仮想通貨支持者たちは、法定通貨の弱点を指摘することに熱心だった。現在の新型コロナウィルスのパンデミックによる危機と、地政学的な激流に揺さぶられた不確実な世界においては、これまで以上に仮想通貨・ブロックチェーンの存在感が高まっているようだ。

8月3日に公開されたツイートの中で、リップルのブラッド・ガーリングハウスCEOは、世界の準備通貨としてドルに替わる可能性のある様々な選択肢を調査したブルームバーグの記事に触れ、法定通貨への信頼が失われていく中で、グローバルな金融システムが多様化することを選択していると主張している。

ブルームバーグの記事の中では、ドルの主要なライバルとしてどのようなものが考えられるのかを検討している。その中には、日本円や人民元、ユーロといった主要な法定通貨、IMF(国際通貨基金)が創設した特別引出権(SDR)、金(ゴールド)、そして仮想通貨(暗号資産)を取り上げている。

多くの政府が「ブロックチェーンを真剣にみている」 

リップルのガーリングハウスCEOは、現在デジタル通貨が勢いを持っていることは、「結局のところ金融システムへの信頼」の問題であると指摘している。

「世界の人々が法定通貨への信頼を失い続けているため(私たちは米ドルでそれをみているところだ)、彼らは多様化することを選択している。私たちの将来のグローバルな金融システムも同じように機能することになるだろう」と、ガーリングハウス氏は主張している

ガーリングハウス氏の主張は、ビットコイン支持者として知られるファンドストラットの共同創設者であるトム・リー氏の意見に近いものだ。

リー氏は、ブルームバーグの記事の中で「伝統的な金融システムでは信頼が崩壊しつつある。それがテーマだ」と語っている。「ドルへの信頼を失っていくことになれば、ほかの選択肢が増えていくことになる」と付け加えている。

地政学的な秩序の変化、世界的な貿易と投資への緊張を背景に、ガーリングハウス氏は、仮想通貨の本質的な利点はかつてないほど明らかになっていると主張している。

「1年前、多くの人々が仮想通貨を詐欺行為と非難していた。現在では大多数の政府がブロックチェーンに真剣に取り組んでいる。依然は解決が非常に困難であると想定されていた摩擦(たとえば決済や透明性など)に対処している。仮想通貨は年初来から80%上昇し、米ドルは3%下落している」

実際、中国のデジタル人民元開発をはじめとして、世界各国ではブロックチェーン技術のイノベーションを活用しようとしている。

ドルの覇権は消え去るのか?

新型コロナウィルスによる経済危機では当初、投資家は米ドルを「避難所」と捉え、一斉にドルへの逃避が発生した。米ドルは9%の上昇となった。

しかし、このパターンは、危機が進むにつれて逆転してきている。7月は米ドルにとって過去10年間で最悪の月だった。米国と中国との間の政治的な緊張の高まり、そして優位性を持っていた米ドルがパンデミックによって多極的な世界の喧騒の中に投げ込まれたことを表している。

もちろん、ガーリングハウス氏が指摘するように、アナリストたちはドルの覇権がすぐに崩壊する可能性は低いと考えている。

ガーリングハウス氏は、世界の金融インフラのバックボーンとしての米ドルの地位が、金や人民元、仮想通貨などの資産への支持によって「消えさせることは決してない」とも述べている。「しかし、現在米ドルは弱くなっているか?イエスだ」とも付け加えている。

公衆衛生上の危機と米国の鈍い対応、そして米国内での政治的対立の二極化は、間違いなく、そのソフトパワーを失わせている。米国の債券市場の投資家は、米国の景気回復への失望の中で、価格を再設定しようとしている

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン