MakerDAOの創設者であるルーン・クリステンセン氏は、分散型自律組織(DAO)のメンバーに対し、MakerDAOのステーブルコインDAIを米ドル(USD)から切り離す準備を「真剣に検討」するべきだと主張している。

クリステンセン氏のコメントは、最近発表された仮想通貨ミキサーのトルネードキャッシュへの制裁を受けたものだ。8月11日にMakerDAOのDiscordチャンネルで、制裁は「残念ながら私が最初に考えたよりも深刻だ」と指摘する。サークルがこの制裁に関連してUSDコイン(USDC)のアドレスを凍結したが、このようなリスクを避けるために、ステーブルコインDAIから米ドルをデペッグする準備をするべきだと付け加えた。

「米ドルからのデペッグの準備を真剣に検討すべきだと思う。そうなることはほぼ必然であり、膨大な準備を行うことが現実的だ」

8月8日、米財務省の外国資産管理局(OFAC)は、トルネードキャッシュの使用を事実上禁止するとともに、同プラットフォームと関連するUSDCやETHのアドレスを制裁対象リストに掲載した。

この動きを受けて、USDC発行元のサークルは、制裁対象となったアドレスに紐づく7万5000ドル相当のステーブルコインを凍結した

Dai Statsによれば、MakerDAOのDAIは約50.1%がUSDCで担保されている。サークルがトルネードキャッシュの件で米国法に従って行動することを示したため、クリステンセン氏はUSDCという集中型アセットに大きく依存することに懸念を示している。

DAIは現在、時価総額が70億ドルで、仮想通貨市場の中で4番目に大きい米ドルペッグのステーブルコインだ。

USDCから変更を検討

その後、Yearn.financeのコア開発者@bantgは、MakerDAOがペッグ安定モジュールからすべてのUSDCを35億ドル相当のETHに変換することを検討していると指摘する。これによりDAIは50%以上がイーサ(ETH)で裏打ちされ、現在の7.3%から大きく跳ね上がることになる。

この提案されたアイデアはコミュニティから批判を集めている。ステーブルコインのテラUSDは裏付け資産として積極的にビットコイン(BTC)を購入していたが、最終的に崩壊してしまったテラ(LUNA)プロジェクトを想起させるものだからだ。

イーサリアム共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏も、次のように述べている

「これは危険で恐ろしいアイデアのように思える。ETHが大きく下がれば、担保の価値は大きく下がるが、CDPは清算されないので、システム全体が部分積立になるリスクがある」

しかし、クリステンセン氏は後に、「メーカーガバナンスのディスコードに書いたのは、すべてのステーブルコインの担保をETHに変更するのは悪いアイデアだ」と明言している。

しかし、彼は部分的に担保構成を変更することは良いアイデアであるとも考えている。トルネードキャッシュへの制裁の件を考えれば、担保の一部をETHへと移行していくことは「ブラックリストのリスクの大きさに応じて検討できるオプションだと思う」と述べている。