コインテレグラフのコメンテーターでトレーダーのトシムリン氏が今後のビットコインの相場展望について最新記事を寄稿した。
まずはいつも通り、前回の記事での予測を振り返るとしよう
前回の記事では「ビットコインは過去の相場で顕著な高値をほぼ一定の周期でつけてきており、そのサイクルに従えば次の高値は10月前半頃となる可能性が高い」とした上で、「10月から11月の下落リスクには警戒が必要」と述べた。
また、「しばらくの間は、ファンドが今年ロングポジションを積み上げている 101,170~108,405 ドルがサポートとして機能する可能性が高い」とも述べたが、現時点でもこの水準がしっかりと機能していることが確認できる。(図1参照)
前回までの記事では中期的な見通しとしてアメリカの景気後退リスクを懸念していたが、現在も景気後退が完全に回避されたわけではなく、むしろ「遅効性の毒」のように経済システムに浸透しつつある兆候が複数観測されている。
失業率は4%台前半と低水準を保っているが、GDP成長率は2024年の2.8%から2025年には1%台前半へと急減速する見込みとなっている。
JPモルガンは景気後退確率を一時60%から40%に引き下げたが、Bankrateの調査では2026年9月までの確率が35%から39%に再上昇しており、リスクが消えたわけではなくタイミングが後ずれしただけのように感じる。
さらに深刻なのは、2025年10月から43日間続いた史上最長の政府機関閉鎖だ。11月13日に終了したものの、経済損失は推計110億ドル(約1.6兆円)に達し、10〜12月期のGDP成長率を1.5ポイント押し下げる見込みだ。
航空管制官の不足による欠航増加、65万人の連邦職員への給与未払い、そして最も重要な経済統計の発表遅延が、経済実態の把握を困難にし、市場の不安定化を招いている。
特に10月の雇用統計が欠損する可能性があり、FRBの政策判断に重大な支障をきたしている。
この統計の空白期間が、FRB内部での12月利下げに対する意見の深刻な分断を引き起こしている。
ロイターやウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、10月のFOMC会合では既に議論が紛糾し、データ不足の中でインフレ懸念派と雇用重視派の対立が激化した。
パウエル議長は「12月の利下げは既定路線ではない」と明言しており、市場が見込む12月利下げの確率は当初の72%から60%へと低下している。
ボストン連銀のコリンズ総裁は「インフレ高止まりを理由に、近い将来の追加利下げのハードルは比較的高い」と述べ、クリーブランド連銀はインフレ率が年末時点で3%となり2026年まで高止まりすると予想している。
この金利の高止まり自体が新たなリスク要因となっている。
FRBは9月と10月に計0.5%の利下げを実施したが、政策金利は依然として3.75〜4.0%と高水準にあり、関税による価格転嫁圧力、財政悪化、学生ローン政策変更などの構造的要因が重なって、企業と家計のマインドを悪化させている。
特にサンフランシスコ連銀のデーリー総裁が「高金利を過度に長期維持する過ちは回避する必要がある」と警告している点は、現在の金利水準が経済に過度な重荷となっている可能性を示唆している。
結論として、景気後退リスクは未だに存在する見るべきだろう。
ただしそれは急激な崩壊ではなく、政府閉鎖による経済活動の停滞、統計不在によるFRBの政策判断の困難化、金利高止まりによる景気圧迫という三重苦の中で、2025年後半から2026年前半にかけて緩やかに失速していく可能性が高いと考えられる。
一方でポジティブなニュースもある。
トランプ政権は日本から5500億ドル(約80兆円)、サウジアラビアから6000億ドル、中東諸国全体では2兆ドル規模の投資確約を取り付けている。
これらはAI・エネルギーインフラ・製造業など具体的なプロジェクトとして進行しており、米国への資金流入が実際に始まっている。
GAFAMなどテック企業も政権との関係改善を図りながら国内投資を拡大する姿勢を示している。
さらに市場の期待を高めているのが、関税収入を財源とした一人当たり2000ドル(約30万円)の現金給付計画だ。
共和党のホーリー上院議員が法案化を進めており、コロナ禍の給付金を想起させるこの政策は個人消費を直接刺激する景気対策として好感されている。
このため、2026年前半までは政策期待と資金流入を背景に金融市場が堅調に推移する可能性は十分にあると予測している。
このような状況を踏まえ、今回は前回に続いてサイクルの観点からビットコインの動きを分析していく。
サイクル分析は、反発や反落といった相場転換の「おおまかなタイミング」を把握するための手法であり、前後にずれが生じることも多い点は念頭に置く必要がある。
しかし、これまでの周期データを照らし合わせると、ビットコインが次に一旦のボトムをつける可能性が高いタイミングは11月17日前後と見られる
したがって、ここから数日のうちに「短期的な底打ち」が訪れる可能性が高まっていると考えられる。
現在のビットコインは、相関性の高い複数の指標と比較しても割安水準に位置しており、独自で作成している「ビットコイン理論値価格乖離率」においても、短期・長期の両面で大きく下ザヤ(割安)を示している。(図3&4参照)
このことから、相場が下支えされる局面が近づいていると推察できる。
理論値ベースで見ても依然として過去最低水準には達していないものの、もし11月17日前後がサイクル的なボトムであるとするなら、まだ数日間は下落余地を残している可能性がある。
具体的には、下値余地としてはテクニカル的に87,670~94,045ドル付近まで下落しても不思議ではないが、98,732~102,780ドルは中期的な買い場として十分に妥当な水準といえるだろう。(図4参照)
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著者 トシムリン
トレード歴16年の現役為替トレーダー。20歳の頃から専業トレーダーとなる。6年間はトレードが上手くいかず一時借金を背負ったが、研究と分析を積み重ねて独自手法を編み出し、7年目からプラス収益となり、そこからは安定的に利益を出し続けている。一般投資家が持ちえないマーケットの内部構造を多角的に分析して市場を予測していくことが得意分野。分析能力と育成能力に定評があり、トレード教育によって多くの常勝トレーダーを輩出している。
ここに表示された見解および意見は、著者のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を反映するものではありません。すべての投資とトレーディングにはリスクが伴うため、意思決定の際に独自の調査を実施する必要があります。