米証券取引委員会(SEC)とCFTC(商品先物取引委員会)は伝統市場への合成証券エクスポージャーが得られる仮想通貨(暗号資産)ポートフォリオアプリ「アブラ(Abra)」を運営する米国企業などに罰金を科した。
SECのリリースによると、アブラは「登録済みの国内取引所でスワップ取引を行わなかった」ことに加えて、CFTCは適切な登録なしで個人投資家に対してデジタル資産や外貨での「証券ベースのスワップ取引」を事実上提供していたことが問題視した。
アブラは一種の「中央集権型」合成資産を提供しているサービスだ。ユーザーはビットコイン(BTC)やライトコイン(LTC)を担保にすることで株式のような伝統的な証券のエクスポージャーを得られる。アブラのシステムはベースとなる証券の価格変動に基づいてコインを削除したり追加したりしていた。
SECの調査によると、今回問題視されたサービスは2019年2月に米国を含む全世界のユーザーに提供された。アマゾンやアップルなど多くの銘柄を合成証券エクスポージャーとして提供した。開始直後に、アブラは「適格投資家」以外の個人投資家に販売していたことからSECから機能停止命令が下されたが、米国ユーザーの利用を禁止し、2019年5月に再び開始した。
しかし、これは当局の規制を避けるのには十分ではなかったようだ。
業務の一部をフィリピン企業Plutusに移管し、カリフォルニア州のアブラの従業員はコントラクトの設計や販売、ヘッジを行いながらユーザーの審査を行っていた。SECはこれを不十分と見たようだ。
SECの合成金融商品ユニットのダニエル・マイケル氏は「米国でビジネスの基幹部分を担っているのに、米国以外の個人投資家と取引するということだけでは企業は連邦証券法を回避できない」と警告している。また米国内で正式な登録を得ずに米国利用者に株やデジタル資産の商品を提供していたという。
一方CFTCは合成資産がどのように配布されたかを問題視。アブラの商品は「契約市場として指定された取引所」つまりCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のようなデリバティブ取引所のみが販売できるとした。さらに以下のように付け加えた。
「これらの契約の注文を勧誘したり、受け付けたりする際に、アブラは登録なしで先物を販売するなど違法に運営していた」
アブラ側は命令に合意し、和解金30万ドル(約3200万円)を支払った。
アブラは2014年にビットコインの送金サービスを開始。そのほか多くのアルトコインの取引を提供している。
2020年5月、アブラはステラ開発財団から500万ドルを調達している。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン