仮想通貨相場が低調でもパニック不要 「クジラ」、「先物」、「価格操作」、「規制」などを専門家が分析

 先週の仮想通貨市場は低調な水準で推移して、ビットコイン及び他の主要仮想通貨の価格にとってあまり明るい兆しは見えていない。過去に何度かあった時より価格の変動幅は急激ではないものの、今年の仮想通貨はめぐる一般的な市場心理はほとんどの間ネガティブだ。依然として、ビットコインは価格変動の大きい資産なのだ。

 10日に始まった暴落から、SECによるイーサリアムは証券とは見なさないという発表で一時的な落ち着きを取り戻すまで、相場は値動きの大きな展開を続けている。

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Source: Coin360.io

 一体、仮想通貨相場では何が起きているのか?
 仮想通貨、投資、及びマーケットの分野の数人の専門家が相場の現状と下落傾向が続く理由についてコインテレグラフに見解を述べてくれた。

 

仮想通貨クアンタムのミゲル・パレンシア氏:「クジラ」に関する見解

 クアンタム(Qtum)は時価総額で現在20位だが、その最高情報責任者であるミゲル・パレンシア氏にとって現在の価格の低さは、仮想通貨の分散化の性質が発展途上にあって現状では見せ掛けのものとなってしまっていることと関係がある。

 同氏はコインテレグラフに対し、「クジラ」(単独で相場に影響を及ぼすことができるほど巨額の資産を持つ投資家)が価格の変動に対し持っている影響について語ったが、この種のプレイヤーが比較的小規模でも新しい市場においてはエコシステムを存続させる手助けをしてくれている面もあると指摘する。

「ビットコインは、他の資産やテクノロジーと同様、利用方法が普及していくサイクルを通る過程にあって、しばしば資産価格と相関関係にある場合が多い。ビットコインの普及サイクルは完全に分散化された運用が実現する時に加速されるだろう。結局、ブロックチェーン・エコシステムが完全に分散化されて大口の出資者や「クジラ」に制御されなくなる時、市場が信頼を取り戻すことになり、再び上昇するだろう。他方、価格変動がいかに激しくても、相場は真のビットコイン信奉者たちに支持され続けるので、ビットコインがゼロになることはないだろう」

 パレンシア氏によれば、「クジラ」は諸刃の剣だ。「クジラ」は、疑われているうような価格操作で間違いなく役割を担っているが、彼らの投資によって市場が持ちこたえるというプラスの側面もある。

 

コーネル大のシラー准教授:価格操作に対する厳重な取り締りに注目

 今週明らかになった大きなニュースのひとつは、テザーとビットフィネックスが価格操作の渦中におり、2万ドル近くの高値となった12月の価格上昇はこれによって起きた、という論文が公表されたことだ。これもまた、市場の下落に結び付けられてきた。

 コーネル大学のエミン・ガン・シラー准教授は、このニュースだけでなく、価格操作に対する厳重な法的処置もまた、相場が低迷している理由とみている。また、相場が未だに独立していない現状が投資家の不安を大きくしている、と説明する。

 「仮想通貨市場は初期段階にある。それぞれの通貨が依然として独立していなという事実からそれがわかる。あるプロジェクトが他のプロジェクトに対して長所を持っているにもかかわらず、通貨がすべて一致した値動きをするのはこのためだ。これは、この分野への構造的なリスクが最も重大な懸念だということを示している」

「現在の下落は、そのようなリスクのひとつが表面化したものと言える。つまり、取引所に対する法的処置と価格操作を止めさせようという取り組みだ。これは長い間進行中だったが、早すぎるに越したことはない。今後、法的処置の実施は控えめな範囲となり、現在必要とされている明確さと確実さを市場にもたらすだろうと私はみている」

 価格操作に関する論文が、ビットコインの現在の価格に負の影響をもたらしているかもしれないが、これはポジティブ材料にすぎない。ガン・シラー准教授にとっては、「(膿をだしきるのは)早すぎるに越したことはないの」だ。

 「実際のところ、これらのテクノロジーにはビジネスを一変させる可能性がある。価値を維持するのに価格操作は今後必要ではなくなるはずだ。市場が各通貨をそれ自体の長所で評価できる独立した世界を私は楽しみにしている」

 

ファンドストラットのトム・リー氏:下落の3つの要因と先物の影響

 ファンドストラット・グローバル・アドバイザーの共同創業者であり研究責任者のトム・リー氏は、ビットコイン価格の強気な予測で著名な人物。ビットコイン市場が急落している3つの理由をコインテレグラフに説明し、先物市場について自身が感じることにも言及した。リー氏は、今年中にビットコイン価格が2万5000ドルに達するという強気な予想をしている

「仮想通貨が下落している理由には複数の要因があると思う。1つには、昨年末にチャート上で放物線状の動きがあったため、現在は価格調整の時期が発生している」

「また、もっと大きな要因として上げられるのが、政府が多くの措置を講じ仮想通貨の投資家を怖がらせたことだと思う。おそらく最も注目すべき規制は、SECによるICOへの規制など米国の規制機関が講じた措置だ」

「最後に、機関投資家の参入速度がに予想より遅く、それが一因となって相場を先導する誘導灯がなかなか灯らない現状が生み出されていると思う」

 リー氏はまた、ビットコインの先物契約の期日が直近のビットコイン価格下落の要因のひとつになったと感じている、とブルームバーグに語った。同氏は、価格変動の大きい先物からくるこれらの動きがいつまでも続くことはないだろうと述べ、コインテレグラフに対して下記のように解説した。

 「参加者が多い通常の流動性の高い市場において先物市場は、その基盤を揺るがすような影響力を持たない。先物市場は、機関投資家に活用されることで市場の流動性を高めているし、他からの流動性の流入にも一役買っている」「仮想通貨では現在、需要と供給の問題がある。節税対策のための売りやマイナーへの報酬、その他の要素のために仮想通貨の需要に対し供給が多くなっている。先物市場は、価格操作の可能性にさらされてきた。これから数年間もこの状況が続くとは思わない。ただ、現時点の先物市場の取引高がたった1億前後であっても、ビットコイン価格に影響を与えるには十分だ」

 

コイントレーダーの創業者、アリスター・ミルン氏の見解

 オルタナ・デジタル・カレンシー・ファンドのCIOでコイントレーダーの創設者であるアリスター・ミルン氏は、1年全体のパフォーマンスを精査しており、12月の急騰を大局的な目で見ている。2万ドルの高値と比べれば相場は下がっているかもしれないが、1BTCにつき6000ドルまたは7000ドルは、依然としてかなりいい方だ。

 ミルン氏は、最近の下落は「採用件数やユーザーの数の現象、確定売り、そしてヘッジングが組み合わさったことによるもの」と説明した。

「アルトコインが特に非常に過大評価され、調整が遅れた。今は再び、需要が供給を満たす均衡を探っている。マクロ的な視点から見ればこれまでにないほど状態はよく、したがって14年や15年との比較は見当違いだと思う」

相場は底をつき下落は終わると望んでいる人がたくさんいる一方で、ミルン氏はまだ下落相場が続くと考えているが、むしろそれによってさらに安定した基盤ができて力強い回復を支えるだろうと考えている。

「最終的に底をついた後の値戻りは緩やかなものとなる。おそらく価格が急激に回復するのは2019年だろう」

 

ナイーム・アスラム氏の見解:セキュリティ及び規制に懸念

 6月11日、韓国の小さな仮想通貨取引所がハッキングを受けたと報じられ多くの大手報道各社はこの出来事を市場の急激な下落の理由と結びつけた。

 しかし、評論家の多くはこの因果関係に反論し、価格低下について他の理由を探してきた。海外FXシンク・マーケットのチーフアナリストであるナイーム・アスラム氏は、ハッキングがビットコインの価格に対し直接的にどれほどの影響を与えたかは問題にされておらず、いかに大手メディアが仮想通貨界に対して否定的な報道をしているかが表れたと指摘する。

「取引所は、顧客を保護するために最高の技術を活用しておらず、ハッカーはこの問題を最大限利用している。問題は、このようなハッキングに終わりがあるのか?だ。数ヶ月おきに同じパターンが発生している。これは規制の緩さの結果であり、規制当局は顧客を保護するために介入しなければならない。取引所と取引をする人は全員、高度なセキュリティを採用し定期的にセキュリティ更新を行うことを強いられるべきだ」

 このようなハッキングは、仮想通貨への投資に対して大きなリスク要因になりうるし、従来の投資家が投資を始めるのを尻込みする原因になる。これは仮想通貨への投資熱を冷めさせる要因だ。

「従来の投資家は、強気相場が最高潮の時はよりリスクの高い資産を探し求め、弱気相場が始まる時は逃げるものだ。しかし、賢い投資家は少々異なるアプローチをとる。資金をリスクの高い資産から安全なものに動かすのだ。例えば、強気相場では、金融やテクノロジー、エネルギーといった分野が最も好まれる。一方、市場がピークに達して下落し始めると、ポートフォリオ・マネジャーやヘッジファンドは生活必需品などの分野を好みだす。より配当率が良い株を探し求めるのだ。市場の一般的なトレンドが下降気味であったとしても、それでも市場全体に比べてよい利益率を手にするからだ」

 

パニックは不要

 現在の市場心理はネガティブで一般投資家であれば心配になる状態かもしれないが、全体として、話を聞いた専門家たちは警鐘を鳴らしてはいないようだ。

 ガン・シラー准教授は一層の規制によって噂されている市場操作を一掃しようと目を光らせており、パレンシア氏は現時点での「クジラ」の必要性に関して大切なポイントを提起している。しかし将来は、真の分散化が達成されビットコインはより強くなるだろう。

 ミルン氏も先を見据えているが、まだ底をついていないことを心配してはいない。それによって、ビットコインがそこから一層力強く回復できると信じているからだ。アスラム氏もまた、ハッキングとセキュリティの乏しさが市場の自信に影響を与えるという、重要な側面を指摘している。

 仮想通貨市場には修正する必要のあることがたくさんあるが、こういったことが解決された時、価格はより魅力的な水準へと自ら修復の道をたどるはずだ。

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