不動産投資をするためには、アパートやマンションなどを購入しなければならない。アパートやマンションは、一般的に数百万や数千万円と高額だ。マンション一棟に投資をする場合、価格が1億円を超えるケースも珍しくない。そのため多くの投資家は、マンションやアパートなどの購入資金を賄うために、金融機関から不動産投資ローンを借り入れる。

本記事では、不動産投資ローンの特徴やメリット、デメリット、住宅ローンとの違いなどをわかりやすく解説する。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、不動産投資をするために必要なマンションやアパートなどを購入するためのローンだ。都市銀行や地方銀行、信用金庫、ノンバンクなどさまざまな金融機関が取り扱っている。ノンバンクとは、貸金業務のみをする金融機関だ。また政府が出資をする金融機関である「日本政策金融公庫」でも、不動産賃貸事業に対する融資を行っている。

不動産投資ローンの仕組み図解

不動産投資ローンを借り入れるためには、金融機関が定める融資条件を満たしたうえで審査を受けて通過しなければならない。融資条件は、金融機関や不動産投資ローンの種類によって異なるが、年齢や勤続年数、税込み年収などが指定されるのが一般的だ。

不動産投資ローンの金利

不動産投資ローンの金利には、固定金利と変動金利の2種類がある。

固定金利は、ローンを完済するまで金利が一定であるのに対し、変動金利は経済情勢や金融政策などの影響によって返済途中で金利が変動する可能性がある。また変動金利を借り入れた当初から一定期間の金利を固定する「固定金利期間特約付変動金利」を取り扱う金融機関もある。

金利の値は、金融機関や不動産投資ローンを申し込んだ人の信用力などで決まる。より有利な条件で不動産投資ローンを借り入れたい場合は、複数の金融機関に相談して比較し、借入先を選ぶことが大切だ。2021年末現在のおおよその金利は0.5%〜2%台が多いようだ。

なお日本政策金融公庫の融資は、長期にわたる固定金利かつ低金利だ。また若年層や女性、55歳以上の高齢者などでも融資を受けやすい。

不動産投資ローンと住宅ローンの違い

不動産投資ローンと住宅ローンは、どちらも不動産を購入するときに借り入れをするローンだが詳細な点は異なる。

住宅ローンは、借り入れた人が自分で住むための物件を購入するときに借り入れできるローンだ。住まいは、人々の生活にとって欠かせないものであるため、多くの人が住宅を取得しやすいように住宅ローンの金利は低く設定されている。たとえば変動金利の場合、住宅ローンの金利は不動産投資ローンよりも、1%ほど低く設定されている。

一方で住宅ローンは、不動産投資をするためのアパートやマンションを購入するときには借り入れできない。もし住宅ローンを利用して、不正に投資用物件を取得した場合は、契約違反となり、一括返済を求められるだろう。不動産投資用の物件を購入する際は、不動産投資ローンを借り入れる必要がある。

住宅ローンの融資審査では、借り入れる人の年収や勤続年数、他の借入状況など、個人の属性が審査される。これは住宅ローンの返済原資が借り入れた人の所得であるためだ。

対して不動産投資ローンは、投資した物件から入れる家賃収入が返済の原資となる。そのため不動産投資ローンの審査では個人の属性に加えて、物件から安定した家賃収入が得られるかどうかも入念に審査される。

不動産投資ローンの種類

不動産投資ローンの種類

不動産投資ローンには「アパートローン」と「プロパーローン」がある。アパートローンとは、簡単にいえばパッケージ型の不動産投資ローンであり、借入時の金利や融資機関などがあらかじめ決められている。

プロパーローンは、オーダーメイド型の不動産投資ローンだ。借入時の金利や融資額、融資期間などの借入条件は、申し込んだ人の年収や職業などの属性、および物件の収益性などに応じて決まる。

アパートローンは、求められる頭金の割合がプロパーローンよりも低い傾向にある。また不動産投資の経験がなくても、借り入れる人の属性や購入予定の物件の収益性などが基準を満たしていれば融資してもらえる可能性がある。そのため初めて不動産投資をする人は、アパートローンを申し込むケースが多い。

一方で不動産投資の経験が豊富な人や所有する物件の数が多い人は、プロパーローンを申し込むケースが多い。「低金利で借り入れできる」「融資期間が長くなる」など、より有利な条件で借りられる可能性があるためだ。ただしプロパーローンは融資審査が完了するまで、2〜3カ月ほどかかることがある。

不動産投資ローンを組むメリット・デメリット

ここでは、不動産投資ローンを組むメリットやデメリットをそれぞれ解説する。

不動産投資ローンを組むメリット

不動産投資ローンを組んで、投資用の不動産を購入するメリットは以下のとおりだ。

  • レバレッジ効果が得られる
  • 手持ち資金を残せる
  • 団体信用生命保険に加入できる

レバレッジ効果とは、ローンのような他人の資本を利用して投資効率を高めることをいう。投資では、いくら利回りが高くても投資元本が少なければ高い収益は得られない。不動産投資ローンを利用して物件に投資することで、自己資金だけで物件を購入したときよりも多くの家賃収入を得ることができる。

また不動産投資ローンを借り入れて手元に現金を残しておくと、空室の発生による家賃収入の低下や経年劣化による修繕費用の発生に備えられる。

団体信用生命保険(団信)は、不動産投資ローンを組んだ人が万一のときに、保険金によってローンの残債が完済される保険だ。団信に加入することで、亡くなったり所定の高度障害状態に該当したりした場合に、返済義務がない投資用の不動産を家族に残せる。残された家族は、引き継いだ不動産から得られる家賃収入で生活費や教育費などを賄える。

不動産投資ローンを組むメリット、デメリットを把握しよう

不動産投資ローンを組むデメリット

不動産投資ローンを組んで投資物件を購入するデメリットは、以下のとおりである。

  • 返済義務を負う
  • 利息や手数料などを負担しなければならない
  • 住宅ローンを組みにくくなる恐れがある

不動産投資ローン借り入れた場合は、元本に利息を合わせて返済していかなければならない。不動産投資ローンの返済期間は、35年以上にわたることがあるため、最後まで返済できる計画を立てたうえで借り入れることが大切だ。

また不動産投資ローンを借り入れる場合、事務手数料や保証料などの諸費用を支払わなければならない。事務手数料や保証料を借入時に支払う場合、現金で支払うのが一般的であるため、頭金を支払う資金と合わせて計画的に資金を準備する必要がある。

不動産投資ローンを組むと、住宅ローンを組んでマイホームが購入しにくくなる恐れがある点にも注意が必要だ。住宅ローンや不動産投資ローンなどを合計した年間の返済額が、金融機関が定める割合を超えてしまうと、住宅ローン審査に通過できなくなるためだ。

不動産投資ローンを組む流れ

不動産投資ローンを組むときの大まかな流れは、以下のとおりだ。

  1. 事前審査(仮審査)
  2. 物件の売買契約を結び不動産投資ローンを申し込む
  3. 本審査
  4. 金融機関と金銭消費貸借契約を結ぶ
  5. 抵当権を設定する
  6. 融資の実行

不動産投資ローンは、物件の売買契約を締結したあとに申し込んで本審査を申し込む。しかし本審査に通過できないケースは少なくないため、不動産会社と物件の売買契約を結ぶ前に事前審査を受けておくのが一般的である。

不動産投資ローンを申し込む際は、登記簿謄本や地積測量図などの書類が必要となる。また借り入れる人が会社員であれば直近の源泉徴収票、自営業であれば3期分の決算書または確定申告書が必要だ。

本審査に通過し、不動産投資ローンの借入条件に納得したら、金融機関と「金銭消費貸借契約権抵当権設定契約」を結ぶ。

抵当権とは、不動産投資ローンを借り入れた人が、なんらかの事情で返済できなくなったとき、担保としている物件を差し押さえて競売にかけられる権利だ。不動産投資ローンを組んだ場合は、物件の所有権移転登記とあわせて抵当権設定登記をする必要がある。

必要な手続きが終わると、融資が実行されて金融機関から不動産会社へと融資額が支払われる。

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