サトシ・ナカモトがビットコインについての論文を書いた時、彼はビットコインがオンライン上で機能する決済システムと通貨になることを夢見ていた。だがそれ以来、ビットコインの主な機能はその理想から著しく離れていった。
今では多くの人々が、ビットコインを価値の貯蔵手段であると同時に「夢の資産」として、上昇気流にのり強いボラティリティをもつ、他の資産に比べて儲かるものであると認識されている。
だがビットコインは決済システムとしては重大な欠陥がある。特に二つの大きな問題が、成長を妨げている。現在普及している決済プラットフォームに比べて、決済の処理が遅すぎることと、取引の手数料が高すぎることである。
ビットコイン取引にかかっている本当の経済コスト
バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストたちは、ビットコインの国際金融システムにおける役割について議論した時、最初に着目したのが、ブロックチェーン決済が承認される際にマイナー(コイン採掘者)に支払われる手数料である。
2017年の第1四半期では、一つの取引につきかかる手数料は2.40ドルだった。これは同手数料が0.024セントだった2016年の第4四半期に比べ、著しく値上がっている。
バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストによると、「手数料が存在する一つの理由は、取引データ量に連動してマイナー(コイン採掘者)がデータ計算をするための労力と時間がより多くなるから。」
銀行を介した取引のように取引手数料が強制的に徴収されるわけではないが、適切な手数料の設定がなければ、マイナーに取引を処理してもらえないといった、重大なリスクを伴います。
コイン採掘にも経済的合理性が存在しており、これによって、ビットコインが決済システムとして普及しづらくなっているのも事実である。
今現在、マイニング報酬は、新しいブロックにつき12.5BTC。現在の相場だと$75,000となる(英文記事作成時)。
アナリストたちによると、採掘された一つのブロックにつき、およそ2,000件のビットコイン取引が行われている。この情報をもとに、一つの取引につき37.5ドルの基準価格が算出できる(75,000ドル÷2,000)。
アナリストたちは、ビットコインの採掘報酬がビットコイン取引の真の取引コストを押し上げている可能性が高いと指摘している。
ビザの決済処理能力に追いついていない現状
アナリストたちは、決済処理の速度にも目を付けた。彼らは、一日に発生する300,000のビットコイン取引につき、各取引の平均待ち時間が、約10分間であることを明らかにした。
これに比べ、ビザの決済システムは、一秒間に平均で20,000件の取引を処理している上、最大で56,000件/秒の決済能力を有している。ところが「ビットコインのブロックチェーン上では、この一秒で処理されるべき決済が、約100分かかる計算になる。」
これは、ビットコインが決済プラットフォームとして普及するには、大幅な速度のアップグレードが必要であることを示唆している。
目標まで道半ば
メリルリンチのアナリストたちは、ビットコインはブロックチェーンの可能性を見出した素晴らしい証拠であると結論づける一方、「『完全にピア・ツー・ピアで取引できる電子現金』という目標には、まだまだ道半ばである。」と述べている。