国際通貨基金(IMF)は、マーシャル諸島共和国(RMI)のデジタルソブリン通貨導入が、島の金融の安定にリスクをもたらすことになると指摘している。

IMFによる4条協議がマーシャル諸島を対象に行われた。これはIMFのエコノミストが、対象国の経済・金融政策の調査・評価を行うものだ。マーシャル諸島でデジタルソブリン通貨(SOV)を導入すれば、「マクロ経済的な安定性、金融の安定性、そして金融の完全性でのリスクを引き下げるだろう」と、IMFのエコノミスト、ヨン・サラ・チョウ氏が指摘している。

チョウ氏によれば、マーシャル諸島が新型コロナウィルス(COVID-19)を封じ込めるために講じた措置は「迅速かつ強力」だっただろうが、地域経済にも負担をかけてしまった。

「SOVの発行は、RMIの最後の米ドル対応銀行関係を危険にさらす可能性がある」と、チョウ氏は述べている。「これは、マネーロンダリング防止およびテロ資金供与リスクの組み合わせは(SOVに関連するものも含む)、外部からの援助およびその他の重要な資金の流れを混乱させる可能性がある。その結果、経済に大きな打撃を与えるだろう」。

チョウ氏は、「SOV発行の潜在的なコストが期待される利益を上回る可能性が高い」ことを考えると、既に実施されているSOVに対する「慎重なアプローチ」が正当されると付け加えた。IMFによれば、RMIの国内総生産は2020年に3%以上マイナスとなり、地域経済が回復するのは2022年になるだろうという。

「RMIの法的、規制、および制度的枠組みは、SOVの発行に対応し、関連するリスクを管理する準備はまだ整っていない」

マーシャル諸島は2018年にデジタル通貨作成を検討すると発表していた。これは米ドルと一緒に法定通貨として使用できるようになる。昨年6月、マーシャル諸島の仮想通貨アドバイザーは、RMIが「PerSOV」(後でSOVに交換できるトークン)のテストフェーズを開始すると述べている

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、複数の島からなる群島国家において導入する動きが出ている。たとえば、バハマは昨年10月にデジタル通貨のサンドダラーを導入。700を超える島々からなる国内の金融包摂を目指すとしている。マーシャル諸島も24の島に5万8000人以上の人々が住んでいる。