オーストラリア中銀のオーストラリア準備銀行(RBA)は2日、コモンウェルス銀行やナショナル・オーストラリア銀行、金融サービス企業のパーペチュアル、イーサリアム開発企業のコンセンシスと協力し、「イーサリアム基盤の分散型台帳技術」を利用したホールセール型中央銀行デジタル通貨(CBDC)の可能性を探るプロジェクトに取り組むことになったと発表した

RBAは「トークン化されたCBDCの発行」のための概念実証を研究していると述べた。具体的には、ホールセール市場の参加者がDLTプラットフォーム上のトークン化された協調融資にデジタル通貨を使用する可能性があることや、クロスチェーン・アトミック・スワップを使用した受渡し対支払いのセキュリティ決済を研究する。

RBAのミケーレ・ブロック総裁補佐は、「このプロジェクトでは、ホールセール金融市場取引の効率性、リスク管理、イノベーションにCBDCが与える影響を探ることを目的としている」と述べた。

「これらの市場でCBDCを使用するかどうかは未解決の問題だが、オーストラリアの決済システムにホールセールCBDCの将来的な役割があるかどうかを探るために業界のパートナーと協力できることを嬉しく思う」

中央銀行は、プロジェクトは年内に終了し、2021年に報告書を発行する予定だ。

RBAはようやくCBDCへの取り組みを強化するよう方針転換したようだ。RBAの決済政策担当部長は10月14日、9月にRBAがレポートの中でCBDCを発行するための政策事例はないと述べたにも関わらず、調査を継続していると発言した。

RBAは9月、CBDC発行の代替手段として、効率的でリアルタイムな新決済プラットフォームの成功を指摘し、「オーストラリア人が紙幣を使い続けることを望む限り」、紙幣へのアクセスを提供する意思があると述べている。

RBAのこれまでの分析では、CBDCは商業銀行の資金調達コストの増加など、大きなデメリットをもたらす可能性もあると述べている。

現在、商業銀行は資金の約60%を預金から調達している。預金資金が失われれば、商業銀行は株式や資本市場からの資金調達にさらに依存するようになる可能性がある。ペーパーでは次のように指摘している。

「預金資金の喪失とほかの資金源への依存拡大は、銀行の資金コストの増加をもたらし、それらおバランスシートのサイズと金融仲介の量の減少をもたらす可能性がある」

さらに、CBDCの存在は、金融市場でストレスが発生した際に問題を引き起こす可能性を指摘。現在、企業や一般ユーザーが特定の銀行への預金に警戒したとしても、資金を引き出すことには実際上には一定の制約があるが、CBDCであれば、銀行システム全体に懸念が生じた場合、預金が一気に失われると問題視している。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン