米ドルなどの法定通貨と連動する仮想通貨テザーの運営会社と監査法人フリードマンLLPとが関係を打ち切った、という観測が27日から流れている。コインテレグラフでは週末中に両者に連絡したが返答は得られていない。

 テザーは米ドルなどの法定通貨に連動した仮想通貨で、テザー社によって保管される法定通貨の準備金に裏打ちされていることになっている。

 正式な声明なしに関係を打ち切ることは珍しく、物議を醸しかねない。これまでも仮想通貨コミュニティではテザー社が十分な準備金を維持しているかに疑問を呈する声が上がっていたからだ。

 さらに、テザー社と共通の株主を持つ世界最大級の仮想通貨取引所であるビットフィネックスでは昨年、レバレッジをかけた大口取引が観測されており市場操作疑惑に拍車をかけていた。

 こういった疑惑を打ち消すため、テザー社は米ニューヨークに本拠をおくフリードマンLLPに監査を依頼していた。

求められる情報開示

 テザー社は昨年年間を通して米ドル準備金をめぐる疑惑の的になっているが、うまく弁明できていなかった。

 「テザー社の貸借対照表履歴の監査手続きを行うためにフリードマンLLPと契約を結んだ。だがここ数カ月で市場に流通するテザーの量が大幅に増加したので、我々の銀行における口座残高と発行されたトークンの量と残高についても取り急ぎ分析するよう依頼している。フリードマンはこのようなコンサルティングサービスを提供することに同意し、テザー社の現預金および発行トークン量とその残高に関する有用な情報を経営陣に提供することに努める。フリードマンLLPはこういったサービスを17年9月15日より迅速に提供することが可能となっている。だがこれらコンサルティングサービスは監査または証明を行う契約ではない。その場合、さらに拡大した手続きと完了までに更なる時間が必要となるからだ。」

 今回のテザー社とフリードマンLLPの関係打ち切りの知らせは、仮想通貨取引にさらなる疑念をもたらす可能性がある。

2400億円の準備金は存在するのか

 テザー社は顧客から受け取った米ドルの分量だけ仮想通貨テザーを発行し、顧客に渡すことになっている。現在テザー社の現預金は約2400億円あるとされているが、正式な監査がない限り真偽を確かめることはできない。また、準備金が他の目的に使用されていないかの確認も必要だ。

ビットコイン市場操作の疑惑も

 これまでもテザー発行には常に疑惑がつきまとってきた。例えば、一度に50~100億円規模のテザーが発行されることはよくあるが、誰がこれだけのテザーを買っているのか憶測を呼んでいる。

 昨年、共通の株主を持つビットフィネックスと銀行との関係が中断されて以来、同取引所は資金の出し入れをテザー社のトークンに頼ってきた。

 一部で推測されているのが、テザー社が準備金以上のテザーを発行しビットフィネックスに送金。その後ビットフィネックスがこれらトークンを証拠金としてレバレッジをかけビットコインの売買をするという構図だ。

 ライトコインの創始者であるチャーリー・リー氏は昨年ビットコイン価格が急上昇した局面で、米ドルの準備金に裏付けられていないテザーがビットコイン価格を押し上げている疑惑を指摘し、ビットフィックスとテザー社に対して開示を求めていた。

 これら批判の声を受け、ビットフィックスは昨年12月、匿名で批判を続けるブロガー等を訴えるとしていた。

 コインテレグラフではさらなる情報が入り次第、続報を発表する予定だ。