米国のティックトッカーにとってはまさかの展開が起きようとしている。政治的な判断によって自分たちのこれまでの投資が一気にパーになるかのうせいがある。いい加減にお上の意向に左右される中央集権型ソーシャルメディア自体にリスクがあると気づく良いきっかけにはならないだろうか。

米国で追い込まれるTikTok

米中対立の煽りを受けて、米国がTikTok(ティックトック)の利用禁止を検討している。

先週末には、米国のマイクロソフトがTikTokを運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の米国事業を買収することで交渉が進んでいると報じれた。3日、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOがトランプ大統領と話し合いの場を持った結果、ナデラ氏はTikTokの米国事業買収で交渉を継続することを明かしたという。

これまでホワイトハウスの意向が明らかになるまでに買収交渉が延期されることになったと報じられていた

トランプ大統領には、TikTokの米国での利用禁止、もしくは売却させるために措置を講じる権限があるという。ポンペオ米国務長官の2日のFOXニュースとのインタビューによると、TikTok規制に向けてトランプ大統領が数日以内に行動を取る見込みだ。

トランプ大統領は、売却より利用禁止を望んでいるとする報道も出てている。

背景にあるのは、米国人利用者のデータ流出による安全保障上への懸念だ。TikTok側は否定しているものの、TikTokが持つ米国人利用者の膨大なデータを中国共産党に渡す可能性が問題となっている。

また各メディアが報じたように、日本も自民党の議連がTikTok禁止を政府に提言する方針だ。

ティックトッカーVSトランプ大統領

TikTokのユーザーは日米ともに10代が中心。米大統領選挙の選挙権は18歳以上だ。今回のトランプ政権のTikTokへの対応次第では、10代による猛烈なトランプ非難の風潮が生まれることになるかもしれない。

元々、トランプ大統領は若者の支持基盤が弱い。前回の2016年の大統領選挙では、18歳〜29歳のカテゴリーでトランプ大統領に投票したのは全体の28%。ヒラリー・クリントン候補の58%を大きく下回っている

ティックトッカーとトランプ大統領には因縁もある。

6月に新型コロナウイルス蔓延後に初めてトランプ大統領がオクラホマ州のタルサで開催した集会は、予定より多くの観客が入らなかった。当時のトランプ選挙対策本部トップのブラッド・パースケール氏は100万枚のチケット応募があったと発表していたが、実際の会場には空席が目立っていた。

ニューヨーク・タイムズによると、TikTok利用者や韓国のKポップファンが数万枚のチケットを悪ふざけで予約し実際には会場に行かなかった。あるティックトッカーは、ユーザーに対して「1万9000席の会場をほとんど空席、もしくは完全に空席にしたいならすぐにチケットを予約してトランプ大統領をステージにボツリと立たせよう」と呼びかけていた。

オクラホマ州のタルサの集会が盛り上がらなかった一因となったと報じている。

米国のTikTokユーザーは1億人と言われている。

CNBCが指摘するように、もし米国ティックトッカーが11月の大統領選挙でトランプ大統領の再選を阻止するために団結する可能性もある。

いまこそ分散型SNS

問題は、ティックトッカーが今後はどこで活動するかだ。

ただ、ティックトッカーは、トランプ大統領だけを目の敵にするわけにも行かないだろう。問題は、TikTokの中央集権的なデータ管理体制であり、中国共産党にデータ売却されてしまう可能性があること。一方、中国共産党側がTikTokを使ってプロパガンタを優先的に配信する危険性もあった。

ウォール・ストリート・ジャーナルが報じるように、フェイスブックが来月に発表する予定のリールズ(Reels)がTikTokの代替SNSとして注目される可能性もある。中国企業ではないものの、GAFA解体を叫ぶ米議員もいる中、フェイスブックと言えども安泰ではない。

そこで注目されるのが分散型SNSだろう。「スティーミット(Steemit)」や「マストドン(Mastodon)」、「グヌー・ソーシャル(GNU social)などが有名だ。ただ、大手SNSのユーザーベースに比べれば、影響力の小ささは否めない。

昨年4月には、ユーチューブの登録者数が世界一のピューディパイ(PewDiePie)がブロックチェーン基盤のプラットフォームDLiveでコンテンツのライブストリームを開始すると述べた

個人の権利に敏感な仮想通貨業界発のツール。11月の大統領選挙で分散型SNSを使って反トランプ票の投票を呼びかける運動が起きれば、SNS時代の新たなページが開かれることになるかもしれない。