コールドウォレットから仮想通貨が引き出せなくなっていると言われれている、カナダの仮想通貨取引所QuadrigaCX(クアドリガCX)。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、実際にはコールドウォレット内には仮想通貨が無いのではないかという専門家の分析を取り上げている。

Quadrigaは昨年12月に創業者であるジェラルド・コットン氏が急死したことで、取引所のコールドウォレットにアクセスすることができなくなっていると言われている。ユーザーは自分の仮想通貨を出金できない状態だ。アクセスできない仮想通貨は1億9000万カナダドル(約158億円)相当といわれている。Quadrigaは1月31日にカナダの裁判所に対して債権者保護を申請した。

発表によれば、大手監査法人のアーンスト&ヤングは裁判所から債権者保護手続きをモニターする独立した第三者として任命された。アーンスト&ヤングは、この問題が浮上した際にレポートを出し、「コールドウォレットにアクセスできないか、コールドウォレットに仮想通貨が入っているかを確認できないかのどちらか、もしくは両方のケース」が考えられると指摘していた。

専門家からは疑問の声

WSJは仮想通貨アナリストのジェームズ・エドワーズ氏の分析を取り上げている。エドワーズ氏は、公表されている取引所の取引記録を分析し、Quadriga側が主張するような、巨額の仮想通貨を保管しているウォレットを取引所側が管理している証拠はないと主張している。「QuadrigaCX用の識別可能なコールドウォレットは存在しないとみられる」と述べている。

エドワーズ氏によれば、一時的に大きな残高を持ったウォレットが存在したことを示唆する証拠はあるが、現在の残高は非常に低いものだという。現在、最も大きな金額が入ったウォレットはホットウォレットであり、取引目的で使われているという。

エドワーズ氏の分析はビットコインにフォーカスしたものだが、WSJによれば、ブロックチェーン関連の調査企業エレメンタスグループはイーサリアムについて分析し、同様の結論に達したという。

仮想通貨取引所クラーケンのパウエルCEOは、Quadrigaの問題を「奇妙な話で、正直言って、信じられない」とツイート。パウエル氏は、クラーケン側でもQuadrigaの件を調査する考えを示している。

創業者は死去する12日前に遺書

ブルームバーグは5日の記事の中で、創業者のコットン氏が死去する12日前に遺言を提出していたと報じている。報道によれば、遺言は昨年11月27日に署名され、遺産の受取人を自身の妻に指定していた。コットン氏はインドでクローン病の合併症で死去したと発表されている。ユーザーの間では不信感が広がっており、取引所のユーザーの一部からはReddit上で死去自体を疑う説まで出ていた。

またロイターの7日の報道によれば、カナダのコロンビア州証券委員会(BCSC)は、Quadrigaを規制していないと述べた。規制当局の担当者は、2017年からQuadrigaの存在は認識していたが、同取引所が証券やデリバティブを手掛けていないことから、「BCSCを規制していない」とロイターに述べた。