仮想通貨のマイニングにおける化石燃料の使用は、その倫理的側面をめぐる議論が加熱しており、依然として同業界の重要なテーマの1つとなっている。そんな中、米デンバーに拠点を置くマイニング企業と、豊富な天然ガス埋蔵量を持つ中東のある国の政府が思いもよらない提携を結び、仮想通貨が化石燃料の無駄使い削減において果たす前向きな役割の新境地を切り開こうとしている。

ブルームバーグの報道によれば、使われない燃料エネルギーを仮想通貨マイニングのコンピューティングパワーのために再利用している事業者、クルーソー・エナジーは、国内ガス生産量の21%を輸出しているオマーンで事業を開始する。同国は30年までに、ガスフレア(天然ガス採掘過程で発生する過剰な可燃性ガスの焼却処分)ゼロの達成を目指している。

この米国企業はオマーンの首都マスカットにオフィスを開設し、ガス廃棄物の捕捉装置をガス田に設置する予定だ。同社はすでに、オマーン最大のエネルギー生産会社であるOQ SAOCおよびオマーン石油開発とのワークショップを開催している。クルーソーのチェイス・ロクミラーCEOによると、最初のパイロットプロジェクトは今年末か23年初頭までに開始するという。

オマーン政府が今回の提携に関心を示す後押しとなったのが、同国の目指す国内ガスフレア削減の目標である。オマーンは、アルジェリア、イラク、リビア、エジプト、サウジアラビアと合わせ、アラブ地域全体のフレアリングの90%を占め、同地域全のフレアは世界の38%を占めている。国連の西アジア経済社会委員会の試算によれば、オマーンで18年にフレアリングされたガスは、国内消費量の10%にのぼる。