GENIUS法が正式に成立して間もないが、その影響はすでに仮想通貨業界に波及している。成立からわずか7日で、ステーブルコイン市場の時価総額は40億ドル近く拡大し、2640億ドルを突破。企業による関連分野への関心も高まっている。
この急騰は驚きではない。GENIUS法は、銀行や資産運用会社などの機関投資家に対して、米証券取引委員会(SEC)による強制執行の懸念なしに法定通貨担保型ステーブルコインを扱うための連邦規模の枠組みを提供している。
規制の明確化は、新たな資金、新たなプレーヤー、そして競争の激化をもたらす。実際、GENIUS法の成立前からその兆候は現れていた。
5月のヤフーファイナンスのインタビューで、コインベースのブライアン・アームストロングCEOは、銀行のステーブルコイン市場参入を懸念しているかと問われ、「ノー」と即答し、「誰もがステーブルコインを発行できるべきだ」と語っていた。
従来型の金融機関もこの考えに同意しているようで、新たな参入者が相次ぐ中、注目はステーブルコインの設計とその発行体へと移りつつある。
すべてのステーブルコインが同じではない
ステーブルコインはいずれも価値の安定を目的としているが、その実現方法には大きな違いがある。主に4つのカテゴリーに分類される。法定通貨担保型、仮想通貨担保型、アルゴリズム型、商品担保型である。
最も一般的なのが法定通貨担保型で、米ドルなどの法定通貨に1対1でペッグされ、現金や米国債などの資産によって裏付けられている。執筆時点で、ステーブルコイン市場全体の約85%を占める。
GENIUS法はこのタイプに焦点を当てている。代表的な法定通貨担保型ステーブルコインには、テザー社のUSDTとサークル社のUSDコイン(USDC)があり、両者の合計時価総額は2270億ドルを超える。GENIUS法の下では、準拠する発行体は十分な準備金を保持し、監査を受け、適切なライセンスを取得する必要がある。
仮想通貨担保型ステーブルコインは、イーサリアムやビットコインのような仮想通貨によって過剰担保されたものだ。代表例はDAI(旧MakerDAO)で、複数の仮想通貨を担保に持ち、時価総額は約43億5000万ドルに上る。
残る2つカテゴリは規模は小さいが注目に値する。アルゴリズム型ステーブルコインは供給量を自動調整してペッグを維持するが、テラ・エコシステムの崩壊に見られるように脆弱性が明らかになっている。GENIUS法ではアルゴリズム型ステーブルコインは対象外とされている。
商品担保型ステーブルコインは、パックス・ゴールド(PAXG)のように金などのコモディティを担保とし、インフレヘッジとして期待されるが、流動性や保管の複雑さにより普及は限定的だ。
機関投資家の参入が加速
7月18日のGENIUS法の成立以降、ステーブルコイン市場には企業や金融機関、銀行の参入が相次いでいる。
22日、米国で唯一の連邦政府の認可を受けた暗号資産銀行であるアンカレッジ・デジタルは、イーサリアム系のエセナ・ラボと提携し、ステーブルコイン発行プラットフォームを立ち上げた。この取り組みにより、エセナのUSDtbがGENIUS法の枠組みの下で米国内で発行されることとなる。
同日、ウォール街の資産運用会社ウィズダムツリーもドル建てステーブルコイン「USDW」を発表。配当支払いが可能なトークン化資産向けに設計された同製品も、GENIUS法の要件を満たす形で設計されており、ウィズダムツリーは規制のもとでステーブルコイン分野に進出する初の資産運用会社のひとつとなった。
大手銀行も動き始めている。GENIUS法が成立する数日前の7月16日、バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOは、同銀行がドル建てステーブルコインの発行を検討していることを明らかにした。
さらに7月初旬には、JPモルガンやシティグループもステーブルコイン市場への参入準備を進めていることを明かしている。
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