マイホームを購入する人の多くが、住宅ローンを組む。住宅ローンの返済期間は、20〜30年ほどの長期にわたるケースが珍しくない。そのため返済途中で世帯収入が減ったり世帯の支出が増えたりして、返済が苦しくなることがある。

住宅ローンの返済負担は「借り換え」や「繰り上げ返済」などの方法で軽減できる可能性がある。本記事では、住宅ローンの返済負担を軽減する方法の種類や、利用時の注意点についてわかりやすく解説する。

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住宅ローンの返済負担を軽減する方法4点

住宅ローンの返済負担を軽減する方法は、主に以下の4点だ。

  • 借り換え
  • 繰り上げ返済
  • リースバック
  • リスケジュール

住宅ローンの借り換え

借り換えとは、住宅ローンを違う金融機関で借り換えることだ。借り入れたときよりも、金利が低い住宅ローンに借り換えをすることで、返済負担を下げられる可能性がある。

一般的に以下のケースに当てはまる場合、借り換えが有効であるといわれている。

  • 借り換えによって金利が年1%以上下がる
  • 住宅ローン残高が1000万円以上
  • 返済期間が残り10年以上

ただしこれらの条件は、あくまで目安にすぎない。たとえば借り換えによって住宅ローンの金利が大きく下がれば、住宅ローンの残高が1000万円以下であったり、返済期間が残り10年以下であったりしても、メリットを得られる可能性がある。

また住宅ローンを組んだ当初と考え方が変わっている場合も、借り換えを検討すると良いだろう。たとえば借入当初は「返済の途中で金利が上がったら不安だ」と考えて、全期間固定金利を選んだが、返済を進めていくうちに「金利は当面上がりそうにないな」という考えに変わったのであれば、変動金利に借り換えるのも方法だ。

なお借り換えをするときは、事務手数料や登記費用、登記の代行を依頼する司法書士への報酬などの諸費用を支払う必要がある。借り換えをする際は、返済シミュレーションを確認し、自分にとってメリットがあるのかを考えることが大切だ。

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住宅ローン

住宅ローンの繰り上げ返済

繰り上げ返済とは、借入当初に計画した返済以外で、返済元本の一部またはすべてを返済することだ。繰り上げ返済をして元本を減らすことで、利息負担を減らしたり返済期間を短縮したりできる。

繰り上げ返済には、毎月の返済額を軽減する「返済額軽減型」と、返済期間を短縮する「返済期間短縮型」の2種類がある。

返済額軽減型

返済額軽減型の図解

返済期間短縮型

返済期間短縮型の図解

たとえば借入額3000万円、返済期間35年、金利0.6%の住宅ローンを借り入れていたとしよう。毎月の返済額は7万9208円だが、返済開始から5年が経過したあとに300万円を繰り上げ返済する場合、返済額軽減型を選ぶと毎月の返済額は7万77円となる。

一方で期間短縮型選んだ場合、毎月の返済額はそのままで、残りの返済期間が30年から26年4カ月へと短縮される。繰り上げ返済によって減少する利息額は、返済額軽減型が約27万8000円であるのに対し、返済期間短縮型は約55万円だ。

このように返済期間短縮型を選んだほうが、支払う利息の総額は少なくなる。返済総額を減らしたい人は、返済期間短縮型を選ぶと良いだろう。一方で、毎月の返済負担が重いと感じるのであれば、返済額軽減型を選ぶと良い。繰り上げ返済の種類は、目的を考えたうえで選ぶことが大切だ。

リースバック

リースバックとは、住宅を売却して現金化し、その後も家賃を支払って住み続けるサービスだ。マイホームを売却したり新居に引っ越ししたりしないため、不動産会社に支払う仲介手数料や引越し費用などはかからない。

持ち家に住んでいると、住宅ローンを毎月返済しながら、固定資産税を毎年支払わなければならない。エリアによっては、都市計画税の負担も発生する。リースバックをすると、住宅ローンの返済義務がなくなるだけでなく、固定資産税や都市計画税などの税金を支払う必要もなくなるため、住居費用を削減できる可能性がある。

ただしリースバックをしたあとに支払う家賃(リース料)は、相場よりも高い傾向にある。またリースバックでの売却価格は、通常の不動産売買よりも割安となることが多いことにも留意したうえで、利用を検討する必要がある。

リースバックは住宅ローン負担軽減策の選択肢の1つ

リスケジュール

リスケジュールとは、金融機関と相談して住宅ローンの返済計画を見直すことだ。金融機関にリスケジュールを相談すると、毎月の返済額の減額や、返済期間の延長などに応じてくれることがある。金融機関との交渉次第では、1年間ほど毎月の返済を利息のみにしてくれる場合もある。

ただしリスケジュールをしてもらうためには、金融機関の承諾を得なければならない。交渉時に金融機関の担当者から、家計の状況についてヒアリングされたり収支改善を提案されたりするケースは珍しくない。

またギャンブルのような自業自得ともいえる行為が原因で住宅ローンの返済が難しくなった場合、金融機関はリスケジュールを承認してくれないだろう。

住宅ローンの返済負担を軽減するときの注意点

ここまで紹介した返済負担の軽減方法を実施しても、メリットが得られるとは限らない。住宅ローンの返済負担を軽減する方法を考えるときは、以下の点に注意する必要がある。

  • 住宅ローン控除も考慮して軽減方法を検討する
  • 総合的に考えて金銭的なメリットがあるか確認する
  • 早めに相談する

住宅ローン控除も考慮して軽減方法を検討する

住宅ローン控除とは、年末時点の借入残高の1%分を所得税や住民税から差し引いてくれる制度だ。たとえば年末時点の借入残高が2800万円であった場合、その1%である28万円が所得税から控除され、余りが生じる場合は一定額を限度に住民税から控除してもらえる。控除期間は、基本的に最大10年間だ。※特例措置により控除期間が13年となる場合もある

住宅ローン控除は、マイホームの購入にともなう大きな金銭的負担を、税金の還付という形で軽減するために実施されている制度だ。住宅ローンの返済負担の軽減方法を検討するときは、住宅ローン控除のメリットが薄れてしまわないように注意する必要がある。

住宅ローン控除は、返済期間が10年以上残っていなければ適用できない。そのため返済期間短縮型を選択して返済期間が10年を切ってしまうと、そもそも住宅ローン控除が適用されなくなってしまう。

繰上げ返済は住宅ローン控除の年数も考慮すべき

総合的に考えて金銭的なメリットがあるか確認する

住宅ローンの借り換えでは、事務手数料や登記費用などの諸費用が数十万円ほどかかることがある。また金融機関によっては、繰り上げ返済をする際に手数料がかかることがある。借り換えや繰り上げ返済をするときは、金利差や返済負担の差だけでなく、諸費用も考慮して総合的にメリットがあるかどうかを確認することが大切だ。

リースバックやリスケジュールについては、軽減できる負担がある一方で、増えてしまう負担があることも理解しよう。

たとえばリースバックをすると、住居費の負担は減るかも知れないが、老後も賃貸物件に住み続ける場合は家賃を支払っていかなけばならない。リスケジュールをしてもらい、毎月の返済額を減らしてもらったり返済期間を延ばしてもらったりすると、元本の減りが鈍るため返済総額は増えてしまう。

早めに相談する

住宅ローンの返済が苦しいからといって、返済を滞納してから対策しようとしても手遅れになってしまう可能性がある。とくに保証会社が返済を肩代わりする「代位弁済」が実行されると、対策は非常に困難となる。

住宅ローンは、購入する物件を担保に組むローンだ。住宅ローンの返済が長期間にわたって滞り金融機関の催促にも応じないと、保証会社による代位弁済が行われる。

代位弁済が行われたからといって返済が免除されたわけではなく、保証会社は住宅ローンを借り入れた人に肩代わりした額の一括返済を要求する。借り入れた人が応じない場合は、担保になっている物件が差し押さえられて競売にかけられる仕組みだ。

保証会社による代位弁済が行われたあとにできることといえば、住宅ローンの残った物件を不動産会社に依頼して売却してもらう「任意売却」くらいであり、マイホームを手放すのは避けられないだろう。住宅ローンの返済が苦しいのであれば、手遅れになる前に対策を考えて早めに手を打つことが大切だ。

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