著者 : ピーター・シュローダー（サークル社 グローバルマーケティングディレクター）
APIの発明がソフトウェアの発展を可能にし、システム間の自動通信を実現したように、ステーブルコインは人工知能（AI）にとっての「金融API」となりつつある。APIがソフトウェア間のデータ交換とタスク実行をシームレスに行うのと同様に、ステーブルコインはAIエージェントが価値を交換し、完全に自律的な環境で取引を実行するための流動性、プログラム可能性、効率性を提供する。
USDCのようなステーブルコインは、AIシステムのワークフローに即時かつ安全で、そしてプログラム可能な決済手段を組み込む。個人や企業のために動作する自律型エージェントは、最適なパフォーマンスを発揮するために、迅速かつ効率的な金融システムを必要としている。AIとステーブルコインの融合により、「自動運転経済」とも呼べる新たな基盤が構築され、価値の移動が現在のデータ交換と同じくらいスムーズになる。
Source: The API Economy
ステーブルコインは、高速でデータ主導のAI環境において、金融の安定性を提供する。AIエージェントの運用に統合され、安全でリアルタイムの流動性を確保し、精度とスピードが求められるタスクを支える。
AIが意思決定、取引実行、金融プロセスの自動化にますます関与する中で、ステーブルコインはその主要な通貨としての地位を確立しつつある。ブロックチェーンのプログラム可能性とAIの知能が融合することで、自動化が効率性を大規模に向上させる経済が誕生している。
エージェントが選ぶ通貨、それがステーブルコイン
AIは感情や偏見を持たず、最も効率的なツールを選択する。実用的かつ正確なAIエージェントは、低コスト、プログラムによるアクセス性、ほぼ即時の決済という特性を持つステーブルコインを好む。自律的システムが信頼性と効率性を求める世界において、ステーブルコインは金融基盤となりつつある。
AIエージェントとステーブルコインの融合は既に始まっているが、以下の3つの段階を経て進行すると考えられる。
AIとステーブルコインの3段階の採用サイクル
人間とエージェントの取引
人間による購入を簡素化するツール（Goat SDKなど）はすでに登場している。この段階では、AIツールがユーザーのオンラインショッピング、スケジュール管理、意思決定を補助する。現在のAIシステムはワークフローの自動化を実現しているが、それでも最終的な決定権は人間にある。しかし、ステーブルコインの導入により、AIと人間の間の取引はよりスムーズかつ安全なものになりつつある。最近では、AIエージェントがピザ、アーケードゲーム機、友人へのギフトを購入するケースも確認されている。エージェントと人間の取引
近い将来、AIエージェントは自律的にタスクを最適化するようになる。例えば、スマートホームシステムが最適な電気料金で電力を購入したり、AIアシスタントが企業の取引や支払いを自動で実行したりするようになる。このフェーズでは、AIが人間の指示なしに決済を行うようになり、ステーブルコインが即時決済の手段として活用されるだろう。エージェント同士の取引
将来的には、AIエージェントが直接交渉し、取引し、価値を交換する世界が訪れる。最近では、コインベースがAIエージェント同士のUSDC取引を実現し、この新たな市場の可能性を示している。サプライチェーンの自動化や分散型金融システムの発展とともに、AIエージェントが独自に価値を創出し、取引する「機械同士の経済」が本格化する。
このような進化は大変な事態に聞こえるかもしれないが、企業の運営効率を向上させ、コスト削減を実現すると同時に、消費者にはより低コストで革新的なサービスへのアクセスをもたらすだろう。ステーブルコインは、この新しい経済の基軸通貨となり、インターネット上で価値を正確かつ信頼性をもって移動させる手段となる。
トラストレスなパブリックブロックチェーンの力
AIとステーブルコインの融合において、最も重要な要素の1つが、ブロックチェーン技術のトラストレスな性質だ。パブリックブロックチェーンは、AIエージェントが完全に透明かつ検証可能な環境で運用されることを可能にする。
すべての取引、契約、データ交換が改ざん不可能な台帳に記録されるため、中央管理機関を必要とせずに、AIエージェントが独立してデータや取引を検証できる。この特性により、AIはより効率的かつ自律的な意思決定を行える。
サークルのジェレミー・アレールCEOは、こうしたトラストレスなインフラが持つ重要性を強調し、「USDCのようなステーブルコインが、オープンブロックチェーン上で即時かつ低コストの取引を可能にし、グローバル金融を変革している」と述べている。これにより、AIエージェントはリアルタイムのスマートコントラクトとプログラム可能なシステムを活用し、特定の条件が満たされた際に自動で取引を実行することができる。
このAIとブロックチェーンの融合は、財務管理の自動化から、未開拓市場向けのマイクロ保険といった革新的なユースケースまで、新たな可能性を生み出している。
未来への展望
AIとステーブルコインの融合は、テクノロジーの革新スピードを示す象徴的な事例である。2024年だけでも、グローバルな分散型金融（DeFi）市場は1.3兆ドル以上の取引を処理し、その流動性の大部分をステーブルコインが占めている。
一方、AIの普及は過去のどの技術よりも速く進んでおり、AI市場は2030年までに年平均38%の成長率が見込まれている。
ステーブルコインとAIの相乗効果により、価値の創出、交換、最適化のプロセスが根本的に変革されている。これらのシステムは非効率を排除し、コストを削減し、これまでアクセスが困難だった機会を開放する。プログラム可能な通貨の安定性と自律システムの知能が融合することで、新たな経済的自律性の時代が始まろうとしている。
今後、AIエージェントが複雑な取引を交渉し、エネルギーグリッドを最適化するなど、ステーブルコインを基盤とした新たな経済圏が形成されるだろう。こうした技術の普及により、グローバル経済はより効率的で包摂的なものとなり、新たな市場と機会が生まれることが期待される。
本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。
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