2025年初め、マイケル・セイラー氏のテクノロジー企業マイクロストラテジーは、社名を正式にストラテジーへ改め、世界最大の企業ビットコイン保有者としての中核的な焦点を反映するため、ビットコインをテーマにしたビジュアルのマーケティング施策を採用した。
12月30日時点で、ストラテジーはビットコイン(BTC)を672,497BTCまで積み上げた。評価額は約590億ドルで、平均取得単価は1BTCあたり74,997ドルとなる。ビットコインが8万8,000ドル近辺で推移する中、含み益はおよそ17%に相当する。
ただし、帳簿上の利益がある一方で、圧力も高まっている。ストラテジーは、ビットコイン購入の資金調達に用いた優先株と負債に伴う配当や資金調達コストの支払いを続ける必要があり、ビットコインの値動きにかかわらず固定の現金支出を抱える。
こうした懸念は、11月にビットコインが8万2,000ドルまで下落した局面で再燃した。配当と債務支払いを賄えることを投資家に示すため、ストラテジーは12月1日、少なくとも12カ月分の優先配当と債務利息をカバーする目的で、14億4,000万ドルの現金準備を確保したと発表した。
2026年を前に、市場環境が悪化した場合でも、このモデルが維持されるのかを投資家は注視している。
ビジネスインテリジェンスからビットコイン財務へ
ストラテジーがビットコインの購入を始めたのは2020年8月で、戦略的な財務準備資産として、最初に2億5,000万ドルで21,454BTCを購入したと発表した。それ以降、同社は本格的な資本市場戦略へと姿を変えた。
市場価格での株式売却(ATM)プログラム、転換社債、優先株の発行を通じて、ストラテジーは中核保有資産を売却せずにビットコイン購入の資金を調達してきた。
その結果、ストラテジーは、稼働収益を生むレガシーなソフトウエア事業を残しながら、ビットコインへのレバレッジを効かせたエクスポージャーを提供する構造を築いた。ただし、ソフトウエア事業の評価への寄与は大きく低下している。
さらに重要な点として、ストラテジーの2025年の利益の振れは、ビットコインを公正価値で評価する会計への移行の影響も大きかった。この変更により、同社は四半期ごとにBTC保有分を再評価し、売却がなくても含み益または含み損を純利益に計上する必要がある。結果として、ビットコイン価格の変動が報告数値に直接反映され、収益の変動が大きくなった。
「ストラテジーがソフトウエアの物語でなくなったのは、ビットコインが語りの98%を占めた日だ。いまや同社は、BIのティッカーをまとったビットコインのヘッジファンドだ」。マエストロの共同創業者兼CEOであるマービン・ベルタン氏は、コインテレグラフにこう述べた。
同氏は、分析事業は存在するものの、巨額のBTCを抱えるバランスシートの前では取るに足らないとした。
長年、ストラテジーのビットコイン保有は、株式を通じてビットコインへのエクスポージャーを求める投資家にとって、有力な投資手段だった。直接保有や規制下の現物商品が広く利用できなかった時期、実質的にBTCの代替として機能していたためだ。
しかし、ビットコインETFの登場により、機関投資家はより低コストでエクスポージャーを得られるようになった。さらに、エムエスシーアイは、仮想通貨比率の高い「デジタル資産トレジャリー」企業を除外し得る指数ルール変更について協議している。ストラテジーは、仮に実施されればパッシブ資金の流出を招き得るとしている。
エムエスシーアイは、世界の主要な指数提供企業であり、そのベンチマークは、パッシブおよびアクティブの投資ファンドがどの株式を買うかを判断する際に用いられている。ストラテジーがエムエスシーアイの指数から外れれば、指数連動ファンドが売却を余儀なくされることが多く、需要、流動性、可視性を損ねる可能性がある。
ストラテジーのビットコインモデルは2026年を生き残れるか
ビットゲット・ウォレットの最高マーケティング責任者であるジェイミー・エルカレ氏は、ストラテジーのモデルは「仮想通貨市場が建設的である限り、持続可能だ」とコインテレグラフに述べた。
ただし、2026年に向けて同氏は、「希薄化が続くこと、金利環境への感応度、レバレッジ型の仮想通貨バランスシートに対して投資家心理が悪化する可能性」を警告した。
「市場が引き締まり、株式によるBTCエクスポージャーへの需要が弱まれば、この手法は実行が大幅に難しくなる」とエルカレ氏は付け加えた。
ベルタン氏も同様の見方を示し、強気相場では、ストラテジーがBTC保有価値を上回るプレミアムで優先株や株式を発行でき、モデルが機能しやすいと述べた。
一方、横ばいまたは荒い相場では、そのプレミアムがディスカウントに転じ、新規発行が価値を毀損しかねない。ベルタン氏は、金利上昇、現物ビットコインETFとの競争、投資家の疲れがモデルを停滞させ得るとし、配当義務が最終的にビットコイン売却を迫る可能性に言及した。
BTCが20%〜30%下落した場合、ストラテジーはどうなるか
ビットコインは高いボラティリティを持つ資産で、過去には強気相場の最中でも、20%〜40%下落してから上昇基調に戻る局面があった。
「2026年以降の弱気相場で仮想通貨資産の大幅な調整は十分に起こり得るし、ビットコインの20%〜30%の調整も起きにくいとは言えない」。ダッシュ・ダオのコアメンバーであるジョエル・バレンズエラ氏はこう述べた。
ベルタン氏は、この規模の下落が直ちにストラテジーの存続を脅かすわけではないが、ビジネスモデルの機構を損ね得るとした。急落が起きれば、ビットコイン保有価値が縮小し、同社が純資産価値(NAV)を上回る価格で株式を発行できる前提となってきた株式プレミアムが消える可能性がある。NAVは、総資産から総負債を差し引いたうえで発行済み株式数で割って算出される。
同時に、ストラテジーは高利回りの優先株や転換性商品の大きな現金支出に直面し続ける。選択肢は魅力に乏しく、NAVを下回る価格での株式発行、支払い原資を確保するためのビットコイン売却、低コストのビットコインETFが主流の市場で高コストな代替手段として位置付くことなどが想定される。
「レバレッジと希薄化が、優れた物語を静かに殺していく例として、ストラテジーを、企業ビットコインの旗艦からケーススタディへ変えてしまうリスクがある」とベルタン氏は述べた。
ただし、エルカレ氏は、ストラテジーの保有規模が「より広い仮想通貨サイクルが落ち着けば回復に向けた長期的な選択肢を与える」としつつ、短期的には、大きなBTCの下落が資本構成に相応の負荷を与えると警告した。
強気シナリオと弱気シナリオ
楽観的なシナリオでは、ビットコインが上昇を再開し、ストラテジーのNAVプレミアムが回復する。直近数カ月、同プレミアムは一時1を下回っており、これは、時価総額が、負債控除後のビットコイン保有価値を下回ったことを意味する。
エルカレ氏は、来年ビットコインが15万ドルを突破し得るとし、ストラテジーが価値増加につながる発行を再開し、株式で100%超の上昇をもたらす可能性があると述べた。
ベルタン氏の強気ケースでは、ETF流入の継続を伴うビットコインの強い上抜けが、ストラテジーの株式プレミアムを回復させ、NAVを上回る価格での発行、コストの高い負債の圧縮を可能にし、再び高ベータの機関投資家向け代替手段としてビットコインを上回るパフォーマンスを示すという。
一方で同氏は、弱気ケースではNAVディスカウントが続き、株式調達は「価値毀損型」になり、優先株や転換商品はトレジャリーに対する負担として積み上がり、「売らない」がバランスシートの基本的な計算と衝突すると警告した。
バレンズエラ氏も、ビットコインの強制売却が「連鎖的な清算イベント」を招き、より広い仮想通貨市場にも影響し得ると警告した。
「見落とされがちなのは、強気ケースは希望にすぎないのに対し、弱気ケースは会計上の必然だ」。ベルタン氏はこう述べた。
2026年のストラテジーの成否を定義する単一の指標はない。投資家は、ビットコイン保有高、平均取得単価、レバレッジ比率、優先株と負債の発行状況、仮想通貨市場のパフォーマンスを注視する必要がある。
明らかなのは、ストラテジーがもはや伝統的な事業会社とは見なされていない点だ。同社は、事業を伴うレバレッジ型ビットコイン投資手段となっており、強気相場では大きく上回り得る一方、環境が反転すれば同程度に急激に下回り得る。
エルカレ氏の表現を借りれば、ストラテジーは「増幅されたビットコイン・エクスポージャーと、レバレッジと希薄化に伴うリスク」を提供する。
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