もし読者がCEOだったならば、ブロックチェーンは可能性なのか、それとも脅威なのか、それを判断する必要があるはずだ。しかし、それでも彼らCEOの注意を引くことは十分に難しいのである。筆者がCEOの面々と交わした会話の中で、よく質問し、反応が良かったものを例に挙げよう―
競合相手が半分の販売価格であなたの市場に現れた場合を想像してください。そして、その場合、どのようなリアクションを取りますか?
…そして、この質問をした後に彼らの顔に浮かんだ表情をうかがうのである。
そうすると、この新技術に何か問題があるかもしれないという不安感を露にしてこう聞き返す人がいるのだ、私にはどれだけ時間があるのか、と。
私がそれに対して返す言葉は常に同じだ―
火星基地から連絡があり、エイリアン艦隊が地球に向かっているとの情報が入ってきたとして、彼らが月に辿り着くまでにリアクションを取っている時間はないでしょう。
ブロックチェーンは2020までに成熟期を迎える
現実には、実際に許された時間がどれくらいの長さなのか知っている人は誰もいない―6ヶ月、12ヶ月、もしかしたら24ヶ月くらいかかるかもしれない―ただ1つだけ確かなのは、ブロックチェーンは2020年辺りで成熟期を迎えるだろうということだ。そしてそれから衰退することはない。しかし、リアクションを取るまでにどれだけの時間が必要かということは、重要な問題なのだ。
ブロックチェーンは、単なる新技術ではなく、ネットワークであり、開発環境、通貨、そして分散型元帳である。つまり、商取引と、従来の運用モデルの機能の仕方における根本的な構造変化を象徴している。
性質そのものは、大量生産と長期生産からなるヘンリー・フォードの時代から全く変わってはおらず、組織行動や管理行動などは、この150年以上の間あまり進歩していない。
もちろん、犯人は、1970年代にSQLデータベースが登場したことによって支えられてきたSoRと1980年代のERPだ。業界に無駄なレイヤーを生み、無駄な作業を造り出し、相手側が信用できないデータベース上で誰もが情報をコピーして置ける、非効率性で強く縛られた技術である。
AML&KYC劇場
何故そうなってしまったのか?それは、今日の商取引のシステム全体が、債務システムに基づいているからであり、それこそが、毎回必要となるアンチマネーロンダリング (AML) や顧客確認 (KYC) のコンプライアンスという劇場の悲惨な建前に我々が耐えなければならない理由だからだ。
確認、再確認、調整、検証を行う人々の束。少なくとも25%の摩擦コストを既に非効率な運用モデルに加えている。全ては、最終的な検証者として、中心となる母体―つまりは、銀行を必要とする相手側のデータを誰も信用していないのが理由だ。
ブロックチェーンの運用モデルを持ってすれば、こういったナンセンスな劇場を上演する必要は一切なくなる。ブロックチェーンは全てが透明な分散型元帳であり、ネットワークがトランザクションを検証し、トラストそのものが存在しないことによりトラストが提供され、演者が善人であれ悪人であれ、彼らのアイデンティティは公開され、いかなる形式の調査や監査も必要としない取引が保証される。
対抗するための武器
もし、読者がCEOなら、少なくとも競合企業が現れるだろうと想定できている状態で、彼らが現実に現れることを想定して、リアクションを取る時間もない状態で、顧客が離れてしまう可能性も考え、抜け殻を管理するだけになってしまうことをさらに想定した上でブロックチェーン導入のためのプランを計画していく必要があるだろう。
ブロックチェーンを採用し、その優位性を得て競争武器として利用するためにも、誰よりも有利な状態に身を置くべきである―ブロックチェーンの世界においては、1秒と時間がない程に”先駆者”であることが重要なのだから…。
Peter Thiel氏が語った有名な言葉がある―
目的は、競い合うことではなく、競合を潰し、市場を独占することにある。
今回は、事態はより早く起こることだろう。世界は残酷だ。もし、読者がブロックチェーンについて語り、ブロックチェーンを採用している業界の”ブローカー”なら、終わりはすぐに訪れることだろう…。