政府が15日に仮想通貨交換業者に対する規制強化を盛り込んだ金融商品取引法と資金決済法の改正案を閣議決定したのを受けて、金融庁が記者ブリーフィングを開催し、改正案の中身について説明をした。

この改正案は、金融庁が設置した仮想通貨交換業等に関する研究会による報告書に沿った内容となっており、今国会での提出が見込まれている。去年相次いだ巨額仮想通貨ハッキング事件や仮想通貨の投機対象化している現状を踏まえ、利用者保護の確保やルールの明確化を目指す。

改正案の要点は次の通りとなっている。

「暗号資産」に呼称変更

仮想通貨の呼称を「暗号資産」に変更し、20カ国・地域(G20)会議などをはじめとした国際社会と足並みを揃える。また、交換業者の名称も法律上は「暗号資産交換業者」となる。ただこれはあくまで法律上の呼称変更であり、例えば、それぞれの交換業者に対して暗号資産の呼称を義務づける強制力はない。

研究会のメンバーからは、「日本は改正資金決済法を制定したことで世界に先駆けたが、2017年の仮想通貨上昇によって当時と状況が変わってしまった」など、通貨として元々期待されていたものから遠ざかってしまったという声が相次ぎ、暗号資産への呼称変更のムードが高まっていた。

また先月には安倍首相も仮想通貨を「暗号資産」と呼んでいく方針を示していた

仮想通貨流出リスクへの対応

2018年に2回の巨額仮想通貨流出事件が発生したことを踏まえ、流出リスクへの対応のため、ホットウォレット(オンライン)で保管する仮想通貨に関して「見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持」を義務付ける。

また、顧客から預かった仮想通貨に関して、オフラインで資産管理を行うコールドウォレット」での管理も法律上義務付ける。ホットウォレットで管理する仮想通貨の上限については今後検討していくという。

証拠金取引

仮想通貨の証拠金取引については、FXと同じように、金融商品取引法上の規制対象とする。懸案だった証拠金取引でのレバレッジ上限については、別途内閣府令などで定め、具体的な倍率に関しては、その時のボラティリティ(変動幅)を考慮に入れて決める。金融庁は「大きくはならないと思う」という見解を示した。

仮想通貨交換業等に関する研究会では、メンバーの中から、EUなど海外では上限2倍となっているという声も出ていた。これに対して日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の奥山泰全会長は、「海外も2倍でフィックスされていない」と指摘。ボラティリティなどを見ながら、柔軟に対応していくことの重要性を強調していた。

JVCEAによると、17年度の仮想通貨取引高は69兆円で、うち8割は証拠金や信用取引が占めたという。

ICO規制

トークンを使った資金調達であるICO(イニシャル・コイン・オファリング)に関して、収益分配などが見込まれ、投資とみなせるICOについては、金融商品取引規制の対象となることを明確化する。また、株式などと同様に、投資家への情報開示の制度や販売・勧誘などの規制を整備する。

研究会は、ICOの性格に応じて、投資商品の販売と認めれるものについては金融規制、支払・決済手段の販売と認めれるものについては決済に関する規制とそれぞれ必要な対応を行うことが適当と報告していた。

その他の規制 

この他、交換業者による虚偽表示や誇大広告の禁止や風説の流布・価格操作等の不正行為の禁止が盛り込まれた。

また、「移転記録が公開されずマネロンに利用されやすいなど問題がある暗号資産」が登場したことを受け、「交換業者が取り扱う暗号資産の変更を事前届出とし、問題がないかチェックする仕組み」を整備する。金融庁は「問題がある暗号資産」の代表的なものとして、匿名通貨やフォーク(分裂)などが発生しやすいガバナンスの弱い仮想通貨をあげた。

顧客の仮想通貨を管理するカストディ業者に対しは、本人確認や分別管理義務など「暗号資産交換業者規制のうち、暗号資産の管理に関する規制」を適用する。