イーサリアムのステートレスクライアントの研究は、ネットワークの長期的な健全性に役立つと見られているが、進捗があったにも関わらず、いくつかの制限により、現時点では実際にクライアントには適用できていない。

仮想通貨・ブロックチェーンカンファレンス「Unitize」で、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、ステートレスクライアントの移行への最新の進捗状況と課題に関する状況を説明した。

ステートレスクライアントとは、ブロックチェーンの履歴全体を保持する必要がなく、ノードが検証に完全に参加できるようにする方法だ。ステートとは、すべての現在の残高、スマートコントラクトコードなど様々なデータのことだ。

新しいブロックはステートに非常に小さな変更を加えるだけだが、それらすべてはブロックチェーン全体に対して検証する必要があるため、非常に非効率なプロセスになる。ステートレスクライアントは、既存のチェーンを使用可能な状態に維持することを目的としたイーサリアム1.xイニシアティブの中心的なテーマだ。また、この研究はイーサリアム2.0にも重要な影響を及ぼす。

「イーサリアム2.0のシャーディングの文脈で、ノードが異なるシャード間ですばやく再シャッフルされるため、ステートレスクライアントは基本的に必須のものである」

ブテリン氏はまた、ステートレスクライアントがビットコインを含むほかのブロックチェーンでも研究されていることを強調した。ステートレスクライアントは、暗号化技術に依存し、ステートの変化のみを計算し、ステート自体をメモリに保持する必要なく検証できるようにする。しかし、関係する暗号化技術はまだ不完全という。

プルーフ作成の問題

現在の最先端のソリューションでは、マークルツリーを活用している。ただし、このテクノロジーでは、イーサリアムの現在の非効率性に起因するいくつかの重要な欠点がある。各ブロックの最大サイズが405メガバイトになる可能性がある。

最適化により、サイズを最大2メガバイト、平均600キロバイトに減らすことができるが、それでも現在のイーサリアムのブロックサイズである50キロバイトをはるかに上回るものになる。

ブテリン氏が現在着目している代替手段は、多項式関数に依存してデータを表現する証明システムである多項式コミットメントだ。いくつかの暗号化特性を通じて、1つの小さな証明だけを使用して全体の値を証明することができる。

しかし、このアプローチにも大きな問題があると、ブテリン氏は説明している。マークル証明では、ツリーのような構造により、部分的に更新することは簡単だが、多項式コミットメントでは曲線全体を完全に変更する必要があるため、計算にコストがかかるという。

この問題には様々な解決策が考えられ、たとえば「Verkle tree」と呼ぶハイブリッドモデルでは多項式コミットメントをツリー状の構造に組み合わせるという。

ブテリン氏は、考える解決策にはそれぞれ独自の課題があり、追加の研究が必要があると語った。

「ステートレスクライアントがダウンロードする必要のあるデータを実際にそれほど多くないところまで削減することを可能にするいくつかの素晴らしい計算手法がある。しかし、依然として研究と改良が必要だ。これは学術研究コミュニティからのサポートを積極的に歓迎するものだ」

今回のブテリン氏のプレゼンテーションは、ステートレスクライアントが暗号化研究の進展にかかっている限り、すぐにイーサリアムに導入される可能性が低いことを示唆している。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン