サプライチェーン業界での応用に注力する仮想通貨VeChain(ヴィーチェーン)が活発だ。先週の反発局面では相場をけん引し150%近く反発。時価総額は880億円を超えコインマーケットキャップで第19位の通貨となった。6月末にあったメインネット立ち上げやブランド刷新が順調に進んでいることが好感されていると見られるが、IoT(モノのインターネット)​というメガトレンドをつかむ動きが評価されている可能性がある。

独自のブロックチェーンを運営するVeChainは流通の効率化に的を絞った企業向けソリューションだ。中国のワインメーカーや欧州ラグジュアリーブランドでも商品埋め込みチップを使ったブロックチェーン技術が採用されるなど、実社会での応用にこだわる。

もともとVeChainは中国発のプロジェクトだが果敢にグローバル展開を推し進め、鋭いビジネス感覚を発揮している。VeChainThorというブロックチェーンの技術面をしっかり押さえながら、矢継ぎ早に大手企業との連携等も進めるのがVeChain流だ。

(参考記事:「【アルトコイン速報】PwCがVeChain(VET)運営企業の株式取得」)

そんなVeChainが8月上旬に発表したのが、NTTドコモが主催する「5Gオープンパートナープログラム」への参加だ。これは2018年2月にNTTドコモが立ち上げたもので、技術検証やワークショップを通して5Gの活用方法を探る集まりのようだ。

だがドコモや5Gと仮想通貨(ブロックチェーン)の組み合わせと聞いてもあまりピンとこなかったのか、同アナウンスはツイッター等SNSではあまり話題にはならなかった。

だがよく考えると、仮想通貨と5Gを組み合わせると革命的な未来が描けるのだ。

ちなみにドコモは早くも2015年に米最大手の仮想通貨取引所コインベースに投資しており、今後点と点がつながっていく素地は十分ある。

5G+仮想通貨がIoTを飛躍させる

5Gは文字通り4Gに続くモバイル通信技術だ。ただ速いだけでなく「超低遅延通信(低レイテンシー)」を実現し、様々なデバイスやセンサーを繋ぐIoTの分野での応用も期待されている。例えば自動運転や、外科手術の遠隔操作等を可能にするのだ。

そしてあらゆるデバイスが繋がるIoTの世界で、仮想通貨が重要な役割を果たす可能性がある。それはIoTが生み出すデータを一つの経済圏化することだ。

例えばセンサーから得られるデータの記録・取引・流通を媒介したり、デバイスが行うアクションやデータに対するインセンティブを与えることに使われることが想定される。その際、個人が持つスマホがセンサー代わりになることもあるだろう。スマホが得た環境データをAIに提供することで仮想通貨をもらう、というようなことが可能になるかもしれない。

世界中にちりばめられたセンサーから得られる大量のデータをもとに、AI(人工知能)が進化しスマート社会の実現が加速するだろう。

同時に着目されているのがIoTのセキュリティを向上させる可能性だ。特に、自動運転や遠隔手術機器がハッキングされると人命にかかわる。そこで、ブロックチェーンを使ってセキュリティ侵害を防ごうというわけだ。

仮想通貨が、5GやAIなどの技術革新が実現するスマート社会のいわば血液になり得るのだ。

VeChainはサプライチェーン銘柄から「IoT銘柄」に?

VeChainはこれを見越していち早く5Gに目を付けている可能性がある。IoTではIOTA等のDAGが先行しているイメージがあるが、VeChainは商品につけるタグを使った実践ケースで先行するなど着実に駒を進める。5月に発表されたホワイトペーパーでもIoTにも大きく章がさかれ、同分野に本腰を入れつつある印象だ。

5Gを普及させる上で課題となるのが機器やセンサー間の接続プロトコル の標準化だ。3GPPが規格をつくっているが、ソフトウェア面でのチャンスは残されている。VechainばデバイスIDやセキュリティ面で触手を伸ばしはじめていると言えるだろう。

5Gが本格的に普及する2020年以降までまだ時間はあるが、その時に基軸通貨となるのはどの仮想通貨になるのは。IoTやAIの世界における仮想通貨の覇権争いは既にはじまっている。