ICOホワイトペーパーに記すべき内容【専門家の寄稿】

専門家の寄稿では、仮想通貨業界内外のオピニオンリーダーがその見解を示すと共に、経験を共有し、専門的な助言を与える。ブロックチェーン技術やICOの資金調達、税金、規制、さまざまな経済分野での仮想通貨の採用事例まで、あらゆる話題を提供する。

 

 イニシャル・コイン・オファリング(ICO、新規仮想通貨公開)の人気が高まっている。それに伴い詐欺が多発し、市場は乱高下している。この現状を受け、アメリカや世界各地で、ICOや仮想通貨の適正な規制に関するさらに広い議論が、遅まきながら行われている。

 商品先物取引委員会(CFTC)と証券取引委員会(SEC)の権限の適切な割り当てについて、仮想通貨エコシステムの中核であるスポット市場まで踏み込むべきかといった論点がよく聞かれる。しかし、仮想通貨やトークンによる資金調達について、まったく新しい監督機関や代替的な規制制度の必要性を検討する動きもあり、それは米国だけでなくヨーロッパなどの地域も関わっている。

 本稿は仮想通貨に関する議会証言をもとに書かれたものであり、監督機関が仮想通貨やICOの監視に用いている手法や、市場で監督体制の透明性向上の方法を考えることを意図している。

 米国証券法に体現されているディスクロージャー(情報開示)制度は概して、事業の発起人らが、特に企業や経営体制、提供する証券、収益の使用目的に関する重要情報を公に共有するものである。これらの情報はその後SECに申請される。これに対し、大部分のICOの情報公開で助けとなるのは、現在は規制対象となっていないホワイトペーパーである。ホワイトペーパーではおおむね、既存または開発中の技術、もしくはICOで資金を調達し開発する技術を中心に扱う。その結果、フォームS-1(もしくは1-A)で要求される開示内容と大部分のホワイトペーパーで提供される開示情報の間に大きな差が生まれる。

 ICOトークンを購入する者は、利益を求める投資家であろうが、革新的な製品の支援・関与を求める技術の利用者であろうが、情報に基づいた決断のために、ある程度の開示を想定している。このような開示情報には起業家自身が特定したものも含まれるが、ICOが技術専門家のエコシステムよりも証券の分配の様相を強める(一般的な投資家が集まり、公募も多くなっていくと思われる)中で特に重要となってくる。


発起人の所在

 少なくとも1つの信頼できる研究において、おおよそICOの32%は、トークン発行者もしくは事業発起人の身元を特定することができなかったと指摘されている。つまり、投資する側には深刻な情報の非対称性が生じることになる。そのような情報がなければ、投資家にどのようなルールや法的保護が適用されるかの把握・確認が不可能となる。さらに、詐欺や盗難、損失が生じた際に関係する公的機関に連絡する手段もほとんどないことになる。

 したがってICOホワイトペーパーには、トークン発行者や主要な経営陣の場所を示す(単なる私書箱にとどまらない)詳細な情報を記載すべきである。検証可能な地理的住所がない場合、資金調達でICOホワイトペーパーを利用するのを許可すべきではない。

 

課題と技術ソリューションの提案

 米証券法の歴史の大部分において、証券発行者の財務報告ほど投資家にとって重要なものはなかった。バランスシートやキャッシュフロー、損益計算書を詳しく見ることができたからこそ、投資家は過去の業績を評価し、将来の業績や収益性について情報に基づいた推測を行い、証券の価値を推定することが可能となった。証券の発行において財務報告は中核的な存在だったため、第三者の監査人や会計士、格付け会社からなる全体的なエコシステムが発展し、報告の正確性やベストプラクティスを伴った法令遵守を確実とするために頼りにされた。

 ICOの目的は、従来の新規株式公開(IPO)の大部分とは異なる傾向がある。企業がさらに成熟した発展のサイクルに移行するための資金を集めるのではなく、ICOの場合は、技術ベースの課題を特定したり、技術ベースのソリューションの販売や、資金集めを行うスタートアップ企業が開発した製品が関わってくる。資金提供の見返りとして、事業の発起人は様々な用途や通貨・証券としての機能を備えたコインを提供する。

 このようなICOの大部分において、価値を推し量る手段となるのは過去の業績や、ましてや財務報告ではなく、ベンチャー企業の技術的な提案内容によるところが大きい。結果として、ICOによる資金調達が増えていく中、基盤となる技術ソリューションの概要を投資家(公募を行う業者も含む)に理解してもらうことが最優先となる。

 そのためには、ICOのための最適な情報開示制度では、できる限り平易な英語で技術的な課題やソリューションを説明することが求められる。さらに、大規模な資金調達を行う者は、ホワイトペーパーの高度な技術的内容については第三者の検証が得られるシステム(技術監査)の対象とし、ホワイトペーパーで開示されているソリューションが健全な工学・数学の原理に適合しているかを確認することが望ましい。

 ICOの発起人については、ソリューションの第三者監査が実行されたらどうするか(そのような監査がない場合は積極的に開示する)、監査制度の重要な機能、監査結果などを示すことが求められるかもしれない。一方、調達の規模にかかわらず、すべてのコードを(Githubのような)公のコードリポジトリで公開し、購入を検討している者がコード自体や他のプロキシについてデューデリを実行し、コードの強さを調べられるようにすることも考えられる。

 発起人はソリューションの説明において誇張は避けるようにする。これはホワイトペーパーによく見られる問題である。また将来の見通しに関する記述では、客観的な根拠を特定することが求められる。同様に、ICO後の財務報告がトークン所有者に提示されるかどうかという点も明記する。

 

トークンの説明

 トークンには様々な質的・経済的機能があり、例としては証券・通貨の機能やユーティリティトークンが挙げられる。一定のルールを満たす必要のある技術フォーマット(ERC20など)に基づいたトークンの場合は、開示情報において、標準的な所有者にとってどんな意味があるかを明確に示すべきだ。同様に、トークン上場のために特別な努力が行われる場合(証券トークンを規制下の代替取引システムのATSに上場する場合や、証券に取引制限がある場合)は、そのような情報をトークン所有者にはっきりと示す必要がある。

 トークンの説明ではこれと関連して、ICOで発行されるコインの用途や数量、設立者や顧問がコインを備蓄するのか(する場合はその時期)、清算する場合の決定方法(売却に制限があるかどうかも含めて)を示す。プロモーターはまた、会社のプロトコルの知的財産や所有権(他所から借りた部分も含めて)や、トークン所有者が行使できる法的権利に関する詳細についても提示する必要がある。

 

ブロックチェーンのガバナンス

 ベースとなるインフラの仕組みや、それがトークンのガバナンスにどう影響するかも投資家に知らせるべきだ。同様に、仮想通貨のブロックチェーンのための合意形成メカニズムも示す。ガバナンスの決定やネットワークに影響を与えるその他の決定(例えばソフトウェアのアップグレード)について、開発者やユーザー、マイナーといった様々な利害関係者の間でどう調整するかの概観も同時に示す。

 

技術チームの資格

 役員や重役の実務経験に関する情報は、登録済み証券において、一般的に開示が求められる。投資家は経営の質や、上場された際の企業の成功について把握することができる。ICOの場合、企業には限られた歴史しかなく、焦点となる技術は聞き慣れないものが多い。したがってICOの技術チームに関する同様の情報が特に重要となる。

 プログラマーは多様な経歴を持ち、他者と比べてスキルが高かったり、実績があったり、経験豊富だったりする(その逆の場合もあるが)。ホワイトペーパーの専門性や信頼性について投資家に感触をつかんでもらうため、設立者は、主要なエンジニアリング経験やスキル、資格、その他関連する特性に関するすべての重要情報を提供することが求められる。関連があれば、開発者はさらにこれまでの実績へのリンクを公のコードリポジトリで公開すべきだ。

 

リスク要因

 ICOでは、トークン所有者に影響を及ぼす最も重大なリスク要因について文書内で開示するべきだろう。成功したベンチャーでも、さらに効率的な後発企業の後塵を拝する可能性があることは、大部分の投資家が認識しているかもしれない。

 しかし、トークン所有者は、製品が意図通りに機能しなかったり、テクノロジーの発展や(おそらくさらに想定外のシナリオとして)エコシステムのメンバーの希望により、まったく新しい用途や目的を与えられることに驚くかもしれない。トークン所有者はまた、大きな分野的リスク(業界内の変化によってブロックチェーンの構造が分野内のさらにニッチな役割に追いやられ、多くのトークンの価値がなくなるなど)も理解しておくべきだ。重要な点として、トークン購入者はハッキングやデータ損失、機能停止および、国境を越えたプライバシーの問題やデータ可搬性に対する脆弱性ついても十分に認識しておかなくてはならない。

 この他にも、できる限り効果的・効率的な方法で実行でき、また実行すべき重要な情報開示があることは間違いない。しかしひとまずは、適正なプロジェクトや投資家にとって有益な方向へ進んでいるICO市場に乾杯しよう。

 


本記事の見解や解釈は著者のものであり、コインテレグラフの立場を必ずしも反映するものではありません。

クリス・ブラマー氏はジョージタウン大学ローセンターの法律学教授で、同大学国際経済法研究所の所長。
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