米大手仮想通貨(暗号資産)取引所コインベース(Coinbase)が、ブロックチェーン分析ソフトウェアを米国の法執行機関に販売しようとしていることが明らかになった。米仮想通貨メディアのThe Blockが報じた

The Blockの報道によれば、米麻薬取締局(DEA)内国歳入庁(IRS)が、コインベースは「コインベース・アナリティクス」と呼ぶ分析ソフトを購入しようとしているという。実際に分析ソフトが提供されるのは、来年4月以降になるようだ。

DEAやIRSでは、コインベースの分析ソフトを使い、サイバー犯罪の捜査に活用することになる。仮想通貨のアドレスを追跡することができ、資金の動きを調査するために使われるようだ。

コインベースの広報担当者は、The Blockに対して「コインベース・アナリティクスで提供される情報は、コインベースの内部データからは完全に分離されている」とコメントし、「個人が特定できる情報含まれていない」ことを強調した。

仮想通貨コミュニティからは反発も

今回のコインベースの法執行機関との契約は、仮想通貨コミュニティの中からは反発の声も出ている。折しも、米国では警察に対する抗議運動が巻き起こっているタイミングでもあることに加え、特に今回の分析ソフトがコインベースが19年に買収したニュートリノ(Neutrino)によるものだという点も物議を呼んでいる。

ニュートリノの幹部の一部は「ハッキングチーム」と呼ぶ監視ツール開発企業出身であり、ハッキングツールは独裁的な政府にそのツールを販売していたことが問題視されていた

仮想通貨関連のジャーナリスト、ピーター・マコーマック氏は、コインベースのブライアン・アームストロング氏に対して、今回の問題について正式に説明をするべきだと主張。取引所クラーケンのジェシー・パウエルCEOは「悪魔の擁護者を演じ、それについて話さないことは、問題をうやむやにしようとしているように見える」と発言している

仮想通貨分析のWhale Alertによれば、The Blockの報道後、コインベースから大量のビットコイン(BTC)が外部に移されている。6000BTC2000BTCがコインベースから外部のウォレットに移動している。

仮想通貨アナリストのジョシュ・ラーガー氏は「コインベースから何百万ドルも流出している」と指摘し、コインベースの対応に不満を持った投資家が資金を移動させている可能性があると主張している。