「仮想通貨ビットコインの価値が破壊されるわけではない」米政府によるブラックリスト化で専門家が見解【独自】

先日、米財務省の外国資産管理室(OFAC)が麻薬の製造など犯罪に使われたビットコインのアドレスをブラックリストに追加した。一部ではビットコインの価値を損なう行為として懸念されていたOFACのブラックリストだが、どのように捉えれば良いのだろうか。

また、そもそも「お金をブラックリストに入れる」とは聞きなれない表現だ。利用者や取引所、市場全体に対してどのような影響が出るのだろうか?

コインテレグラフ日本版は、不正取引の追跡で有名なチェイナリシス(Chainalysis)の企画室長(Head of Policy)であるジェシー・スピロ氏とブロックチェーンのコンサルなどを手がけるビドル(BUIDL)のリサーチャーである橋本欣典氏に聞いた。

ビットコインの「汚染」問題

ビットコインのブラックリスト化に関して警鐘を鳴らしていた人物がいる。ビットメックスのアーサー・ヘイズ氏は、その1人だ。「汚い」ビットコインと「きれいな」ビットコインが区別されれば、同じ1BTCでも「汚い」方が「きれいな」方より価値が低くなる。つまり、1BTC=1BTCでなくなり、ビットコインがファンジブル(代替可能)ではなくなる。

ヘイズ氏は、OFACのブラックリスト化でビットコインの価値に対して疑心暗鬼が高まることで、プロトコル全体の価値がなくなる可能性を危惧。匿名性の強化を求めて今後ビットコインはハードフォークをするだろうと予想した。

実際、「ヴァージン・ビットコイン」と呼ばれる取引記録のないビットコインにプレミアムがついているという報告もある

ただ、今回のOFACのブラックリスト化についてスピロ氏は、「不法活動に関与した特定のビットコインをブロックしたからビットコインの価値が破壊されるわけではない」と述べた。

「経済制裁の文脈では、対象のBTCは制裁が解除されるまで凍結されるはずだ。その場合、制裁の解除でビットコインは汚染されていない状態にはっきりと戻るだろう

スピロ氏は、次のように続けた。

ビットコインが流通から除外されることを必ずしも意味しない(資産凍結は別の話だが、それはそれで現金の差し押さえと同じでファンジビリティの問題ではない)。また、そのビットコインが永遠に汚されるわけではない。現金のシリアル番号から麻薬取引を追跡できたとしても、(その現金を今持っている)あなたが犯罪を犯したという十分な証拠にはならないのと同じだ。」

スピロ氏によると、OFACのブラックリスト化はファンジビリティの問題というより、むしろ不法活動と「どのくらい距離が離れているのか」という点で、取引所が合理的にリスク評価ができるかという話だと述べた。

一方橋本氏は、「ビットコインにはファンジビリティがないので、損なわれるファンジビリティはない」という立場だ。「犯人逮捕への足掛かりとして、ファンジビリティがないビットコインの送金のトレースを行うということ」と今回のOFACの意義について解説した。

ブラックリスト入りしたビットコインがあなたの所に来たら…?

ブラックリスト化されたアドレスの持ち主である3人の中国人は捕まっていない。このため、現実的ではないかもしれないが、当該のアドレスから個人間送金などでめぐりめぐってビットコインがあなたのところに送られてくる可能性はゼロではない。その時、どのような事態が想定されるのか?

橋本氏は、「ブラックリストアドレスから直接または間接的に送られたコインを受け取った場合かつ受け取った人の身元がわかる場合、捜査機関から捜査協力依頼がくる可能性がある」と指摘。仮に受取り人が犯罪収益と知っていて受け取ったと判明した場合には、資金が凍結される可能性があるものの、「偶然受け取っただけの場合には、一時的な口座凍結や、捜査当局からの聞き取り調査などで不便が生じるにとどまるはず」と述べた。

スピロ氏も、偶然に受け取っただけでは一大事にはならないと橋本氏に同意。「誰かがビットコインを受け手の同意なしに送れることはみんな知っている」と指摘した。スピロ氏は、もしブラックリスト化されたアドレスと受取人との間の双方向でやりとりが確認された場合は、取引所が受取人の口座を完全にブロックする可能性があると説明した。

一方、取引所などを含む仮想通貨サービス事業者(VASP)の対応について橋本氏は、次のように解説した。

「これらのアドレスから直接または間接的に送られてきたコインを受け取った場合、口座残高に当該資金を反映しないか、または反映(泳がせる)したうえで、捜査機関や各国の規制当局に届け出をすることが求められるでしょう」

価格への影響は?

仮にブラックリスト化で市場に流通するビットコインが減れば上昇圧力になりそうだ。橋本氏は、このロジックに同意しつつ、「メディア等での取り扱われ方の影響もあるわけで、一概にどうといえることはない」と話した。

また、スピロ氏も上昇圧力を認めつつ、「ダークネットの運営者と犯罪者に使われるマネー」というビットコインの悪評がさらに流れ、普及が阻害されることで、結果的に価格にマイナスになる可能性も指摘した。

今後のブラックリスト化

両氏とも、今後OFACがビットコインのブラックリスト化をさらに進めるだろうとみている。スピロ氏は、「OFACが経済制裁関連のプロタクトに関する仮想通貨の使用の監視強化をすることが公然の事実となる中、引き続きより多くのアドレスを特定し、背後にあるエコシステムの特定につなげるケースが増えるだろう」と予想した。

また、橋本氏は、「ビットコインのトレースの結果として犯人逮捕につながった事例が増えてきているので、当然そうなる(ブラックリスト化が進む)かと思われる」と述べた。