インドの中央銀行のインド準備銀行(RBI)は5日、銀行に対して仮想通貨取引を行う個人や企業に対するサービス提供停止を求めた。今後はRBIが独自の仮想通貨を発行することを検討しているも発表した。「開発と規制に関する声明」の中で述べた。

 インド財務省は今年1月、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を「本質的価値がない」と批判した。また複数のインドの主要銀行が同月、仮想通貨取引用口座の封鎖や機能制限を実施した。2月上旬には、仮想通貨が禁止されるとの報道が流れ、仮想通貨価格が下落した。

 RBIは声明で、仮想通貨をささえる技術革新により「金融システムの効率性と包括性が向上する可能性があるが...バーチャル通貨(VC)は...消費者保護、市場の統合性、マネーロンダリングなどの点で懸念がある」と述べる。

 また、仮想通貨取引には「さまざまなリスクがある」という警告を、仮想通貨産業に関わる人々に対して既に何度か行っているとした上で、次のように述べている。

「関連リスクを考慮した結果、RBIの規制対象となる事業体が、VCの取引や決済を行う個人や企業に対して、取引やサービスの提供を行うことを直ちに禁止することを決定した。すでにVC関連のサービスを提供している事業体は、一定期間内にその関係を停止する必要がある」

 地元ニュースメディアのクオーツ・インディアによると、企業は3ヶ月以内に、仮想通貨分野から撤退する必要があるという。

 RBIのビブー・プラサド・カヌンゴ副総裁は記者会見で、仮想通貨は「金融の安定性を脅かす可能性がある」と語った。

「国際的には、これらのトークンに対する規制は統一されていないが、仮想通貨がAML(アンチマネーロンダリング)やFATF(金融活動作業部会)の体制に深刻なダメージを与え、市場の統合性と資本管理に悪影響を及ぼす可能性があることは広く認識されている。仮想通貨の成長規模が限度を超えれば、金融の安定性も危うくなる」

 インドの仮想通貨コミュニティで投資家兼アドバイザーとして活動するパンカジ・ジェイン氏は5日、ツイッターで、RBIの新たな仮想通貨規制についてのコメントを投稿し、インド政府は「仮想通貨を禁止したわけではない」と強調した。

(今日、インドの中央銀行がRBIに登録された事業体(つまり銀行や金融機関)に対して、仮想通貨取引所や仮想通貨関連企業との取引停止を求める通達を出した。インド政府が仮想通貨を禁止したわけではない)

 ジェイン氏はその後もツイッターを更新し、「インド政府はさまざまな点において明らかに足並みが乱れている」とし、仮想通貨のトレーダーから所得税を徴収していることを引き合いに出した。さらに「仮想通貨取引所は、インドの公共機関が採用している非常に優れたKYC(個人認証)とAML(マネロン対策)の取り組みを実施しているにもかかわらず、RBIが仮想通貨取引所を認可しない」のは「興味深い」と述べた。

(インドの仮想通貨市場はまだかなり小さいが、今後大きな成長が期待でき、特に、銀行を利用しない人々が仮想通貨を利用する機会が増えると予想される。RBIやインド政府が今回の決定を見直し、仮想通貨に対してより前向きな政策を実施することを願う)

 一方、金融機関に仮想通貨との関係を断つことを求めた今回の声明の中で、「現在発行している紙幣の他に」独自の官製仮想通貨の発行を検討していることにも言及している。カヌンゴ副総裁は、それが実現可能かどうかを18年6月末までに報告すると述べた。

 RBIが独自の仮想通貨に関心を持つ背景には、「決済の世界において急激な変化が起きていることや、民間のデジタルトークンが登場したり、法定通貨(紙幣・硬貨)の管理コストが上昇している」ことなどがある。RBIはこのような状況が、世界各地の中央銀行が「法定デジタル通貨」の導入を進める要因となっているとみている。

 カヌンゴ副総裁は、官製仮想通貨により「紙幣の発行コストの削減が期待できる」とも指摘する。

 インドのウノコイン社の共同設立者であるサトヴィック・ヴィシュワナート氏はクオーツ・インディアに、これが「中央銀行が進むべき正しい方向」だとは思わないと語った。

「今回の規制により、インドで既に仮想通貨を利用している数百万人の利用者の間でパニックが起こるだろう。独自のデジタル通貨の発行を望んでいるのだとしても、既存の通貨を禁止する必要はない」