LINE株式会社は27日、独自のブロックチェーン技術を活用した「LINE Token Economy」で利用できる分散型アプリ(dApps)を5つ発表した。ブロックチェーンという技術は使っているものの普及率が低いことが課題である分散型アプリの現状をLINEが変えられるか注目だ。

27日の記者会見でLINEが強調したのは、アプリ利用者による貢献度を評価すること。利用者もサービス提供者と同じくコンテンツ作りに貢献していると位置付けることで、双方の「共創関係」構築を目指す。その際のインセンティブ付与のため、日本のユーザー向けには「LINK Point」、海外向けには「LINK」トークンが使われる。発行額は合わせて10億リンク。そのうちの80%が分散型アプリ用に配布されるという。

日本向けのLINK Pointは、1ポイントにつき固定レートで500LINEポイントに交換できるため、ネット通販のLINEショッピングなどで利用可能になる。一方、海外向けのLINKに関しては、10月16日にシンガポール拠点の仮想通貨取引所「BITBOX」から取引できるようなる予定。日米以外の国が取引可能となる。

日本では、Link PointからLINEポイントへの交換は可能だが、Link Pointを直接購入したり他の仮想通貨と交換することは現段階ではできない。日本の仮想通貨取引所への上場に関してラインの出澤剛CEOは、「そういったことも含めて色々と検討している」と発言。ただ、出澤氏はまずサービスの質を高めることを強調した。

『ブロックチェーンやってるけどあまり面白くないね』というサービスを作ってもしょうがない。いかにユーザーを獲得していけるか、高い質のサービスを作れるかというところにフォーカスしてやっている」

分散型アプリの課題は、普及率だ。8月時点で一日のアクティブユーザーが300人を超える分散型アプリ(DApps)は、仮想通貨イーサリアム(ETH)とEOSで合わせて8つしかないという調査結果も出ている。いくらブロックチェーン技術を使ったとしても「面白いゲームがまだ少ない」というのは開発者の中でも課題になっていて、キラーアプリは誰が作るのか注目が集まっている。

また、トークンを使った資金調達イニシャル・コイン・オファリング(ICO)の予定もない。出澤氏は、「投機的な参入が多く玉石混交」であり、「ユーザーにとって非常に価値のあるサービスは見つけにくい」と指摘。あくまでラインのノウハウを使ったサービス中心、ユーザー中心のアプリ展開を進める構えだ。

分散型アプリは、ブロックチェーン技術を用いた中央管理者のいないアプリのことを指す。中央集権的なアプリは運営方法が不透明で改ざんされても気づかない可能性があるが、ブロックチェーン技術を使えば透明性を担保できる。

以下がラインが発表した5つのアプリだ。

1. 知識共有プラットフォーム Wizball

Wizballは、Q&A型の情報検索システムで、ネット上にまだ答えがない情報に対して利用者が質問し回答を得る。より質の高い質問と回答が評価される仕組みだ。ブロックチェーンを使うことで、その評価が恣意的なものではなく、全てのユーザーにとって必要なものか見極める。質問に答えていなかったり、承認欲求だけを求める質問が存在したりする現状を変えることを目指すという。

9月13日よりベータ版が公開されていて、10月下旬よりアプリの提供を開始する予定だ。

2. 未来予想 4CAST

「LINEから次に出るサービスは?」「次の分散型アプリは?」など、利用者で予想して楽しむプラットフォームだ。利用者同士の知識や知恵をもとにより精度の高い未来予想をすることを目指す。正解者にはインセンティブが与えられる。現段階では運営会社が出題をするが、今後は利用者側が出題できるようにするという。

9月4日よりベータ版が公開されていて、今年中にもアプリ提供を開始する予定だ。

3. 商品レビュー Pasha

身の回りにある様々な商品をパシャッと撮影することでレビューを書いたり商品データ検索ができる。データの投稿やレビューをしたユーザに対してトークンが付与される。

4. グルメレビュー TAPAS

日本全国にある飲食店の情報を共有できるグルメレビュー・プラットフォーム。レシートを撮影することでレビューを書くことが可能。店単位でのレビューだけでなく、メニュー単位でのレビューへの需要を見込む。また、レシートを使うことで実際に店に行ったことがない人がレビューを書くといったこれまでの弊害をなくすことを目指す。

5.ロケーションSNN STEP(仮)

旅行先の思い出を共有するSNSプラットフォーム。アップした写真に位置情報とタグを入力することで、思い出をBookとしてまとめる。Bookの評価が上がればインセンティブがもらえる仕組み。

LINEによると、分散型アプリの収益モデルは、広告などに依存する既存のアプリとあまり変わらない。ただあくまで初期段階なので、早急なマネタイズというのは意識していないという。また将来的には外部の開発者が作る分散型アプリも受け入れる予定だ。