ジョンズホプキンス大学の経済学者スティーブ・ハンケ氏は、エルサルバドルがビットコイン(BTC)を法定通貨にすることで「経済が完全に崩壊する」可能性があると警告した。
6月15日のストリーミング金融ニュースプロバイダーであるKitco Newsに登場したハンケ氏は、ロシアや中国などのBTCホドラーが、エルサルバドルをターゲットにして保有しているBTCを現金化できるようになると指摘した。そしてエルサルバドルにある米ドルが枯渇することになると予測する。
「エルサルバドルのすべてのドルが消えてなくなり、国のお金が枯渇してしまい、同国の経済が完全に崩壊する可能性がある。彼らは国内通貨を持っていない」
インタビューの中で、ハンケ氏は、ナジブ・ブケレ大統領のビットコイン法案に賛成票を投じた議員のことを「一言でいえば、馬鹿げている」と述べ、ほとんどの市民が現金に依存している国で、BTCが毎日の取引で使える法定通貨として機能するのは大いに疑問だと語った。
「タクシーに乗ったときにビットコインでお金を支払うつもりはない。馬鹿げている。…エルサルバドル人の70%は銀行口座さえ持っていない」
JPモルガンは11日、より慎重な言葉で同様の懸念を述べている。
「ビットコインを第2の法定通貨として採用することによる具体的な経済的利益を確認することは難しい。またこれはIMFとの交渉を危うくする恐れがある」
一方、中米経済統合銀行(CABEI)は逆の見解を示しており、エルサルバドルによるBTC採用は革新的であり、「多くの機会を生み出す」と述べている。またCABEIはエルサルバドルが法定通貨としてBTCを採用することを支援するための技術諮問グループを組織することも明らかにした。
ハンケ教授は、エルサルバドルの件については、ビットコインを使って米ドルを手に入れたいと考える勢力が背後にいるのではないかと疑っている。
また、ハンケ氏は、ビットコインを使ったクロスボーダーの送金は「ナンセンス」とも指摘。資産を使用するには、資産を即座にドルに交換する必要があるからだ。
「エルサルバドルにいるおばあちゃんが、送金を待っていて、彼女にビットコインを送るとする。それは問題ないが、彼女はどうするか?彼女はドルを手に入れるためにATMにいかなければならない。それが何かを買うことができる唯一の方法だからだ」と、ハンケ氏は述べている。ただ、今回のエルサルバドルの方針では、企業がビットコインを受け入れることを義務化するとしている。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン