ソフトバンクのヤフー株取得:仮想通貨・ブロックチェーンでもシナジー強化に期待できるか

 通信事業を手掛けるソフトバンクは10日、ヤフー株を公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。米アルタバ(旧・米ヤフー)が保有する35%の株式のうち、約11%を約2210億円で買い付ける。ソフトバンクはヤフーとの直接的な資本関係を構築することで、イーコマース分野などでの協業拡大につなげる考え。ヤフーが持つB to Cプラットフォームとソフトバンクが進めるブロックチェーン分野とのシナジーも期待できるだろう。

  ソフトバンクは9日、株式上場準備の開始について発表しており、ヤフーとの協業深化でほかの通信事業者との差別化を図り、競争力強化を目指す。

 ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は10日の発表の中で、「私はヤフージャパンの将来の成長を強く確信しており、ソフトバンクグループの群戦略における、ソフトバンクとヤフージャパンとの重要なシナジーに期待している」と、今回の取り組みの意義を強調している。

ソフトバンクとヤフーのシナジーは?

 ソフトバンクとヤフーは既に「Yahoo!プレミアム」をソフトバンクのユーザーに無償提供したり、「Yahoo!ショッピング」の利用に追加ポイントを付与するキャンペーンなど、一部で協業を行っている。ソフトバンクは「コンテンツ分野」や「シェアリングビジネス分野」といった部分での協業範囲拡大を検討していくという。

 ソフトバンクとヤフーとのシナジー強化で、仮想通貨・ブロックチェーンを巡る国内のほかのプラットフォーマーとの競争でも差別化が図られるかもしれない。

 ソフトバンクは、世界各国の通信事業者との間でブロックチェーン導入を目指したコンソーシアム「キャリア・ブロックチェーン・コンソーシアム」(CBSG)を運営している。今月はじめにもマレーシアやベトナムなどの通信事業者6社が新たに参加し、コンソーシアムの取り組みは拡大している。

 CBSGは決済や個人認証などの分野でブロックチェーンを活用したサービスを導入しようとしている。一部報道によれば今年度中に日本と台湾で決済サービスの実験も開始する予定という。

 ヤフーが展開するイーコマースをはじめとする様々なサービスが、ソフトバンクが開発を進めているブロックチェーンと組み合わされれば、大きな相乗効果が期待できるだろう。加えて、ヤフーは今年4月、子会社を通じて仮想通貨交換業者のビットアルゴ取引所東京の株式を取得。仮想通貨・ブロックチェーン領域への参入に意欲を示している。

 ヤフーのライバルにあたる国内のプラットフォーマーは、既に仮想通貨・ブロックチェーン導入に向けた動きを進めている。

 LINEは先月28日、ブロックチェーンを活用した「LINEトークンエコノミー」構想を発表。LINEの様々なサービスをブロックチェーンの分散型アプリ(Dapps)として提供し、トークンによってユーザーへのインセンティブ付与を目指す考えだ。国内のサービスはまだだが、7月中には仮想通貨取引所サービスも展開する予定だ。またフリーマーケットアプリを展開するメルカリも、自社プラットフォームへの仮想通貨決済を検討中だとしている。

広がるSBGのブロックチェーン投資

 ソフトバンクの上場審査が順調に進めば、今年中に上場する見通しだ。報道によれば、2.5兆円規模の資金調達を目指すとみられており、ソフトバンクグループの投資分野などに活用されるとしている

 SBGは傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドなどを通じて、仮想通貨・ブロックチェーン分野への投資も積極的に進めている。

 今年2月、ソフトバンクグループは、オルタナティブ投資大手のフォートレス・インベストメント・グループを33億ドルで買収したと発表。フォートレスは、仮想通貨ウォレットや保管サービスを手掛けるXapoといったフィンテック企業への投資を積極的に進めている。

 またビジョン・ファンドが出資している中古車流通プラットフォームの独オート1は、アリアンツやドイツ銀行と共同で、ブロックチェーンを使った自動車ローン提供に乗り出している。3社で設立した「オート1フィンテック」を通じて、保険やローンなどの提供を目指す。

 SBGの孫正義氏は6月20日の株主総会の中で、ブロックチェーンについて「まだ始まったばかりの技術」としながら、「ブロックチェーンなどを使った技術に取り組んでいる」と発言している。ソフトバンクとヤフーの協業、そしてソフトバンク上場による資金調達で、ブロックチェーン導入・投資が加速されることになるだろう。