米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、上院での公聴会において、自身が議長である限り、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行することはないと明言した。
2月11日に開催された上院銀行委員会の公聴会で、パウエル議長はオハイオ州選出のバーニー・モレノ上院議員の質問に答えた。モレノ氏は、2024年の選挙戦で仮想通貨関連の政治行動委員会(PAC)による広告の影響を受けた可能性がある。パウエル氏は、FRBが自身の在任中にCBDCを発行することは「絶対にない」と断言した。なお、彼の任期は2026年5月までとなっている。
Fed Chair Jerome Powell addressing Senator Bernie Moreno on Feb. 11. Source: Senate Banking Committee
今回の公聴会は、FRBの半期ごとの金融政策報告に関するもので、パウエル議長は上院議員ティム・スコット氏やシンシア・ルミス氏からの質問に答える形で、デバンキング(特定の業界に対する銀行サービスの制限)政策を「改めて見直す」と発言した。上院銀行委員会は2月5日にも公聴会を開き、一部の政府機関が仮想通貨関連企業に対する銀行サービスを停止するよう金融機関に圧力をかけたとの主張について議論した。
パウエル氏が、これほど明確に「CBDCを発行しない」と言及したのは今回が初めてとみられる。2024年3月の上院銀行委員会で、民主党が多数派を握る中、彼は「米国は中央銀行デジタル通貨を推奨する段階には全く至っていないし、導入を検討するレベルですらない」と述べていた。
共和党政権下でのCBDC反対の動き
現在、共和党が下院・上院・ホワイトハウスを支配する中、CBDCの導入阻止は同党の重要政策の一つとなっている。ドナルド・トランプ大統領は1月23日、デジタルドルの「創設・発行・流通・使用」を禁止する大統領令を発表した。しかし、多くの法律専門家は、大統領にその権限があるか疑問視している。
さらに、トム・エマー下院議員が提出した「反CBDC法案」は、2024年5月に下院をほぼ党派ラインに沿って通過し、現在は上院銀行委員会に付託されている。ただし、議会の第119会期中にこの法案が上院で審議されるかは不透明だ。