米エリスX(ErisX)が、現物引渡のイーサリアム(ETH)先物契約を開始すると発表した。果たしてETH価格への影響はどうなるのか?仮想通貨アナリストらの意見を聞いた。

ボラティリティー上昇に注意も

仮想通貨取引所bitbankの長谷川友哉氏は、長期的には「あまり関係ない」とみている。

CME、Cboe、BakktでのBTC先物取引開始は市場で大型イベントとして注目されていましたが、噂で買われ事実で売られたような印象でした。ErisXの件は突如発表されたため一時的に相場も反応しましたが、長期的に相場の下押しor上昇圧力になるかは、正直、あまり関係ないと思っています。

ただ、価格に関連する点について言えば、ボラティリティ上昇や機関投資家による売り仕掛けに注意する必要が出てくるとみる。

「価格で関連することと言いますと、SQの週のボラティリティーの上昇や機関投資家による売り仕掛けを注意する必要が出てくると言うことがあります。一説には、2017年末、CMEでのBTC先物取引開始と同時に相場の反落したのは、CMEの市場参加者による売り崩しではないかとも言われています」

また米商品先物取引委員会(CFTC)が発行するCOTレポートにエリスXのポジションが乗るかどうかにも注目しているという。これは毎週金曜にCFTCがポジションの状況を集計してまとめたものだ。

現在はCMEのビットコイン先物のみが掲載されているが、CFTC認可のエリスXのETH先物の情報が掲載されれば、相場の先行きのヒントを得ることができると期待できるという。

機関投資家のETH投資呼び込みになるか

FXCoinのアナリスト、松田康生氏は先物市場が創設が必ずしも価格の上昇要因にはならないと指摘する。

先物市場の創設自体は必ずしも価格の上昇要因とはならないと考えます。むしろ売りから入れる、ヘッジニーズを満たすという意味で売り材料にさえなり得ます。また理屈で言えばレバレッジ率が高ければ、取引所の信用創造ともなり得、ETHの供給量を増やすこととなります

一方でCFTCで認可された先物市場ができれば、機関投資家のイーサリアム投資を呼び込むきっかけにもなり得るという。そうなれば、「ETHがBTCプラスワンとして投資家のニーズを集めやすく、BTCとの相関を強めていくことが予想される」と述べている。

一方で、CFTCに認可された現物受け渡しの先物市場の誕生は、機関投資家のETH投資を呼び込むきっかけにもなり得ます。特に、ルネッサンス・テクノロジーやチューダーなど著名ヘッジファンドの参入が話題になったタイミングでもあり、そうした期待感からの買いを呼び込みやすいでしょう。Bakktと同様、CFTC監視下の現物受け渡しの先物市場が出来れば、現物市場の価格形成に適正化に資する。そうした面でも機関投資家の参入を招きやすいと思われます

イーサリアムでも「窓埋め」は発生するか?

CMEのビットコイン先物取引では週末に休場となるため、ビットコインの値動きによっては「窓(ギャップ)」が発生する。一般的に窓(ギャップ)が発生すれば、「窓埋め」が行われると言わてている。

それではエリスXのETH先物によって、イーサリアムでも「窓埋め」が起こり得るのか?

bitbankの長谷川氏は「窓埋めはビットコイン特有のものではないので、イーサリアムでも起こり得ると考えられる」と述べている。

「ErisXのETH先物のスペックを調べたところ、CMEと取引スケジュールが同じようなので、ErisXのETH先物でも『窓開け』と『窓埋め』は注目されるでしょう」

FXCoinの松田氏は、窓埋めが注目されるかどうかは先物市場の「規模感にもよる」と指摘する。

「ErisX市場の規模感にもよると思います。窓埋めは相場力学的な経験則という側面と参加者が意識するからそうなるという自己実現的な側面があります。特に後者に関しては、ETH現物先物市場におけるErisXのプレゼンスによると考えます」

長谷川氏もBTCの窓が埋まるのは「何らかの材料が原因ではなく、単なる週末の変動であるパターンも多く、それでもBTCの窓が埋まるのは市場参加者の経験や思惑に起因する」可能性があると指摘している。