する。たとえば、ゲームでは、希少アイテムの供給量の決定はトークンよりもさらに難しい問題となるが、Bonding curveを実装することで解決できる。一定の閾値に達すると、Bonding curveがアクティブになり、その後にステーキングされるアイテムの価格は供給量の増加とともに上昇する。

STEPNでは、将来的にBonding curveを簡略化して実装することを予定しており、プロジェクトの成長にあわせて徐々にバージョンアップしていく予定である。

P2Eゲームの未来

まとめると、P2Eゲームは、適切に設計されたトークンノミクスと価値創造を通じて、持続可能性と倫理性を両立させることができる。但し、その健全性の程度は、市場のモーメントとユーザーのセンチメントに左右される。P2Eゲームがポンジスキームとの関係を完全に断つには時間がかかるだろう。だが、運営チームによる継続的な監視と機動的な介入によって、P2Eゲームが持続性を維持し、すべてのプレイヤーにとって公平な状態を維持することは、さほどむずかしいことではない。

STEPNでは、アプリの持続性を重視し、ゲームユーティリティトークンGSTとガバナンストークンGMTのバランスを維持するために積極的な手段を講じている。

ガバナンストークンGMTの発行量は、3年ごとに半分になる。
直近では、コミュニティAMAでGMTの収益メカニズムを公開し、ホワイトペーパーにも掲載した。詳細はこちら

STEPNでは、ユーザー数の増加は、少なくとも現時点では問題としていない。STEPNは現実のユースケースを持ち、コミュニティ運営に焦点を当てているため、広く世に受け入れられつつある。しかし、私たちにとってより重要なのは、この成長が持続可能ということである。STEPNは、あえて「いばらの道」を歩むことをためらわない。アクティベーションコードの復活は、真の持続的成長を願ったものだ。GSTとGMTのバランスが健全であるか常に監視し、エコシステムの価値の最大化を図っている。私たちはこれからも、STEPNを最高のフィットネスアプリにし、コミュニティに最高のサービスを提供するための道を歩んでいく。