金融安定理事会(FSB)は6日、分散型金融に関する最新レポートを公表し既存の金融システムの安定性に対する恩恵とリスクについて解説した。金融サービス提供者の集中を減らすなど恩恵を挙げる一方、取引の承認を行うマイニングの集中などをリスクとして指摘した。

FSBは、主要国の中央銀行や金融監督当局で構成する機関。昨年7月に行われたG20財務相・中銀総裁会議は、仮想通貨(暗号資産)がグローバル金融システムの安定にもたらすリスクに対して「FSB及び基準設定主体からのアップデートを歓迎する」という声明を出しており、今後の仮想通貨やブロックチェーンの規制を見る上で重要な位置付けとなっている。

日本が初めて議長国として8日~9日の間に開催しているG20財務相・中銀総裁会議を前にFSBは新たなレポートの公表にこぎつけた。

以下は、FSBがまとめた分散型金融の金融システムにもたらす恩恵とリスクのまとめた。

恩恵

・既存の金融機関や仲介業者がいることで生まれるリスクを削減できる可能性がある。例えば、金融サービス提供者が増加し分散することで、サービス提供者の集中を削減する。

・短期での貸付を容易にするかもしれない。これによって、支払い能力の問題や流動性のリスクを削減するかもしれない。

・運営面でのリスクも削減するかもしれない。もし適切に運用されれば、中央が管理するシステムよりサイバーリスクへの耐性をもてるかもしれない。ただ、これは1つのノード(ブロックチェーンネットワークに参加するコンピューター)が支配力を持たないことなどが条件となってくる。

・量子コンピューターが分散型台帳技術の脅威になる可能性がある。

リスク

・新たな形で力の集中が起きる可能性がある。資産のオーナー、ソースコードへのコントロール、インフラのオペレーション、暗号資産のマイニング、コード開発などは比較的少数の人々(ソフトウェア開発者など)に集中している。

・既存の金融機関より信用供与において大きなバラツキを生み出すかもしれない。

・責任の所在が不明確になる。

・問題が起きた時、システム回復や解決に時間がかかるかもしれない。現在は、所在や連絡先がはっきりしている中央の管理者にそれらを任せている。

・開かれた分散型台帳技術では、敵意を持った者が詐欺的な取引を承認するケースなど運用面でのリスクが発生するかもしれない。

 FSBは、リスクに関して「もしこれらのリスクが積み重なって(もしくは相互作用して)市場参加者が金融市場に自信を持てなくなれば、金融安定に対するリスクを増やすことになるかもしれない」と指摘した。

また、システムの部分部分でのリスクの高まりを簡単に監視できない可能性や分散型の金融が規制の対象にできない可能性を解説。さらに中央銀行による流動性の注入など、金融システムの安定性のため行われる当局の介入に対する反応が鈍くなる可能性を付け加えた。