米人権団体「ヒューマン・ライツ・ファンデーション」(HRF)は11月20日、ステーブルコインの耐検閲性とプライバシー保護状況に関する分析レポートを発表した。ジーキャッシュ財団が資金を提供しているという。ステーブルコインは「(ドルの)安定性へのアクセスの民主化」にも貢献できる可能性があるものの、十分な調査が行われていないと指摘。落とし穴といえる特徴、リスク、注意事項なども合わせてまとめている。

HRFによると、アルゼンチンなどハイパーインフレで苦しんでいる地域・国家の住民にとって、ドルの入手が切実なものとなっているそうだ。

この状況に対して、ビットコインなど仮想通貨の有効性がうたわれるもののボラティリティが高く、2019年における1週間当たりの最大損失はビットコイン(BTC)が-20%、イーサリアム(ETH)は-26%、また匿名通貨の場合は-24%~-34%の範囲だったと指摘。またこのことから、依然としてドルの人気が高いという。

そこでHRFのレポートでは、安定した価値を備える仮想通貨として(ドルペッグの)ステーブルコインの検討を呼びかけている。HRFによれば、ステーブルコインはドルの安定性というメリットに加えて、「安定性へのアクセスの民主化」にも貢献できる可能性があるという。また国家による資本規制の悪影響、デジタル決済処理業者などの仲介者、銀行または金融機関による監視から、市民を解放する可能性もあると説明している。

しかし同時に、これら利点の実現には耐検閲性とプライバシー保護が重要であり、十分な調査が行われていないと指摘。落とし穴といえる特徴、リスク、注意事項なども合わせてまとめている。

HRFによる分析

すべてのステーブルコインは公開鍵暗号方式を採用しており、個人情報を明かさずに取引が行える。法定通貨と比較すると、当局による検閲や没収、自宅に侵入した犯罪者など(物理的な行為)に対抗しやすいという。

しかし複数のステーブルコインでは、特定アドレスが保持しているステーブルコインを発行者の判断で凍結できるブラックリスト機能を導入している。ハッキングによる不正流出対策が目的の機能なのだが、発行者を信頼するしかなく、保有者の資産を危うくする可能性は否定できないそうだ。具体的には、テザー(USDT)、USDコイン(USDC)、トルゥーUSD(TUSD)、パクソス・スタンダード・トークン(PAX)、バイナンスUSD(BUSD)が挙げられている。

またレポートには、ステーブルコインの表が掲載されており、発行者による凍結が可能かどうか、資産を支える基盤となるブロックチェーンおよびスマートコントラクト、凍結機能などがオープンソースかどうかといった情報がまとめられている。

(出典: 「ヒューマン・ライツ・ファンデーション」(HRF) ステーブルコインのプライバシー保護機能

また、オープンソースソフトウェアであることは、発行者による凍結機能の確認、過去の資産凍結の履歴をたどりやすいといった点でメリットをもたらすものの、どのような経緯・判断で凍結を行ったかという理由・動機を探るのは難しいという。

ステーブルコイン関連の不適切なプライバシー保護機能

HRFは、プライバシー面に関しては、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスなどが政府・当局に提供しているツールにより、現在、仮想通貨取引全体の90%を監視できると指摘。ブロックチェーンの不変性と履歴追跡が可能な点を考えると、プライバシー保護機能は重要だという。

ブロックストリームのリキッド・ネットワーク(Liquid USDT)における機密取引(Confidential Transaction)が高く評価されている一方、分散型金融(DeFi)プロジェクト「メーカーダオ(MakerDAO)」のステーブルコイン「DAI」はぜい弱であると説明した。

レポートには、このぜい弱性を軽減可能な、イーサリアム(ETH)対応のミキシングサービスやゼロ知識証明システムがまとめられている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン