中国の中央銀行が発行しようとしているデジタル通貨(デジタル人民元)は、ビットコイン(BTC)ではなく、米ドル支配への挑戦として認識されている。しかし、デジタル人民元が仮想通貨(暗号資産)化されたドルであるテザー(USDT)など仮想通貨の立場は脅かすのは難しいとの見方も出ている。

6日に開催された仮想通貨・ブロックチェーンイベント「Unitize」のパネルの中で、ジェネシス・ブロック(Genesis Block)のチャールズ・ヤン氏は、デジタル人民元もしくはデジタル通貨電子決済(DCEP)が、仮想通貨のオルタナティブとして魅力的ではないと主張している。

投機としての仮想通貨投資

ヤン氏は、特にアジアにフォーカスした上で、仮想通貨が採用される主要な要因について指摘している。その1つは投機的な側面だ。韓国や中国などのトレーダーはリスクを取る傾向が高く、仮想通貨への投資を投機として行っている。仮想通貨のボーダレスな性質は、中国のトレーダーにとって特に魅力的だと述べている。

「資本に制約がある国、中国はそのメジャーな国だ。そこの人々は通常の国の銀行を経由して別の国に送金することができない。これが現在の仮想通貨の主要なユースケースである」

その観点から、中央集権化された中央銀行発行のデジタル通貨でも、資本管理のルールは「変わらない」ため、USDTの立場に取って代わるものにはならないと、ヤン氏は考えている。

彼はまた、デジタル人民元の国際化によって、他国がどのようにリアクションをするかにつて次のような懸念を提起している。

「たとえば、中国がブロックチェーンでDCEPを開始し、他の国にそれを受け入れてもらいたい場合、これらの新しい国はそのデータにアクセスする必要がある」

中国の中央銀行がそのデータを他国と共有する医師があるかどうかというのは、未解決の問題だとヤン氏は指摘している。

当面はテザーが「王様」に

ヤン氏は、テザー(USDT)が毎日数億ドル規模の取引がされているため、USDTはアジアで非常に人気があると説明している。テザーについては実際にそれを裏付ける準備金があるかについて懸念が存在しているが、少なくとも数日もしくは数時間のタイムフレーム内では、トレーダー間では高い信頼を維持している。

ヤン氏によると、中国政府がテザーの流通を管理・監督しようとする恐れはあるものの、中国国内で簡単にテザーを削減することはできないという。

一方で、デジタル人民元がUSDTの優位性に対抗するためには、主要な仮想通貨市場や取引所での地位を確立する必要がある。

「それは価値を移転させる手段にすぎない。それに対する最もプラクティカルな見方は、『もしそれを受け入れた場合、大きな犠牲を払わずにどれだけ迅速かつ確実にオフロードできるかどうか』だ」

香港を拠点とするジェネシス・ブロックのヤン氏は、「多くの人々が人民元の流動性のニーズを持っている」と述べ、人々がそれを容易に受け入れられる可能性があると付け加えた。しかし、他の国や中国本土の場合、人民元のエクスポージャーを拒否する人もいるだろう。

したがって、グローバルな採用が欠如することになれば、中国が出j地ある通貨を通じて仮想通貨のエコシステムをコントロールするということは困難だろうとみている。少なくとも現時点では。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン