【深層】仮想通貨取引所OKExの市場操作疑惑と同社対応まとめ【長文】

今月、中国発の大手仮想通貨取引所OKExはハードフォークのさ中にあったビットコインキャッシュ(BCH)の先物決済に手を加え、多くのユーザーから非難を浴びた。市場操作にあたるのではないかという糾弾だ。もちろんOKExはこれに反論し訴訟となった際には証拠を提示すると約束している

OKExでは今年おかしな乱高下が見られたのは、今回で少なくとも3度目だ。

仮想通貨先物取引でアジア最大手

Company profile

OKExは昨年、すでに操業を停止している中国の仮想通貨取引所OKコインの国際部門として設立された。情報サイトであるコインマーケットキャップのデータによれば世界第2位の出来高を誇り、1日当たりの取扱額は1000億円相当以上。中央アメリカのベリーズに本社を置き、香港に拠点を有する。さらに今年4月、同社はマルタにも拠点を広げている。

同取引所が売りとするのは先物取引だ。先物取引とは基本的に、将来の特定の日にある資産を特定の価格で売買するという取り決めのことで、投資家にとってはリスク管理ツールとなる。

昨年11月3日、OKExはビットコインキャッシュ(BCH)とイーサリアム(ETH)の先物取引を開始したが、親会社のOKコインではビットコイン(BTC)の先物を14年から扱っていた。同年12月、金融界の本流の取引所であるシカゴボードオプション取引所(CBOE)やシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)がBTC先物取引を幅広い市場に導入すると、仮想通貨先物の認知度が向上したのは記憶に新しいだろう。

ビットコインキャッシュ先物の早期決済を強行

11月14日、BCH ABCとBitcoin SVという2つのブロックチェーンの誕生につながったビットコインキャッシュのハードフォークの最中、OKExは突如としてビットコインキャッシュ契約の早期決済を強行した。その理由は、「短期の乱高下や市場操作の企てにより、(同取引所の)顧客が被る可能性のある損失を防ぐため」とされた。そして発表後すぐに、BCH先物契約は14日の直近取引価格で早期に決済された。

この措置は何人かの投資家から非難された。彼らはOKExの決定の結果、大きな損失を被ったと主張。モルガン・スタンレーの元トレーダーであるティアンティアン・クランダー氏が経営するアンバーAI社名義の記事での主張によると、OKExは早期決済の前にビットフィネックスにおける価格参照をやめ、決済のルールを変更したという。ルール更新の詳細は、今回の事態が起きるわずか2日前の12日に発表された。

「決済日や取引ルールを変更することで、(OKExは)以前の発表内容を無効なものにした。つまり契約で実行されるすべての短期ポジションについて、OKExは密かに名目元本に一定の損失を課し、評価額よりも20%高い契約を実行したことになる」

「これは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が、取引中にE-mini S&P 500先物を上海総合指数に基づいて決済すると宣言するのと変わらない」

さらにアンバーAI社名義の同記事はOKExが15日、BCHが「9か月間で最も乱高下が激しかった取引セッション」の最中に発注システムを意図的に機能不全に陥らせたことも非難している。記事によると、OKEx全体としては機能していたにもかかわらず、トレーダーは「リミットオーダーのバグ」のために注文を出すことができなかったという。

「この間に記録されたレベル2データでは、注文マッチングエンジンが機能していたことが示されている。取引所は引き続きトラフィックのホスト役となり、運営を続けていた。しかし、最高入札を下回る買い注文と最高付け値を上回る売り注文を除いて、すべての発注がブロックされた」

アンバーAI社名義の同記事はさらに主張を続ける。その内容は、OKExが「ハニカム・ファイナンス(Honeycomb Finance)」という会社の「スポンサーとなり」、同取引所の考え方を支持する意見をレディットに投稿したというものだ。最後に、OKExが密かに発表内容を更新する前に「未払いのBCHを有するユーザー(中略)はBSVを返済する必要がない」と記載していたにもかかわらず、BCHの借り手に対して最終的にBSVの債務を課したと主張している。

最終的に、トレーダーたちはこのために「約27億円」を失ったと同記事は論じ、以下のように続けている。

「BCHのハードフォークを巡る一連の事態は、市場操作や不正・詐欺行為を示唆している」

BCHのハードフォークに関するOKExの対処の仕方については、他にも不満が聞かれる。北京のコンセンサス・テクノロジーズの創業者であるチャオ・チャンへ氏はブルームバーグに対し、OKExでのヘッジポジションが「市場の一般価格を反映しないレベルで突然終了したため」、自身のファンドが70万ドルを失ったと述べている。

「OKExは信用を失いつつある。(中略)先物契約は無意味なものとなり、ヘッジ取引ができるものではなくなった」

チャンへ氏は今回の事態を受け、500万ドル規模の自身のファンドからOKExの運用分を減らす予定だとも語った。ブルームバーグの記事には匿名の自称トレーダーがさらに4人登場し、同取引所との関係を制限または終了させるつもりだと語っている。そのうちの1人が香港の証券先物委員会(SFC)に提訴する予定だと報じられているが、ブルームバーグの取材に対し委員会のスポークスマンはコメントを出していない。

OKExの対応

OKExは今回の件に関し、いくつかのコメントを出している。まず、ハードフォーク直後の15日に公表したブログにおいて、同取引所は持論を説明した。その中でOKExは、激しい乱高下と「最終的な結果」の不確実性のために決済時間を早めたと述べている。

同取引所は措置の緊急性について説明しながら、「早期に発表すれば、市場操作の余地が生まれ、ユーザーが損失を被る可能性があった」と付け加えた。

さらに19日、OKExの運営責任者であるアンディ・チャン氏が、ブルームバーグに対するコメントの中で同調する意見を述べた。

「様々なシナリオを検討した結果、秩序ある市場を維持するため、早期の決済が最も公正で合理的な決定であると判断した」

20日、OKExはMedium上でアンバーAI社名義の記事について直接言及した。まず、「アンバーAIは香港の会社だと自称しているが、そのような名前の機関クライアントのプロフィールは取引所に存在しない」とし、「香港の法律や規定に照らし、同地域のいかなる顧客にもサービスを提供(していない)」と述べている。

「アンバーAI社が管理していると主張しているOKExアカウントは個人のもので、KYC(顧客確認)情報の報告によれば香港の住人や組織ではない」と同取引所は明らかにしている。「アンバーAIは、早期決済の間、彼らが管理していたと主張するOKExの個人アカウントから利益を得ている」

さらに重要な点として、OKExはいかなる市場操作も否定している。アンバーAIの声明は「OKExの評判に深刻な損害を与え」たとし、「(OKEx)ユーザーの大部分は、BCH先物契約の早期決済という私たちの決定を支持している」と述べている。同取引所はさらに、法定闘争に持ち込む用意があるとも語っている。

「必要とあれば、言われるような取引にOKExが関わっていないことを法廷で示すために必要な証拠を開示する。私たちは顧客に不利となるような取引や市場の操作を決して行わないことを、あらためて明言する」

OKExでの価格暴落でトレーダーが自殺を示唆したことも

今年、OKExが関係した同様の事件は少なくとも他に2回あった。まず、3月30日に同取引所の四半期物市場でBTC/ドルの指標が他所よりも大きく下回り、異常な値崩れが起きた。当時ツイッターに出回った映像では、暴落で1100万元(約2億円)を失ったというOKExのトレーダーが、取引所の香港オフィスで服毒自殺をはかるとCEOに脅しをかけている。

OKExは、「コストに関係なく」多数の契約を終了させているユーザーを非難した。

同社がクライアントと共有した声明では、「OKExには、悪意ある価格操作や取引システムへの悪影響、取引の制限、アカウント閉鎖など、あらゆる非倫理的行為に対して警告を発する権利がある」とされている。またロールバックが完了し、通常の取引業務が間もなく再開することも確約した。

さらに8月、OKExは奇妙な市場変動を伴う状況において中心的な存在となった。正体不明のトレーダーが立ち上げた4億1600万ドル(約472億円)という大規模なビットコイン先物取引が強制的に精算された事件を受けてのものだ。

OKEx によると「あまりに大きな発注」(OKExによれば416万8515件という膨大な契約)に対し先制的な措置をとった。取引所のリスクチームがこのクライアントに対し、「全体の市場リスクを低減させるためにポジションを部分的に終了するよう」数回依頼したという。

「しかしながら、クライアントが協力を拒んだため、さらなるポジションの増加を防ぐためにアカウントを凍結するという決定にいたった。その直後、残念ながらBTC価格が下落し、アカウントが精算される事態となった」

同取引所はその後、2500BTC(当時の価格で約1850万ドル相当)を保険資金に投入し、強制精算された取引による損失軽減の一助としたという。

重要な点として、この保険による補填のほかに、同取引所では先物契約をレバレッジできる資金をトレーダーに与えていないことも明らかにした。その代わり、そのような事態に備えたいわゆる「ソーシャライズド・クローバック」ポリシーに依存している。つまり注文残高による損失は、相手のトレーダーから補填してもらう必要があるというものだ。今回の事例では、利益の18%を失うことになるトレーダーもいたという。

OKExの公式声明には、「同様の事案の再発を防ぎ」、リスク管理を強化し、市場操作の可能性を排除するために取り組んでいる方策の概要が示された。

当時コインテレグラフに出されたコメントにおいて、OKExの運営責任者であるアンディ・チャン氏は、彼自身やOKExにとってこの事件が「有益な教訓」になったと語っている。