金融庁は10日、仮想通貨交換業者への検査・モニタリングへの中間とりまとめを発表した。仮想通貨交換業者が急速にビジネス規模が拡大する一方で、顧客資産の管理や内部管理態勢などの体制が追い付いていなかったことが改めて浮き彫りになった。今回のとりまとめを受け、交換業者の新たな登録にはより厳格な審査が行われるとみられる。
今回のとりまとめで、仮想通貨交換業者の会社規模が急拡大したことがわかった。交換業者の会社規模(総資産)は1年間で約6.5倍の6928億円に拡大。昨年秋からの仮想通貨市場の盛り上がりで、一気に規模が拡大した形だ。その一方で、利用者財産の管理を少ない役職員で行っている。平均して1人で33億円もの預かり資産を管理していた。
急速な事業拡大に業者側の体制整備は追いつかず、杜撰な内部管理態勢や顧客保護が不徹底なケースも見つかった。既に複数のみなし業者や一部の登録業者への行政処分で個別の問題については発表されているが、今回のとりまとめで網羅的に問題点を把握することができるだろう。
金融庁「仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング 中間とりまとめ 主なポイント」より
指摘されている問題点は、ビジネス分野、リスク管理・コンプライアンス、内部監査、コーポレートガバナスと多岐にわたる。既に個別の行政処分で金融庁が指摘しているように、こういった問題は「業容が拡大する中、それに見合った人員の増強やシステム・キャパシティの見直しを行っていない」ことにあるとみられる。
今後の新規登録再開は?
金融庁は現在、すべてのみなし業者と登録業者7社に対して立ち入り検査を実施。残りの登録業者にも検査を行っていく方針だ。
日本経済新聞は、今回のとりまとめを受け、コインチェック事件以降に事実上停止されていた交換業者の登録が再開される見通しだと報じている。複数の報道によれば、現在は百数十社が登録を申請している状況だ。
ただ登録の審査はより厳格化されることになるだろう。多くの業者で見つかった杜撰な内部管理態勢が再び頻発するようなことになれば、金融庁の監督責任にも発展しかねない。
金融庁は新規の登録について、「さらに深度ある実質的な審査を行う必要がある」と強調する。
「業者のビジネスプランの聴取及びそれに応じた実効的な内部管理態勢や、利用者保護を優先したガバナンス態勢の状況について書面やエビデンスでの確認を充実させるとともに、現場での検証や役員ヒアリング等を強化する」
マネックスグループの松本大社長兼CEOは、7月の記者会見でコインチェックの交換業登録とサービス全面再開は「8月をめど」と表明している。みなし業者の登録について、金融庁は「業務改善命令を受けて提出された報告内容を踏まえて、〔中略〕個別に検証し、登録の可否を判断していく」としている