ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスが1月12日に発表した報告書によると、22年は暗号資産ビジネスで経営破綻し、刑事事件として捜査を受けているFTX、セルシアス、スリー・アローズ・キャピタル、テラフォーム・ラボなどの事件を除いてもオンチェーンでの不正取引が過去最高を記録をし、不正なアドレスが昨年中に受け取った仮想通貨の総額は201億ドルに達したとのことである。

アナリスト達が犯罪行為に関わっているアドレスを新たに特定している間にも、時間の経過と共に不正取引の件数は増加していることから、この数字はさらに増え続けており、また、麻薬密売組織などクリプトネイティブ以外による犯罪からの収益や、世界各地で現在捜査中である前出の経営破綻した企業らの資金の残高はその数字には含まれていない。

現時点においては、総額201億ドルという数字は21年の同調査による180億ドルをわずか10%上回っているだけであるものの、過去最高であることには変わりなく、2020年に記録した80億ドルを大幅に(60%)上回っている。

この数字の背景には、22年に発覚した不正取引の44%が制裁対象となっている企業によるものであるという事実がある。昨年、米国財務省外国資産管理局(OFAC) が「執行に困難が伴うこれまで以上に踏み込んだ」暗号資産に対する制裁をいくつか打ち出すと、制裁関連の取引がグラフに収まりきらないほど大幅に増加した。ちなみにチェイナリシス では、この増加を1,000万ドル単位で評価している。

この報告書では、4月にOFACの制裁対象に指定されてからも営業を続け、22年の制裁関連取引の大部分を請け負っていたロシアを拠点とする仮想通貨取引所、ギャランテックスを例に挙げている

チェイナリシスのサイバー犯罪研究の責任者であるエリック・ジャーディン氏はコインテレグラフに対し以下のように説明している。「この報告書ではウォレットがダークネット市場や制裁対象となっているプラットフォームなど、既知の違法組織のものである場合には『不正』なウォレットとしてカウントしており、また、個人や非ホスト型のウォレットがハッキングで盗まれた資金を保有している場合には、それらが不正なウォレットとして認識される可能性がある。ただし、個人または非ホスト型のウォレットからトルネード・キャッシュに送金することで、そのウォレットが不正であると認識されることはないだろうが、その取引高には、違法組織が受け取った資金が含まれていることから『不正』であるとみなされるだろう」。