米MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの伊藤穣一所長が、辞任の意向を示した。MITが7日に発表した。伊藤氏は仮想通貨やブロックチェーン関連でも積極的に発言していた。

辞任の理由は、少女の性的虐待などの罪で起訴されたニューヨークの投資家、エプステイン氏から受け取っていた資金が関係している。同メディアラボでは抗議のためにすでに2人の教授が辞任を表明していた。

伊藤氏は、所長だけでなく教授職からも退くという。また、ニューヨーク・タイムズによると、マッカーサー基金、ナイト財団、ニューヨークタイムズの取締役のほか、ハーバード大学の客員教授もやめる。

同紙は、伊藤氏はエプステイン氏から資金援助を受けた事実を隠蔽していたと伝えている。

エプステイン氏は、未成年の性的搾取などの罪で起訴されていたが、先月ニューヨークの拘置所で自殺した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、伊藤氏を「ネットワーキングの達人だった」と紹介。学生と裕福な寄付者をつなげることで卓越しており、メディアラボのために少なくとも5000万ドル(約53億円)を調達したと伝えている。

伊藤氏は、「教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン」の著者として知られている。昨年3月にはICO(イニシャル・コイン・オファリング)をはじめとする仮想通貨の投機的な側面に対して警鐘を鳴らしていた

また、昨年11月のDG Lab Hausによると、伊藤氏はプライベート・ブロックチェーンは「なんちゃってブロックチェーン」だと指摘。ブロックチェーンという言葉がバズワードとして一人歩きし、「世間で喧伝されている『ブロックチェーン』と、技術的に正しく定義された『ブロックチェーン)の間に乖離が起こっているのが現状」と危機感を示していた。