日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)は11日、「暗号資産の管理に係る意見書」を公表した。来年の改正資金決済法の施行で規制対象となる仮想通貨のカストディ(保管)業者の範囲や、仮想通貨の管理方法などについて提言を行っている。

仮想通貨カストディ規制の範囲

改正資金決済法で定める「他人のために暗号資産の管理をすること」という文言の解釈について、JCBAはその範囲を事務ガイドライなどで明確化することを求めた。

JBCAは、FATFの勧告に基づくマネーロンダリング対策と利用者保護という規制目的を踏まえて、どのような場合に「暗号資産の管理」に該当するかを解釈するべきと主張している。

具体的には、次のような定義を行っている。

(a)カストディ業者が対象となる暗号資産を利用者の意思に基づかないで自己の判断で任意の宛先に移転させることが実態として可能な状態に置くこと、

(b)当該暗号資産について利用者に対する返還が約されていること

(c)利用者の便宜のために当該暗号資産を保管することを目的とすることの三つが充足されている状態

提言書ではさらに具体的な論点に分け入って、法律上の「暗号資産の管理」に該当するか否かを議論している。

例えば、該当しない事例としては「利用者だけが暗号資産をコントロールできるクライアント型ウォレット」や「スマートコントラクトを用いたエスクロー」といったケースをあげている。

暗号資産交換業者の管理方法について

また実際に、仮想通貨取引所やカストディ業者といった「暗号資産交換業者」が、どのような方法で仮想通貨を管理するかについても提言を行った。

JBCAは、仮想通貨の中には利用者の利便性や円滑な業務遂行のために「ホットウォレットで管理することが適切な場合がある」とし、金融庁の政令やガイドラインなどでも、ホットウォレットで保管できる条件を「可能な限り広範囲に定めることが望ましい」と指摘している。

もちろん、利用者の利便性や円滑な業務遂行という口実で、過度に拡大することは回避するべきだとも付言している。

また将来的に仮想通貨の流出リスクを軽減する方法として、コールドウォレット以外の技術が登場する可能性があり、将来の規制においては「オンライン環境かどうか」といった特定手法を限定列挙するべきではないと要望した。

「暗号資産の交換」と「管理」で区別を

提言では、「暗号資産の交換等」と「暗号資産の管理」の業務特性の差異を踏まえて、取り扱いできる仮想通貨の範囲に差を設けるべきと提言している。

具体的には、日本の仮想通貨取引所では取引できないが、海外の取引所で取引可能な通貨については、日本の業者が管理できるようにするべきとしている。

またハードフォークやエアドロップで意図せずに新たに入ってきた仮想通貨については、事後の届出の対象とするべきと提言している。

このように管理できる仮想通貨を柔軟に運用することこそが、利用者保護などの規制目的に資すると訴えている。

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