私たちは、日常生活の中で多くの税金を納めている。しかし、税金にはどんな種類があり、どのように納税しているかはよくわからないのではないだろうか。
税金は「誰に」「何に」「どのように」課税されるかに注目すると、種類や内容が理解しやすくなる。節税にもつながるため、将来に向けて資産形成に取り組むなら税金の知識は不可欠だ。
今回は、税金の種類や仕組みについて詳しく解説する。
税金を理解するポイント① 税金は誰に支払うのか
まずは「誰に支払うのか」という視点で税金を見ていこう。
税金は、課税主体によって「国税」と「地方税」の2つに分類できる。国税は国が、地方税は地方自治体が課税・徴収する税金だ。国税と地方税では税金の種類(税目)が異なる。
国税の種類
国税の主な税目とその内容は以下の通りだ。
税目(国税) |
内容 |
所得税 |
個人が1年間の所得に応じて負担する税金 |
法人税 |
法人が所得に応じて負担する税金 |
消費税 |
商品の販売、サービスの提供などに対してかかる税金 |
相続税 |
死亡した人から財産を相続したときにかかる税金 |
贈与税 |
財産をもらったときにかかる税金 |
印紙税 |
各種契約書、領収書などの文書を作成したときにかかる税金 |
酒税 |
ビールや日本酒、ウイスキーなどのお酒にかかる税金 |
関税 |
輸入品を国内に持ち込んだときにかかる税金 |
上記のうち、個人が身近に感じるのは所得税と消費税ではないだろうか。
所得税は個人の所得にかかる税金で、会社から給与を得ている人や個人で事業をして収入を得ている人が負担している。会社員はあまり実感がないかもしれないが、給与天引きで会社を通じて納めている。個人事業主は、確定申告をして所得税を納める必要がある。
消費税はお店で商品を買ったり、サービスを受けたりした際にかかる税金だ。2019年10月に消費税率は従来の8%から10%に上げられた。また、低所得者への配慮から、飲食料品(お酒・外食を除く)と新聞(定期購読のもの)については8%の軽減税率が導入された。
消費税は1つの税金のように扱われているが、実際は「消費税(国税)」と「地方消費税(地方税)」で構成されている。税率の内訳は以下の通りだ。
消費税(国税) | 地方消費税(地方税) |
|
標準税率(10%) |
7.8% | 2.2% |
軽減税率(8%) |
6.24% | 1.76% |
地方税の種類
地方税は、都道府県が課税主体の「都道府県税」と市区町村が課税主体の「市区町村税」の2つに分けられる。地方税の主な税目とその内容は以下の通りだ。
税目(地方税) |
内容 |
住民税 |
行政サービスに必要な経費を住民(個人、法人)に分担してもらうもの |
事業税 |
事業を営む個人、法人が負担する税金 |
固定資産税 |
土地、家屋及び償却資産の所有者に対して課税される税金 |
自動車税 |
登録車の所有者に対して課税される税金 |
不動産取得税 |
土地や家屋の購入、贈与、家屋の新築などで不動産を取得したときにかかる税金 |
事業所税 |
一定規模以上の事業を行っている事業主に対して課税される税金 |
地方消費税 |
消費税の地方税部分 |
上記のうち、住民税、固定資産税、自動車税あたりは身近に感じるのではないだろうか。
住民税は「法人住民税(都道府県民税)」と「個人住民税(市区町村民税)」の2種類がある。個人住民税は市区町村が課税主体で、所得税と同じく、会社員は給与天引きで会社を通じて納めている。個人事業主は、市区町村から届く納税通知書をもとに納税する。
固定資産税と自動車税は、マイホームや自動車を所有している人は毎年納めているだろう。固定資産税は1月1日、自動車税は4月1日時点の所有者が負担する税金だ。いずれも地方自治体から届く納税通知書をもとに納税する。
これらの他に、事業を営む個人・法人に課税される事業税、不動産を取得したときにかかる不動産取得税なども地方税に該当する。
税金を理解するポイント② 何に対して税金がかかるのか
「何に対して税金がかかるのか」という視点で見ると、税金は以下の3つに分けられる。
- 所得課税
- 資産課税
- 消費課税
ここでは、それぞれの概要と対象税目を確認していこう。
所得課税の概要と税目
所得課税では、個人や法人の所得に対して課税する。所得とは、収入から収入を得るためにかかった経費を差し引いたものだ。所得課税の主な税目は以下の通りだ。
- 所得税
- 法人税
- 住民税
- 事業税
所得課税はその性質上、所得が多いほど税負担が増える傾向にある。
資産課税の概要と税目
資産課税では、個人や法人が取得・所有する資産に対して課税する。課税対象となる資産には、土地や家屋などの不動産、相続財産(預貯金、死亡保険金、不動産など)、償却資産(土地・家屋以外の事業用資産)などがある。
資産課税の主な税目は以下の通りだ。
- 相続税
- 贈与税
- 印紙税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 事業所税
資産課税はその性質上、保有資産が多いほど税負担が増える傾向にある。
消費課税の概要と税目
消費課税では、個人や法人の商品購入、サービス利用などの消費に対して課税する。消費課税の主な税目は以下の通りだ。
- 消費税、地方消費税
- 酒税
- 関税
- 自動車税
- たばこ税、地方たばこ税
- 軽油取引税
- ゴルフ場利用税
消費課税はその性質上、課税対象となる商品・サービスを利用する幅広い個人・法人が税金を負担している。
税金を理解するポイント③ どのように課税されるのか
税金は、税目によって課税方法が異なる。ここでは、「どのように課税されるのか」という視点から税金の種類や仕組みを確認していこう。
直接税と間接税
税金は、納め方の違いによって「直接税」と「間接税」の2つに分けられる。
直接税とは、税金を納める義務のある人(納税者)と税金を負担する人(担税者)
が同じ税金のことだ。間接税とは、納税者と担税者が異なる税金を意味する。
直接税と間接税の主な税目は以下の通りだ。
直接税 |
所得税、法人税、相続税、贈与税、住民税、事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税 |
間接税 |
消費税、酒税、関税、印紙税、地方消費税、ゴルフ場利用税、軽油取引税 |
たとえば、所得税は個人の所得に対して課税される。所得を得た人が納税者であり、同じ人が税金を負担するため直接税となる。
消費税は、消費一般に幅広く課税される。商品やサービスを購入する消費者が税金を負担するが、納税は事業者が行うため、間接税に該当する。事業者は消費者から受け取った消費税と、商品などを仕入れたときに支払った消費税の差額を納税している。
納税方法 申告納税制度と賦課課税制度
納付すべき税額を確定する方式には、「申告納税制度」と「賦課課税制度」の2つがある。
申告納税制度は、納税者が自分で所得金額や納税額を計算し、それに基づいて申告・納付を行う制度だ。所得税や法人税、相続税などは申告納税制度が採用されている。自分で税金を計算するので、必要経費や所得控除などを最大限利用することで節税の余地がある。
ただし、正しく申告をしないと修正申告が必要になる。また、期限までに申告しないと、通常の税金とは別に無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあるので注意が必要だ。
賦課課税制度は、課税主体によって納税額が決定される制度だ。個人の住民税・事業税、固定資産税、自動車税などに賦課課税制度が採用されている。
自分で税金を計算する必要がなく、地方自治体などの課税主体から届く納税通知書をもとに納税する。そのため、手間はかからないが節税の余地は少ないだろう。
公平な税負担 垂直的公平と水平的公平
税金は国民が公平に負担すべきものだが、公平に対する考え方は税目によって異なる。具体的には、「垂直的公平」と「水平的公平」の2つの考え方がある。
垂直的公平とは、所得の多い人にはより大きな負担を求めることが公平であるという考え方だ。
たとえば、所得税には所得金額によって税率が変わる累進税率が採用されており、税率は5~45%の7段階に区分されている。低所得者の負担は軽減されるが、所得が増えるほど税額も増えるため、勤労や事業への意欲を損ねることもある。
水平的公平とは、所得に関係なく同じ税率の負担を求めることが公平であるという考え方だ。
たとえば、消費税率は10%(軽減税率8%)と決まっており、誰が商品・サービスを購入しても税率は変わらない。水平的公平は不平等感が起きにくい一方で、低所得者ほど税負担が重くなる傾向にある。
税金を理解することは節税にもつながる
税金にはさまざまな種類があり、課税対象や税金の納付方法などは異なる。普段はあまり意識しないかもしれないが、私たちは勤務先などを通じて多くの税金を納めている。工夫次第で節税が可能な税目もあるので、税金の種類や仕組みを理解して資産形成に生かそう。
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