米シリコンバレー銀行の経営破綻等でいわゆる伝統的な銀行業界に混乱が生じ、USDコイン(USDC)がドル・ペッグを維持できなくなったことを受け、格付け機関のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ステーブルコインの採用にマイナスの影響を与え、仮想通貨に関する規制を求める動きが強まる可能性があると指摘した。

ムーディーズが3月16日に公表した最新版のコメントでは、3月10日に発生したUSDCのディペッグ問題により、法定通貨を担保とするステーブルコインが新たな困難に直面する可能性があるという見方が示されている。同社アナリストは次のように指摘する。

「法定通貨を担保とするステーブルコインの多くが驚異的なレジリエンス(回復力)を見せ、FTXの経営破綻等の過去の難局を切り抜けてきた。だがこれは今までの話で、銀行破綻やディペッグといった最近の出来事から、ステーブルコインの発行者側が比較的少数のオフチェーン型金融機関に依存することで、ステーブルコインの安定性に限界があることが露呈した。」

3月10日に突如発生したシリコンバレー銀行の経営破綻は、同行に33億ドルの資産を保有していたサークル・インターネット・フィナンシャル(USDC発行元)にとって重大なリスク事象となった。USDCの価格が約0.87ドルに急落したため、同社はUSDCの償還を実施し、3日間でおよそ30億ドルの資金が同社から流出した。

同社によると、米国内銀行の3月15日の業務終了までに「USDCのミントや償還に関する要求の処理は未処理分も含めてほぼ全て完了した」とのことだ。

連邦預金保険公社(FDIC)がシリコンバレー銀行の預金を全額保護する方針を発表すると、USDCと米ドルとのペッグが急速に回復した。同社のジェレミー・アレールCEOは3月14日、ブルームバーグの取材に対して「(シリコンバレー銀行に預けていた)33億ドルの準備金は全額利用可能になった」と明らかにした

ムーディーズは、USDCは米ドルとのペッグを回復したものの、米国の規制当局がシリコンバレー銀行の無担保預金を保護する方針を打ち出した後だったことを指摘した。同社アナリストは「規制当局が預金保護の方針を打ち出さなければUSDCには売りが殺到し、資産の清算を余儀なくされていた可能性がある」とし、次のように補足した。

「現在の市場のボラティリティを鑑みると、サークル社の資産を保有する銀行で取り付け騒ぎが次々と発生し、USDC以外のステーブルコインのディペッグに発展していた恐れもある。」