仮想通貨(暗号資産)は価格上昇への期待感や投資家からの注目がある一方で、仮想通貨を使った支払いは依然として周辺的な、ニッチな分野となっている。コインテレグラフでは、仮想通貨業界やEコマースの関係者にその理由を聞いた。

誰が仮想通貨を使っているのか?

仮想通貨の支払いは一定の場所では使われている。それはダークネットの市場だ。チェイナリシスの2020年1月のレポートでは、ダークネットで使われる仮想通貨の取引高が2019年に過去最高を記録したと指摘している。

Darknet market revenue vs. Darknet market  share of all cryptocurrency received by services

出典: chainalysis.com

仮想通貨のアクティビティ全体からみれば、そのシェアは小さいものの、違法な商品をやり取りする市場では、通常の支払手段は使うことができないため、仮想通貨が積極的に使われている。もちろん、年間4000億ドルと推定されている現金ベースの薬物取引の方が、仮想通貨よりも大きい額となっている。

Crypto.comのクリス・マルスツァレクCEOは、どのような種類の商品で仮想通貨が実際に使用されているのかを語ってくれた。

「それはほとんど仮想通貨関連のものがほとんどだが、いまでは旅行予約のトラヴァラもある」

マルスツァレク氏はビットペイやコインベース・コマースなどの数字に触れた上で、「取引高は非常に少ないままだ」と述べている。VISAやマスターカードに比べると、仮想通貨支払いにはまだまだ長い道のりだ。

仮想通貨支払いの問題

マルスツァレク氏は、仮想通貨支払いの採用を妨げている問題点について指摘している。

「世界中の小売業者の大多数にとって、仮想通貨はまだ未知のものであり、信頼することをまだできていないようだ」

仮想通貨POSプロバイダーのプンディX(Pundi X)のペコ・ワン氏は、コインテレグラフに次のように話している。

「仮想通貨に対する一般的な認識は『使おうとすると複雑』もしくは『仮想通貨を持つのはリスクがある』というものだ」

コインテレグラフがインビューした英国の飛行機シミュレーター事業者も同様の認識だ。仮想通貨支払いオプションを追加したが、「誰も仮想通貨を使って支払いをしたことはない」という。「仮想通貨では多くの詐欺あるため」、仮想通貨に懸念を持っているとも述べている。

ステーブルコインが助けになるか

仮想通貨支払いの最大の問題の1つは、仮想通貨のボラティリティだ。マルスツァレク氏は、ほとんどの人が仮想通貨のボラティリティばかりに目が行ってしまい、「これでは実際の事業者の採用につながらない」と述べている。

マルスツァレク氏は、Eコマースにとって「ステーブルコインが非常に強力な手段になる」と考えている。

ポルトガルに拠点を置くDBRエレクトニカのオーナーであり、プンディXのソリューションを利用しているクラウディア・バロス氏も「通貨の安定性は非常に大きなメリットだ」と述べ、ステーブルコインがエコシステムに大きく貢献すると信じている。

仮想通貨支払いは普及するか?

仮想通貨は、中国のウィーチャットやアリペイのような電子マネーシステムと競争することになる。

マルスツァレクは、プライバシーの面から仮想通貨にとっても優位性はあるとみている。

香港で活動するマルスツァレク氏は、香港のウィーチャットが中国本土では機能しないため、中国のキャッシュレス化でも北京のレストランで支払うことができなかった個人的経験を語る。さらにマルスツァレク氏はウィーチャットを使う場合のプライバシーの問題に懸念があるとも述べる。

ワン氏はまた、途上国での仮想通貨支払いの可能性について触れている。

「過去2年間、現地通貨の価値が低下しているような国では、仮想通貨はより知られており、仮想通貨を持つことへの関心も高い」と述べてる。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン