無数の王子や億万長者が存在しているサウジアラビアで、最も裕福なのがアルワリード・ビン・タラール王子である。彼はサウジアラビアを樹立したAbdulaziz Alsaud王の孫にあたり、フォーブス誌の世界長者番付の45番位に位置する。また投資家としても知られ、投資会社キングダム・ホールディングを通して、リフト、ツイッター、シティグループ、またロンドンのザ・サボイホテル等、幅広い投資を行っている。 

 彼はツイッターやAOLなどのテクノロジー会社に設立初期の段階で投資をする投資家として有名であるが、どうやらビットコインの波には乗り遅れたようだ。ちなみに彼はフォーブス誌の億万長者番付上位10位に入るために自身の資産を過大申告しているとして、以前論争を巻き起こしたこともある。 

暗号通貨に否定的な大物たち 

アルワリード王子は、最近の米CNBC テレビの経済番組のインタビューで、

“このビットコインというものを私は信じていない。いつかは破綻するだろう。エンロンの二の舞が作られているのを見ているようなものだ。”

と述べた。同氏によると、中心となる監督機構が存在しないことが、仮想通貨が必ず失敗する理由だと言う。 

今年に入って投資界の大物による仮想通貨への懐疑論が高まっており、JPモルガン・チェースCEO の ジェームズ・ダイモン 氏も9月の投資カンファレンスで暗号通貨に関する否定的見解を表明し、話題になったばかりだ。 

アルワリード王子は同インタビューで、

“全くこの仕組みに合理性はない。米国連邦準備制度理事会やその他のいかなる中央銀行の監督を受けていない。全く信じられない。(JPモルガンの)ジェームズ・ダイモン 氏と同意見だ。”

と付け加えた。

エンロンの例えは有効か 

エンロンは会計の抜け穴を利用し偽りの企業イメージを作り上げていた不正の手本のような企業として知られる(2001年に倒産)。組織的に行われた不正の結果エンロンは倒産し、当時業界大手に数えられた会計事務所アーサー・アンダーセンは解体された。 

 不正を行っている企業と分散型通貨に共通点はないが、アルワリード王子はエンロン事件発覚当時、同社の株価が 90 ドルから 1ドルに下落したことを理由に、仮想通貨の価格も下落すると信じている。 

ビットコインは "体制" を脅かす 

ジェームズ・ダイモン 氏とアルワリード王子が気付いていない(もしくは気づきたくない)のは中央監督規制がないことはビットコインの弱点ではなく、むしろ強みであるということだ。我々は、中国やロシアなどの政府が取引所を閉鎖させたり、厳しい規制提案を出して、暗号通貨を抑圧しようとするのを見てきている。暗号通貨は人々にお金を自分で管理させることにより権力体制を脅かすことになるのである。ウォール街の人間や中東の王子が危機を感じ、それをつぶしにかかるのも無理はない。