住民税(個人住民税)は、個人が納める税金のひとつだ。一定の収入を得ている人は、原則として住民税を納める必要がある。

会社員は給与から源泉徴収されているため、住民税の仕組みはよくわからないのではないだろうか。所得税の確定申告をしている自営業者も、住民税について考える機会は少ないかもしれない。

住民税は所得税との関わりが深いので、所得税との違いを理解しておくことも大切だ。今回は、住民税の税率や計算方法、支払い方法などについて詳しく解説する。

住民税の基本について解説する

住民税とは

住民税とは、都道府県や市区町村が課税する地方税だ。公共施設や学校教育、上下水道、ごみ処理といった行政サービスに必要な経費を、地域住民の能力(担税力)に応じて分担してもらうことを目的としている。

住民税は、個人が負担する「個人住民税」と、法人が負担する「法人住民税」の2種類がある。この記事では、個人住民税について解説していく。


住民税の種類と税率

住民税の種類

住民税には以下の5種類がある。

住民税の種類

内容

所得割

前年の所得に応じて課税

均等割

定額で課税

利子割

預貯金の利子等に課税

配当割

上場株式等の配当等に課税

株式等譲渡所得割

特定口座(源泉徴収あり)内の株式等の譲渡益に課税

所得割と均等割は、住所がある市区町村が都道府県民税と市区町村民税を併せて徴収する。利子割と配当割、株式等譲渡所得割については、該当する取引があった際に金融機関(銀行、証券会社)から源泉徴収される。

住民税の税率

住民税の所得割・均等割の税率は以下の通りだ。住所のある地域によっては、内訳や税率が多少異なる場合がある。

 


所得割(標準税率)

均等割(標準税率)

都道府県民税

4%

1000円(1500円)

市区町村民税

6%

3000円(3500円)

合計

10%

4000円(5000円)

所得割の税率は都道府県民税が4%、市区町村民税が6%の合計10%だ。

均等割は、所得金額に関係なく定額の負担を求められるのが特徴だ。均等割の税額は年4000円だが、防災施策にかかる財源確保を目的に、2014~2023年は年5000円に(都道府県民税1500円、市区町村民税3500円)引き上げられている。

利子割・配当割・株式等譲渡所得割の住民税率は5%だ。利子や配当、株式の譲渡益の額に5%を掛けた金額が源泉徴収される。その際は、住民税のほかに所得税及び復興特別所得税(国税)15.315%も課税される。


住民税が非課税になるケース

給与などの収入がある場合は、基本的に住民税を負担しなくてはならない。ただし、状況によっては非課税になるケースもある。

所得割と均等割のどちらも非課税になるケースは以下の通りだ。

  • 生活保護法による生活扶助を受けているとき
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は年収204万4000円未満)のとき
  • 前年中の合計所得金額が市区町村の条例で定める金額以下のとき

前年中の総所得金額等が一定の金額以下の場合は、所得割のみ非課税となる。

住民税の計算方法

住民税(所得割)の計算の流れは以下の通りだ。

  1. 総所得金額を計算する
  2. 課税所得金額を計算する
  3. 納付税額を計算する

それぞれ詳しく確認していこう。


総所得金額の計算

総所得金額は以下の算式で求められる。

総所得金額=合計所得金額-損失の繰越控除

合計所得金額は、前年(1月1日~12月31日)の収入から必要経費等を差し引いたものだ。必要経費等には、給与所得控除や公的年金等控除が含まれる。自営業者の場合は、事業を営む上で必要な支出が必要経費となる。

純損失や雑損失等の繰越控除がある場合は、合計所得金額から差し引くことが可能だ。


課税所得金額の計算

課税所得金額は以下の算式で求められる。

課税所得金額=総所得金額-所得控除

課税所得金額は、総所得金額から各種所得控除を差し引いて求める。所得控除とは、住民税額を計算する際に所得から差し引けるものだ。扶養家族や病気など、個人的な事情を考慮して税負担を求めるために設けられている。

住民税で利用できる所得控除は以下の14種類だ。

所得控除の種類

適用要件

雑損控除

災害や盗難、横領などの被害にあったとき

医療費控除

納税者または納税者と生計を一にする親族が一定額を超える医療費を支払ったとき

社会保険料控除

健康保険、国民年金などの社会保険料を支払ったとき

小規模企業共済等掛金控除

確定拠出年金、小規模企業共済などの掛金を支払ったとき

生命保険料控除

生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払ったとき

地震保険料控除

地震保険料を支払ったとき

障害者控除

納税者または納税者と生計を一にする配偶者・扶養親族が障害者に当てはまるとき

寡婦控除

納税者が寡婦(かふ)であるとき

ひとり親控除

納税者がひとり親であるとき

勤労学生控除

納税者が勤労学生であるとき

配偶者控除

納税者に住民税の控除対象配偶者がいるとき

配偶者特別控除

配偶者控除が受けられない配偶者が所得金額などの一定の要件を満たすとき

扶養控除

納税者に控除対象扶養親族がいるとき

基礎控除

住民税額を計算するときに所得から差し引くことができる控除


所得控除を利用すると住民税の負担が軽減されるので、要件を満たす場合は積極的に利用しよう。

納付税額の計算

所得割の納付税額は以下の算式で求められる。

納付税額=課税所得金額×所得割の住民税率(10%)-税額控除

課税所得金額が300万円の場合、所得割の納付税額は30万円(300万円×10%)となる。外国税額控除や寄附金税額控除などの税額控除がある場合は、計算した税額から差し引くことが可能だ。


住民税の支払い方法

住民税の支払い方

住民税(所得割・均等割)は、会社員などの給与所得者については毎月の給与から特別徴収される。特別徴収とは、事業主が毎月の給与から住民税を天引きして、従業員の代わりに市区町村に納付する制度だ。

自営業者については、所得税の確定申告の内容に基づいて、市区町村が住民税額を計算する仕組みになっている。納税者は市区町村から届く納税通知書を使って、金融機関の窓口や口座振替などで支払う(普通徴収)。

基本的には年4回に分けて納めるが、1回目に年税額を一括で納めることも可能だ。


会社員で副収入がある場合は注意が必要

会社員で給与所得以外の所得が20万円を超える場合は、所得税の確定申告をしなくてはならない。副収入の所得には、所得税だけでなく住民税もかかる。

勤務先に副収入を知られたくない場合は、住民税の手続きに注意が必要だ。給与水準が変わっていないのに住民税額が増えていると、副業を疑われる可能性がある。

副業を会社に知られないようにするには、副収入にかかる住民税を自分で納付できるようにすることが大切だ。

所得税の確定申告の際に、住民税に関する事項で「自分で納付(普通徴収)」を選択しよう。これで副収入にかかる住民税は、市区町村から届く納税通知書で納付できる。


所得税と住民税の違い

所得税と住民税の違い

所得税と住民税は、どちらも個人の1年間(1月1日~12月31日)の所得に対して課税される税金だ。しかし、以下の3点に違いがある。

  • 納付先
  • 税率
  • 納付時期

所得税は国に納める「国税」であるのに対し、住民税は都道府県や市区町村に納める「地方税」だ。納付先が異なるため、税額はそれぞれ計算する。

税率は、所得税は課税所得金額に応じて5~45%の7段階に区分されている。所得が大きい人ほど税額が増える仕組みだ(累進課税制度)。一方、住民税率(所得割)は所得金額に関係なく10%で、所得税にはない均等割もある。

また、所得税と住民税は納付時期にも違いがある

所得税は、会社員はその年の12月に勤務先で年末調整を受けて、1年間の所得税額を確定させる。自営業者は翌年2月16日~3月15日に確定申告を行い、税額を納付する必要がある。

住民税は、会社員は毎年5月頃に事業主に対して住民税額決定通知書が送付され、6月から翌年5月までの給与から天引きされる。自営業者は所得税の確定申告後、5~6月に届く納税通知書で4回に分けて納付する。


身近な税金「住民税」への理解を深めよう

住民税は給与から源泉徴収されるため、意識する機会は少ないかもしれない。しかし、所得控除を活用すれば税負担の軽減が可能だ。会社員は住民税で副業が知られてしまうこともある。この機会に住民税に対する理解を深めておこう。

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