通貨危機に直面するベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は21日、原油に裏付けられた仮想通貨ペトロが10月から国際商取引で使用されると発表した。ただペトロの実態について疑問視する声が相次いでいる。

国営のVTVテレビに出演したマドゥロ大統領は、次のように語った。

「ペトロは世界にとって、両替、購入、交換可能な通貨としての役割を果たすようになる」

しかしマドゥロ大統領は、ペトロがどの分野で使用されるのかについても、どの国が支払いを受け入れるのかについても、明らかにしなかった。

ロイター通信の調査によるとペトロは世界のどの主要仮想通貨取引所でも取引されていないばかりか、ベネズエラの原油による裏付けもまだ得られておらず、コインの裏付けに使用される原油の採掘地としてマドゥロ大統領が主張しているアタピリレ地域には、最近採掘を行った形跡は見られないという。

またロイター通信によると、ラファエル・ラミレス元石油大臣「ペトロは[…]政府の空想の中だけに存在する」と話したという。

さらに8月に専門家が報道機関ワイアードに語ったところによると、国家所有のペトロは国営石油会社PDVSAに支えられているが、PDVSAは450億ドルの負債を抱えており、取引が行われている形跡は一切見られないという。ペトロはマドゥロ大統領がベネズエラの法定通貨、ボリバル・ソベラノ(ソブリン・ボリバル)を蘇生し損ねた最近の失策を隠すための「煙幕」だと見る専門家もいるそうだ。

このように疑問の声が相次いでいるにも関わらず、マドゥロ大統領はペトロを経済改革と結びつけた主張を繰り返している。最近の声明によると、ペトロは8月20日に流通が開始されたボリバルと共に、ベネズエラの第2の政府通貨になったという。