結果的に、ブロックサイズのリミットを2MBに増加させようというフォーク、Bitcoin Classicが採用されることはなかった。そして現在、ビットコインコミュニティでは、引き続き1MBのリミットで運用することでトランザクションの承認回数や手数料などがビットコインの限界を超え支えきれないところまで増え、終わりを迎えてしまうのではないかと言う懸念の声が上がっている。

しかし、Zen SoftwareのソフトウェアアーキテクトでかつてRippleのソフトウェアアーキテクトも務めていたSteven Zeller氏はまた違った考えを持っているようで、ブロックサイズのリミットは現在全く問題ではなく、ビットコイン経済は特に大きな脅威もなく1MBのリミットで比較的シームレスに動き続けるだろうという見解のようだ。

今回、コインテレグラフはZeller氏に何故ブロックサイズのリミット問題に関わらずビットコインが状態を維持し続けられるのかについて尋ねた。

 

ブロックサイズの問題

 

コインテレグラフ (以下CT): 1MBのブロックサイズ制限に関して問題はあると思いますか。

 

Steven Zeller (以下SZ)氏: 私はほぼ毎日日常的に取引所や多種多様なウォレット、取引所などを利用してビットコインを購入していますし、私の経験から言えばペイメントネットワークは非常にしっかりと機能していると思います。確かにブロックサイズの上限は取引あたりの手数料を上げる原因となるでしょう。しかし、トランザクションの認証が酷い状況だとは思っていません、ほとんどのマーチャントが承認の時間など気にしていないでしょう。

私が立ち上げたものは全てBitPayを利用しています。BitPayは高い精度でトランザクションの承認を迅速に行えるアルゴリズムを採用しています。私が関わっているアゴリストや小さな企業は一般的なウォレットを利用していますが、通常”ブロックの承認”の時間的な感覚は気にしていませんし、単純にいくら払えばいいのかトランザクションがブロードキャストされる際に数えているだけです。

去年、私が利用しているウォレットの手数料が調整できないものであったためと、オンライン上でのCoinbaseへの支払いがペンディング状態になってしまい、カスタマーサービスにお世話になるという問題がありました。しかしその時までは、利用しているウォレットの大半は手数料を変更することで問題を解決することが出来ました。

ブロックサイズを分析したことはありませんでしたが、私の勘ではブロックの大半には十分なトランザクションの空きがあり、手数料も合理的ですから、単に低い手数料を支払って行ったトランザクションが後回しになっているだけです。1日の終わりにはPurce.ioやAirbitzなどのサービスを利用して5%から10%、時にはそれ以上節約して生活に必要なものほぼすべてを購入することが出来ます。ですから、10~25セントの取引手数料はさして私にとって問題として認識されてはいません。

 

承認回数

 

CT: 取引のボリュームが増えることで承認回数が問題になると思いますか。例えば、1週間も承認に時間がかかってしまう、など。

 

SZ: それは全てに言えると思いますし、ビットコインでの支払いが多く行われることで承認回数が増えることはあるかもしれません。しかし、トレンドとしては、ウォレットや、信頼を高めるために新たな技術を探し取り入れている決済業者だと私は思います。ウォレット市場は過熱していますし、最も素晴らしい承認プロセスやテクノロジーを提供出来る企業は最も多くのシェアを獲得することでしょう。

究極的には、承認時間は信用できるかどうかとイコールになってきます。あなたは支払ってくれる方が二重支出を絶対にしないと信用することが出来ますか。もし信用しているのであれば、承認時間がブロードキャストされるタイミングと同時、ほぼ即時に行われるはずです。地元で買い物をする際、私は隣人に対してとても信頼感を感じますから、信頼と言う点がリミットの要因になることはありません。

 

CT: ビットコインを利用して割引で商品が買えるから手数料が増えることに関して問題はないとおっしゃいましたが、マーチャントが割引を提供していなかったらどうでしょうか。

 

SZ: 私にとっては、取引手数料はビジネス経費ですし、現在そういったコストは極めて低いものです。例えば水のボトルを2つ、先日Bikram Yoga Portsmouthで、ビットコインで買い、5ドルに対して2セントの手数料を払っています。たった2%ですし、クレジットカードの方が高いでしょう。それに、例え私が月々100ドル経費を支払っていたとしても手数料はたったの10セントで、クレジットよりはるかに安く、割合はたったの0.1%です。手数料は痛手になり得ますが、私たちはビットコインの定期的な課金プロトコルの仕組みについてついつい失念していまがちです。この仕組みがあって初めてヨガスタジオでお金を浮かすことが出来ているわけですから。

 

ボリュームが増えることによって見えてくる可能性

 

CT: 個人的に、どれくらいのレートになったら問題になると思いますか。

 

SZ: 高い手数料にはある種の欠点があります。つまり増えればより問題になるということです。しかし異なる部分もあります、それは人です。私にとって、手数料は問題ではありません。もし1000ドル分のビットコインを持っていたとして、1年か2年後には需要の増加で2000ドルの価値に上がり、供給量が減りますから手数料など気にしていても仕方ありません。正直に言うと、手数料の量など私には全く関心のないことなのです。私は常に十分な手数料を毎回払っているのですから。おそらく、手数料が1ドルを超えてきたら1日1日の量で考えると大きな額になってくるとは思いますが、それは憶測の話です。

マイナーたちが究極的に最大限にお金を稼ぎたいと思うのは納得がいきますし、世界の人口全体に対しての市場の規模間というところでいうと、ブロックサイズ辺りの需要が増加することで最終的には手数料をただ上げるというより、多くの利益をもたらすことになるでしょう。トランザクションの量が増えたことで手数料がかかる可能性は、トランザクションは変わらずより高い手数料がかかる可能性を大きく上回ると私は考えしてますし、マイナーたちは他のエコノミックプレイヤーのようにふるまいがちで、利益の最大化を主に考えています。手数料の水準がとても高いものになることによって、貧しい人々がビットコインを利用できなくなるかもしれません。しかし、私はここニューハンプシャー州でビットコインを利用することにとても興味があります、FRBに対抗した、世界で最も豊かな場所の一つですから。

 

フィアットとの競合

 

CT: 承認時間や高い手数料の影響で、他の暗号通貨や競合、さらに悪い場合はフィアットマネ―にその座を奪われるような展開は有り得ると思いますか。

 

SZ: それは良い質問ですね。私は国民が積極的に手数料や承認時間などを鑑みて、様々な暗号通貨の区別がきちんとできるようになって欲しいと願っています。そして、あなたの質問に一言で答えるなら、答えはNOです。もしビットコインが中央銀行で使われているお金に主導権を奪われてしまうようなことが在ったら、それはあなたや私が、ビットコインの利点について隣人や友達、コーヒーショップにいる女の子や、車を直しているメカニックの人などに教えてあげなかったことが原因です。それは私たちに責任があります。本当は、大半の人は資本の仕組みに問題があると気づいているはずです。しかし、選択肢が存在していることすら知らない場合が多いのです。例えば、今週は3人、ビットコインには興味があるけど全部のコインを買う余裕はない、なんて言っていた人がいました!彼らは、本当は750ドルの価値があるかもしれないのに、それを20ドルで我慢している人のことなど気にも留めていないのです。

他の暗号通貨に対してシェアを落としている限り、承認時間は代替性やプライバシーに比べて重要ではなくなるかもしれません。ビットコインがアナーキストにより、匿名性を重んじるアナーキストのために作られた、と考えている人が多いためです。私がRippleに勤めている時、1秒毎に200のトランザクションを測っていましたが、最終承認時間が3秒~5秒でした。では何故リバタリアンや熱狂的ビットコインファンの人達はRippleをそんなに嫌いだったのでしょうか。それはRippleのシステムがプライベートで、且つ匿名で利用したい人向けにデザインされていなかったからです。つまり承認時間が迅速で、手数料も安く、スループットも優れているからRippleを使おう、という人 (銀行で働いている人を除く) は現実には全くいないのです。