ニューヨーク州司法長官事務所が仮想通貨規制に参加【専門家の寄稿】

 今年4月17日、仮想通貨市場で目を光らせている米国の一連の規制機関に、ニューヨーク州司法長官事務所(OAG)が加わった。プレスリリースの通り、OAGは仮想通貨取引プラットフォーム13カ所に情報請求(を送った。ニューヨークのユーザーをブロックしているとするクラーケンやビットフィネックスなど、(名目上)ニューヨークと関わりのないプラットフォームも含まれている。情報請求は「仮想通貨投資家および消費者を保護する広範な活動の一環」と特徴付けられ、OAGの「仮想通貨市場の完全性イニシアティブ」の立ち上げを知らせるものとなった。

 書簡を受け取った取引所は次の通り。(1) コインベース社(GDAX),(2) ジェミニ・トラスト社、(3) ビットフライヤーUSA社、(4) アイフィネックス社(ビットフィネックス)、(5) ビットスタンプUSA社、(6) ペイワード社(クラーケン)、(7) ビットトレックス社、(8) サークル・インターネット・ファイナンシャル社(ポロニエックス社)、(9) バイナンス社、(10) エリート・ウェイ・ディベロップメンツ社(Tidex.com)、(11) ゲート・テクノロジー社(Gate.io)、(12) イットビット・トラスト社、(13) フォビ・グローバル社(Huobi.Pro)。

 これらの会社には、ニューヨークで運営され、ビットライセンスの申請プロセスを無事完了した組織や、州内での立ち位置を開拓した組織、プラットフォームからニューヨークの消費者を締め出している組織が含まれている。

 具体的には、懸念されるいくつかの点に関し質問されている。取引所の所有者および管理体制、運営体制と料金構造、取引ポリシーや疑わしい取引に関するポリシー、内部統制やプライバシー・マネロン防止規定への準拠といった内容のほか、疑わしい取引や市場操作への対処、ボットの運用に関するポリシー、非公開取引情報の利用とアクセスに関する制限、顧客の資金を盗難や詐欺、その他のリスクから保護するために準備している対策について、各取引所の取り組みをしかるべく開示するように求めている。

 プレスリリースでは、「(ニューヨークの)消費者を保護し、(ニューヨークの)金融市場の公正と全体性を確保するのが司法長官の責務」であるため、OAGはニューヨーク州トップの法執行機関として、請求された情報に関心があると述べている。また、当該セクターが「詐欺師や市場操作者、窃盗犯を引き寄せている」ことを示すレポートを引用し、OAGには「消費者や投資家をそれらの有害な存在から保護し、ニューヨークの金融市場の公正と全体性を確保する責任がある」ため、当該セクター全体がOAGの対応範囲内となるという見解を示している。

 これに対し、クラーケンを除いたすべての取引所が、OAGに協力する意思を示している。クラーケンはソーシャルメディアへのいくつかの投稿を通じ、OAGのそのような活動への関与に消極的な姿勢を見せている。事実、同社のCEOは質問状の問題点を明確に列挙し、対処方針もこのページで提案している。クラーケンは質問状の真意についても慎重に検討し、これはスタンドプレーではないかと指摘している。

質問状の目的

 ニューヨーク州の仮想通貨空間におけるこれまでの関わり(ビットライセンスおよび、マイニング会社への打撃となった電気料金の発表という最近の動きも含まれる)を鑑み、質問状の目的や広範なイニシアティブの背後にある意図について多くの憶測が流れている。

 質問状の公の意図は、「消費者が仮想通貨や『暗号』通貨の取引に使用しているプラットフォームの方針や実態について、実情を探る質問」を行うことであり、「対応の分析やプラットフォーム同士の対応の比較を行い、プロセスの終了後に判明したことを公に発表する」という比較的温和な最終目的の下、「運営や内部統制、消費者資産を保護するための予防策に関する主な情報を要求」している。調査結果は規制機関や大衆の関心の対象となるかもしれないが、今回の質問状は、以下のような視点に基づくOAGの攻めの動きを意味している。

  1. 国内・国際レベルで運営している組織へのこのような趣旨の質問は、1つもしくは複数の連邦規制機関が実施することで適切性が向上する。特にCFTCやSECが、これらの取引所に関し、市場運営に対する連邦政府の直接の監視体制がないことを憂慮し、現状の州ごとの体制の適切性についても疑問を投げかけている。
  2. 要請を受けた取引所の半数以上がニューヨーク州と関わらないという選択をしたが、その多くはビットライセンスの規制構造に対する反応だった。それにより、これらの取引所の行動を規制するという面で、ニューヨーク州の既得権限は他の多くの州に劣るものとなった。他の州では、取引所は住人と(適用法の順守を条件として)制限を受けずに関わる能力を有することになる。
  3. (クラーケンが指摘しているように)ビットライセンスは銀行や金融機関に適した規制の枠組みであり、コンプライアンスや内部統制、サイバーセキュリティに関する要件が含まれているため、ビットライセンスを申請し、ライセンスまたは信頼憲章(trust charter)を交付された取引所への情報請求のいくつかの項目について、ニューヨーク州はすでに満足のいく回答を手にしているはずだ。さらにニューヨーク州金融サービス局(DFS)が最近、ビットライセンスを有する取引所のためのガイダンスを発表し、市場操作に目を光らせながら詐欺の発見や防止、対応のための方策を実施するように念押ししている。

 OAGは、DFSの既存の管轄に立ち入っている可能性をいくらか認識しながら、ニューヨーク州と実際の結び付きがある取引所に関する限り、当該セクターでの自らの役割はDFSのそれとは「独立しながら補完するもの」だとしている。DFSの役割とは、「仮想通貨取引プラットフォームや、仮想通貨事業に従事する他の企業が操業許可を取得し、一定の規制要件に従うことを求める、国内初のライセンス供与手続きを確立した」ことだとOAGは説明している。

管轄について

 情報請求自体の文言は、プレスリリースの内容と比べて強権的なところがなく、宥和的であるという点は注目すべきだが、ニューヨーク州の住人をブロックしようという取引所の努力にも関わらず実際の参加を許しているという限りにおいて、OAGは態度を変えることができる。請求では、すべての取引所にニューヨークとの具体的な結び付きがあると主張する代わりに、「大手の仮想通貨取引プラットフォーム」という立場により対象者を選んでいると説明しており、質問状は「OAGの『仮想通貨市場の完全性イニシアティブ』への(取引所の)参加の要請」であると表現している。このイニシアティブは、仮想通貨や関連する投資商品を取引するニューヨークの住人の利益を守ることを意図している。

 OAGは脚注において、サンプルとした他の取引所に対する管轄を断定するには根拠が弱いという可能性を認めている。脚注では、OAGは「特定の取引プラットフォームにニューヨーク州でのアクセスを禁じる公式規定があり、州内での仮想通貨事業活動に従事する資格がないという可能性を認識している。とりわけ、禁止区域からの取引を制限する方策について説明するようにプラットフォームに要請している」と述べている。この文言は、ニューヨークとの結び付きがないと主張しているプラットフォームにとって、とりわけ危険な部分だ。多くが(最低限)ニューヨークを基盤とするIPアドレスをブロックすることでユーザー制限を実施しているが、これには何の効果もないことが知られている。ジオブロッキング回避に関するこの記事が参考になるだろう。OAGはこの点を十分に承知しており、クラーケンが協力拒否を表明したのを受け、ニューヨーク州で操業する(すなわち州内の消費者と関わりのある)外国や州外の企業に対して執行管轄を有すると述べている。

市場空間の次なる動き

 最終的に、質問状がスタンドプレーではなく、ビットライセンスの規制枠組みが、対象となる取引所のコンプライアンス基準や内部統制、専門性の向上につながっていることを示すデータがない限り、OAGの「仮想通貨市場の完全性イニシアティブ」の目標や、その向かう先は謎のままだ。そしてその謎は、シュナイダーマン司法長官が最近退任したことでさらに深まっている。しかしながら、シュナイダーマン氏の後任者が積極的に追求する限りにおいて、ニューヨーク州のマーチン法の下で仮想通貨市場を規制するという州で最初の動きになると思われ、同様の違反についてOAGに広範な調査権限が与えられるだろう。

 「仮想通貨市場の完全性イニシアティブ」の長期の方向性にも関わらず、仮想通貨空間に最先端の規制監督体制を構築しようという州の試みにおいて、今回の動きは危ういものに思える。また、DFSや連邦規制機関が監督する州の既存の規制ともうまく連携していないようだ。仮想通貨空間における州の既存のつぎはぎの法体制を再考し、国内・国際レベルで、現行の規制構造を一貫した連携体制に置き換えるべきという声が高まっている最中での動きでもある。ニューヨーク州は、仮想通貨市場の監督機関や規制組織としての役割を積極的に模索しながら、連邦規制機関の下で動きを加速させ、当該空間で州に先んずるべき連邦の枠組みを固めようとしているもかもしれない。

サラ・H・ブレナン氏は企業や証券を専門とする弁護士。リッペ・マティアス・ウェクスラー・フリードマンLLPでブロックチェーン技術や仮想通貨、デジタル資産の実務チームを率いる。